【全文掲載】「命ある限り訴えていく」広島・長崎原爆80年を前に日本被団協が「被爆80年声明」を発表

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2025-08-05 19:51

広島と長崎に原爆が投下されてから80年となるのを前に、日本被団協が5日、「核兵器が人間とは共存できないことを、命ある限り訴えていく」などとする声明を発表しました。

去年(2024年)、ノーベル平和賞を受賞した日本被団協は5日、「被爆80年声明」と題して声明を発表しました。

声明のなかで日本被団協は、被爆者の高齢化が進み、平均年齢が86歳を超えているほか、核のリスクが極限に達しているなどとして、「かつてない危機に直面している」などと危機感を示しました。

ウクライナ情勢をはじめ、世界では「核使用の危機が増している」としたうえで、「今、最優先の課題は、私たちにそっぽを向いている核保有国を、そのリーダーたちを1ミリでも動かすこと」「『核軍縮から廃絶』と『核被害者援助』を進める唯一の実効力ある核兵器禁止条約に早く近づけること」などと訴えています。

【声明全文】

広島・長崎に原爆が投下され、人類が核時代に入って80年。熱い夏が老いた身に格別にこたえます。廃虚の中から立ち上がった先人たちが初めて表舞台に出た第1回原水爆禁止世界大会から70年の節目でもあります。日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)結成の出発点になった画期的な年でした。

今や、被爆者健康手帳所持者は10万人を割り、平均年齢は86歳を超え、残された時間は少なくなりました。一方で、核リスクは極限に達し、科学者が警告する「世界終末時計」が終末まで89秒とこれまでで最短時間を示すなど、かつてない危機に直面しています。

ウクライナやパレスチナ・ガザ地区の惨状、イスラエル対イランや印パの報復の連鎖…戦争は収まらず、いずれも核保有国が関わって、第三次世界大戦、核使用の危機が増しています。国際法も無視した核軍拡競争に、核拡散に歯止めがかかりません。

日本被団協は昨年、ノーベル平和賞を受賞しました。私たちが一貫して訴えてきた「核兵器をなくせ」「戦争をなくせ」「ふたたび被爆者をつくるな」に今こそ耳を傾けようと、ノルウェー・ノーベル委員会が世界に呼びかけたのです。危機感の薄さへの警鐘です。裏返せば、国際社会が被爆者の声にすがらなければならないほど、危機打開の手立てに窮した表れとも言えましょう。

今、最優先の課題は、私たちにそっぽを向いている核保有国を、そのリーダーたちを1ミリでも動かすことです。「核軍縮から廃絶」と「核被害者援助」を進める唯一の実効力ある核兵器禁止条約に早く近づけることです。それには、「唯一の戦争被爆国」を自称する日本政府の役割が不可欠ですが、同条約の締約国会議へのオブザーバー参加さえも拒否。防衛費を増大し、有事を想定した日米演習に核使用を求めるに至っては、「核共有」へ進む危うさがぬぐえません。国是の非核3原則の破壊、「核なき世界」への逆行を到底、許すことは出来ません。

「国家補償」を軍人・軍属には適用し、受忍論を盾に一般戦災者を置き去りにしてきた日本政府。この憲法違反の不条理・不公正を是正せずして戦後は終わりません。また米国は、明白な国際法違反である核使用(原爆投下)の責任を逃れることはできません。核時代を深化させた科学者の責任の重大さを問い、平和研究を強化する要請も急がなくてはなりません。

私たちの運動は国内外の多くの支援のおかげで持続してきました。この運動を次の世代のみなさんがさらに工夫して築いていかれることを期待します。私たちは、核兵器が人間とは共存できないことを、命ある限り訴えてまいります。

国民と世界の皆さん、平和国家の道を確かにして人類の危機を救うため、ともに核兵器も戦争もない人間社会を求めてまいりましょう。

2025年8月5日 日本原水爆被害者団体協議会

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