箱ブランコ事故に考える、公園の「安全」と「楽しさ」のバランスとは?(箱ブランコ裁判1997年)【TBSアーカイブ秘録】

公園の遊具が減っていることにお気づきの人も多いかと思います。「箱ブランコ」をはじめとして「旋回塔」「グローブジャングルジム」などが危険遊具として次々と撤去されてきたのです。(アーカイブマネジメント部 疋田 智)
【写真で見る】「箱ブランコ」「旋回塔」「グローブジャングルジム」など…そういえば見なくなりました
児童公園の遊具が消えた
近年、多くの公園で遊具が撤去されるケースが増えています。その背景には、子どもの安全を守るという目的があります。特に象徴的なのが「箱ブランコ」と呼ばれる遊具の撤去です。
箱ブランコは、乗る部分が箱型になっており、複数の子どもが向かい合って乗ることができる構造でした。高度経済成長期から2000年代初めまで全国の公園でよく見られた遊具ですが、重大な事故が相次いだことで撤去が進みました。
死亡事故も起きて
特に1997年の事故をきっかけに調査してみると、頻発していたのは、子どもの頭や足がゴンドラ部分と支柱の間に挟まれてしまうという事故でした。
重く勢いのある箱型の座席は遊び方によっては、子どもをはさみ込む危険性があることが分かったのです。自治体や遊具メーカーは安全性を重視し、順次撤去していきました。
箱ブランコ以外にも
このような事故を受けて、国土交通省は公園遊具の安全点検を義務化し、各自治体も老朽化した遊具の撤去や使用停止を行うようになりました。撤去の対象となったのは箱ブランコに限らず、回転遊具やジャングルジムなども含まれます。
結果として、公園から大型遊具が消え、空き地のようになってしまった場所も少なくありませんでした。
安全と挑戦のバランス
一方で、このような遊具の撤去により、子どもたちが自由に身体を動かし、冒険心を育てる機会が減ってしまったという指摘もあります。多少の危険を伴う遊びの中で、子どもは「加減」や「注意力」を身につけていくものです。
現在では、安全と挑戦のバランスを見直し、遊具を全面的に禁止するのではなく、設計の工夫や保護者の見守りなどを通じてリスクを軽減する方法も模索されています。
息苦しくなる公園で
一方、公園自体がこのところ「規則だらけ」「何もできない」という存在になりつつあるという指摘もあります。たしかに公園の立て看板を見てみると「ボール遊び禁止」「自転車禁止」などにはじまり、「遊戯禁止」まで、なんだか禁止項目だらけです。
関西の公園に行くと「漫才の練習禁止」など、ウソのようなホントの話まであるそうで。
こうした規制は、公園周囲の住民からのクレームが来て、市の担当者が事なかれ主義に走ったのではないかという指摘もあります。要するに「面倒くさいのでみんな禁止にする」という態度のことですね。
みんなのための公園を楽しく使うために
公園というのはなんのための施設でしょう。安全性はもちろん大切ですが、それと同時に、子どもが成長するために必要な「遊びの質」も守っていかなければなりません。
安心して遊べる新しい遊具の導入や、お互いがお互いを思いやる心、地域全体で子どもを見守る体制づくりが求められています。