トランプ“関税15%”に日米でズレ 専門家「日本はスピード感を重視し合意文書を望まなかったか」【Nスタ解説】

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2025-08-07 21:02

日本時間7日午後1時1分、アメリカ・トランプ政権による「相互関税」の新たな税率が発動されました。しかし、日米で合意した内容に認識のズレが生じています。

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日本はスピード感を重視し、合意文書を望まず?

井上貴博キャスター:
何が起きているのだろうかと頭がごちゃごちゃになってきます。やはりトランプ大統領としても、支持率が4割を切っているといわれているため、もしかすると焦りもあるのかもしれません。

相互関税における日米間の“ズレ”をみていきます。日本としては、今15%未満の品目については一律15%に引き上げ、15%以上の品目については据え置き、全体的に一律15%の関税になるという認識でした。

ところが、きょうになってアメリカのトランプ大統領は「いや、すべての品目に15%上乗せするつもりです」と話しています。

具体的にいうと、たとえば緑茶は従来の税率が3.2%です。日本はこれが15%に引き上げられると思っていましたが、アメリカの考えでは、3.2+15で18.2%になります。

また、牛肉は従来の税率が26.4%です。もともと高いのですが、日本の考えでは、26.4%のまま据え置きになるはずでした。しかし、アメリカの考えでは、26.4+15で41.4%になり、40%を超えます。

関係者としてはたまったものではなく、41.4%の関税なんてかけられたら、商売は死活問題だという話になるわけです。

日本とアメリカで、なぜこういった認識のズレが起きたのでしょうか?まだ情報が少ないので、今は可能性の話しかできないのですが、明海大学の小谷哲男教授に話を伺いました。

小谷教授によると「日本としてはスピード感を重視していたので、合意文書を望まなかったのではないか」ということです。

今までは、トランプ大統領が形を残したくないから合意文書を望まなかったのではないかといわれている向きもありましたが、日本側が望まなかったというのが小谷教授の分析です。

EUは、今15%未満の品目については一律15%に引き上げ、15%以上の品目については据え置きという特例措置をアメリカと結んでいます。日本はこれで行きたかったのです。

アメリカは「日本に最良の関税措置を」と言っていたため、日本は、EUの特例措置を日本にも適用してくれると思っていました。もっと言うと、きっと閣僚レベルでは、ここで握手できていたのだろうと推察できます。

ところが、最後にちゃぶ台をひっくり返したのがトランプ大統領なのではないか?

関税措置について、自民党の小野寺五典政調会長は「閣僚間では日本が特例に対応することを確認している」と、閣僚間では合意ができていたことを示唆するコメントをしています。

また、「一日も早く“合意内容と同じ形に修正するよう”政府に求めていきたい」とも話しています。

「クレイジーな状況」 業界関係者の声は…

井上キャスター:
一日を争うわけで、業界関係者の皆さんは大変です。

茨城県常陸牛振興協会の谷口勇事務局長は、牛肉は4か月で37トン輸出しており、税率が26.4%から41.4%に引き上げられると「非常に由々しき問題。輸出にブレーキがかかるかもしれない。今後は東南アジアやイスラム諸国への輸出を増やす」と話しています。アメリカにばかり頼っていられない、という声です。

一方、醤油は税率が3%から18%に引き上げられることになり、日東醸造の蜷川泰輔取締役は「取引先の企業はクレイジーな状況と言っている。少なからず商売に影響する」と話しています。

日本とアメリカに認識のズレがあるなら、早く解消していただかないといけません。本当に解消できるのでしょうか。

肉乃小路ニクヨさん:
日本からもアメリカからも優秀な方が交渉しているなら、言葉の取り違いは考えにくいと思います。

多分、官僚レベルでは合意できていますし、EUも日本の交渉を参考にしてあのような特例装置になっているので、安心していたのではないでしょうか。

アメリカはこんなことをやっていたら世界中の信用を失ってしまって、大丈夫なのかとむしろ心配になります。

出水麻衣キャスター:
アメリカの事務方がわからなくなってしまって書き換えたのか、それともトランプ大統領がひっくり返したのか、それすらもわかっていません。どこで詰まっているのか、我々としても早く把握していきたいですよね。

都合の良いことしか聞こえていない?  投資でも日米の認識にズレ

井上キャスター:
認識のズレは、投資についても起きています。

日本はアメリカに5500億ドル(約81兆円)という巨額の投資をしますが、トランプ大統領は「これは我々のお金で、自由に投資できる」「野球選手が受け取る契約ボーナスのようなもの」と話しました。

しかし、日本は「これは融資なので、返してもらいたい」としています。

小谷教授いわく「日本側がトランプ大統領を満足させるために『融資』といわず、『投資』と説明したのではないか」とのことですが、交渉段階では内訳を説明しており、細かいところを見ると、ここにズレはないそうです。

ということは、最終的にはトランプ大統領が一存で、支持者へのアピールとして「我々のお金だ」と発言した可能性があります。なお、EUも同じ状況に陥っています。

肉乃小路ニクヨさん:
そんな、ジャイアンみたいなことはあるのでしょうか。

出水キャスター:
トランプ大統領の耳には投資という、彼にとって都合のいい言葉しか届いていないのかもしれません。

井上キャスター:
だとすると、文章に残すということをやらないといけない状況になるかもしれないですし、今後どうなっていくのでしょうか。

出水キャスター:
でもスピード感も必要ですし、難しいですよね。

肉乃小路ニクヨさん:
文章に残すと、今まで日本が築いてきた何かも上書きされてしまい、そこからまた戻すのも大変になってしまうので、なんとかやり過ごしたいという気持ちもあるのでしょうね。

井上キャスター:
本当に官僚の皆さんを含めて、大変な作業を今まさに続けているのだろうと想像できます。

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<プロフィール>
肉乃小路ニクヨ
ニューレディー
銀行・保険会社など金融業界でキャリアを積む
独自の視点で経済・お金・人生観を語る

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