猛暑で子どもの体調が心配な夏に家庭でできる“育免”対策とは

2025-08-09 09:00

今年の夏は、例年以上に暑さが厳しく、気温だけでなく湿度も高い日が続いています。大人でも体力を奪われてしまうような猛暑のなか、小さな子どもたちはさらに過酷な環境にさらされています。特に乳幼児や低学年の子どもは、地面近くからの熱を受けやすく、発汗・放熱機能が未熟なため、体温調節がうまくできず、熱中症や体調不良につながりやすいといわれています。

また、今の子どもたちは、幼少期をコロナ禍で過ごしたこともあり、感染症にかかる機会が減り、特定の病原体に対する免疫獲得の経験が少ない場合があります。その子どもたちが、暑さによる疲れや睡眠不足、食欲の低下がきっかけで感染症にかかると、さらに疲れや食欲低下がすすみ、感染症からの回復が長引き、ダラダラと夏バテの状態が続くことで感染症への抵抗力が下がる、という“負のループ”に陥ってしまう可能性があります。

そんな中、注目されているのが“免疫を育てる”という新しい考え方です。日々の生活のなかで親子で意識したい「育免(いくめん)」という行動が、夏バテや感染症の予防にもつながっていきます。
無理な特別対策ではなく、外出時のちょっとした工夫や、毎日の食事、寝室の環境など、家庭でできることばかりです。子どもたちの健康を守るヒントとして、ぜひチェックしてみてください。

小児科医・保育士 工藤紀子先生

今年の夏、家族で取り入れたい「育免(=免疫を育てる)」という考え方をもとに、小児科医・保育士の資格を持ち、年間1万人以上の子どもを診察する工藤紀子先生が提案する、家庭でできる夏の健康対策をご紹介します。

「育免」ってなに?子どもの免疫を育てる生活習慣とは

「育免(いくめん)」という言葉を初めて耳にする方もいるかもしれません。これは、免疫力の発達プロセスを知り、日常生活の中で子どもの免疫力の健全な発達を促し育てていこうという考え方を表した言葉です。医学的な知識に基づいたもので、特に乳幼児から小学校低学年までの時期に意識しておきたい大切な視点です。
人の免疫システムは、生まれてから少しずつ発達していきます。0〜5歳頃までは、ワクチン接種や日常的な感染症への接触の経験を通して、免疫細胞が役割分担を学びます。つまり、“感染防御の能力”や “過剰反応を抑える能力”などに分かれていきます。その後、12歳頃までに、免疫をつかさどる臓器の成長とともに免疫細胞の“数の増加”も進みます。

ところが、コロナ禍で感染対策が徹底されていた時期に乳幼児期を過ごした令和生まれの子どもたちは、免疫力を育む機会が少なかったと考えられています。ウイルスへの耐性が十分に育っていないため、感染症や夏バテへの注意がより必要となっているのです。

さらに夏は、体調を崩しやすい要因が重なります。気温が高いだけでなく、湿度も高いため体温調節が難しくなり、睡眠の質や食欲の低下も重なって、体力も免疫力も落ちやすくなります。そこにウイルス感染が加わると、回復までに時間がかかってしまうケースも少なくありません。
だからこそ、まずは家庭でできる“育免”の工夫を知り、取り入れることが、今の時代の子育てにおいて重要なポイントと言えるのではないでしょうか。

家庭でできる“すぐやる育免アクション”3選

子どもの健康を守るために、難しい知識や特別な道具は必要ありません。
毎日の生活の中で少し意識するだけで、体調管理や免疫力の維持につながる行動はたくさんあります。
ここでは、小児科医の工藤紀子先生がすすめる「すぐやる」3つの育免アクションを紹介します。

外出編:「出ない勇気」と“手ひんやりグッズ”のすすめ

夏はレジャーの予定も多く、外に出たくなる季節です。しかし、最近の夏はかつてとは比べものにならないほど気温が上がっており、熱中症のリスクが格段に高まっています。
特に熱中症警戒アラートが出ている日は、「今日は外に出ない」という判断もとても大切です。無理に出かけて体調を崩してしまっては、楽しい思い出も台無しになってしまいます。
外出すると楽しさでつい水分摂取を忘れてしまいがちなので、例えば「15分に1回の水分補給」を意識するための“給水タイマー”をセットし、こまめな水分摂取を促しましょう。
また、保冷バッグに凍らせた飲み物などを入れておき、時々手を冷やすのもおすすめです。手を冷やすことで、体全体の体温が下がりやすくなるといわれています。

食事編:「菌」×「食物繊維・オリゴ糖」の“シンバイオティクス”を意識

猛暑によるストレスは、腸の働きを鈍らせ、免疫力の低下につながりやすくなります。そこで注目したいのが「腸活」。
善玉菌(ヨーグルトや納豆など)と、そのエサとなる食物繊維・オリゴ糖(オクラやバナナ、野菜類など)を一緒に摂る“シンバイオティクス”という食べ合わせが効果的とされています。
さらに、夏は食欲が落ちがちで、そうめんや冷たい麺類など炭水化物に偏った食事になりがちです。
魚や肉、卵、乳製品などのタンパク質を意識して取り入れ、野菜や果物からビタミン・ミネラルもバランスよく摂るようにしましょう。
食卓に並ぶメニューを少し工夫するだけで、子どもの免疫力を日常的にサポートすることができます。

日常編:洞窟のような寝室でぐっすり眠る

睡眠の質は、免疫力と直結しています。夏は日が早く昇るうえ、室温も高いため、子どもが早朝に目覚めてしまったり、寝つきが悪くなるケースが増えます。
そこで意識したいのが、寝室の環境です。
「洞窟のように暗く、涼しい空間」を目指し、遮光カーテンで日差しを遮り、クーラーはつけたまま眠るのが理想的です。
冷えすぎを防ぐために、風が直接体に当たらないように工夫し、室温は25~28℃、湿度は40~60%が快適な目安とされています。
温湿度計が1つあると、細かな調整もしやすく便利です。
また、ゲームなどのデジタル時間も“時間制限”ではなく“共有”を意識し、親子で一緒に楽しむことで切り上げるポイントが親もわかるようになり、、ゲームの区切りで一緒に切り上げやすくなります。外に出にくい日には、身体を動かすゲームを取り入れるのも一案です。

ひんやりメニューで美味しく免疫育て

暑さで食欲が落ちやすいこの季節、冷たい麺やアイスなどで簡単に済ませてしまいがちです。しかし、冷たいものばかりを食べ続けていると、糖質に偏った食事になり、必要な栄養素が不足してしまいます。
そこでおすすめしたいのが、ひんやりしつつも「たんぱく質・ビタミン・ミネラル・善玉菌・食物繊維」がしっかりとれる“育免レシピ”。
短時間で作れるので、忙しい日にもぴったりです。

カレーヨーグルトそうめん|腸にうれしい冷製主食

ヨーグルトとカレーの風味が意外にも相性抜群な、さっぱりとした一皿です。
オクラやトマト、ゆで卵などの具材をトッピングすれば、たんぱく質やビタミン、ミネラル、食物繊維もしっかり補給できます。
めんつゆベースの味付けで子どもにも食べやすく、カレー風味が食欲をそそり、発酵食品のヨーグルトを使って“菌活”もばっちり。
暑い日でもスルッと食べられる、冷たい主食メニューとして重宝します。

ヨーグルトとツナの冷や汁|栄養たっぷりで消化にもやさしい

和風の冷や汁にツナとヨーグルトを合わせたアレンジレシピ。
味噌やすりごまのコクとヨーグルトのまろやかさが絶妙で、雑穀ごはんとの相性も良く、栄養バランスにも優れています。
たんぱく質・ミネラル・ビタミンがしっかり摂れるうえ、食物繊維がとれるきゅうりや雑穀ごはんで腸にもやさしく、胃腸の負担が気になるときにもぴったり。
冷たいスープ感覚でさらっと食べられます。

バナナ甘酒ヨーグルトアイス|砂糖不使用の罪悪感ゼロスイーツ

完熟バナナと甘酒、ヨーグルトだけで作れる、自然な甘さのひんやりアイス。
発酵食品である甘酒とヨーグルトの“ダブル菌活”で腸内環境を整えながら、バナナの食物繊維・オリゴ糖・ビタミン・ミネラルもプラスできます。
材料を袋に入れて揉んで凍らせるだけなので、子どもと一緒に作るのも楽しいスイーツです。
きな粉やココア、砕いたビスケットを加えてアレンジするのもおすすめです。

これらのレシピはどれも、忙しい日のランチやおやつタイムにすぐ取り入れられる手軽さと、栄養バランスの良さを兼ね備えています。冷たくても体を冷やしすぎない工夫や、腸を整える発酵食品の活用など、育免につながるヒントが詰まっています。
次のパートでは、ここまでの内容を簡単に振り返りながら、「夏の子どもの体調管理」における心構えをまとめます。

夏バテも感染症も予防は日常から

夏は子どもにとって、体力的にも環境的にも大きな負担がかかる季節です。
感染症は冬に流行るイメージがありますが、夏は夏で高温多湿に強いウイルスが流行り、また肌の露出が増えるため接触感染を起こす感染症が広まります。
高温・高湿度・高感染率という「3つのリスク」に囲まれながら過ごす日々は、まだ体が発達途中の子どもたちにとって想像以上に過酷なものです。
そんな中で私たちにできることは、特別な対策を用意することではなく、日々の暮らしを少し見直すことなのかもしれません。

外出を控える判断や、こまめな水分補給と手の冷却、腸を整える食事や睡眠環境の見直しなど、どれも今日からすぐに実践できることばかりです。
また、夏の定番メニューに少し工夫を加えるだけで、食欲がない日でも栄養をしっかり補うことができます。ひんやりとしたメニューで楽しく、美味しく、そして健康的に――そんな“育免”のアプローチは、親子の夏をより穏やかで心地よいものにしてくれるはずです。
子どもの体調は、日々の小さな積み重ねがカギを握っています。
今年の夏は、家族みんなで「育免」を意識しながら、元気に乗り切っていきたいですね。

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