“蹴り合い”に“殴り合い”?!「人型ロボットスポーツ大会」中国で初開催も…AI開発に“黄信号”?【Nスタ解説】

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2025-08-18 20:50

中国で人型ロボットのスポーツ大会が開かれ、約500体が熱戦を繰り広げました。ロボットの開発に欠かせない勝敗を分けるポイントは一体なんなのでしょうか?

【写真で見る】なぜか2台とも転倒 「人型ロボット」のキックボクシング“迷”勝負

中国では人型ロボットが数万円から販売 2028年には市場が倍増?

高柳光希キャスター:
中国・北京で、北京市政府や国営テレビなどが主催した人型ロボットスポーツ大会が初めて開催されました。

8月14日に開幕式が行われ、15日から17日の3日間でサッカーや陸上競技、キックボクシングなど26種目の競技が実施されました。

参加したのは新興企業や大学など280チームで、人型ロボット約500体が転びながら、ぶつかりながら熱戦を繰り広げました。

北京市政府が主催ということですが、中国としてかなり力を入れているのでしょうか?

北京支局 松尾一志 記者:
北京の地元新聞では、2日にわたり人型ロボットスポーツ大会を一面で報じています。ここからも、力の入れようがうかがえます。

今、中国政府は、「2027年までに人型ロボットの製造能力を大幅に向上させる」という目標を掲げています。人型ロボット関連のイベントは今回だけではなく、2025年4月には、人型ロボットのハーフマラソン大会も開かれました。

優勝したロボットは約21kmを2時間40分で完走しましたが、人間の世界記録は56分40秒ということで、少し遅い感じもします。また、この大会には20チームが参加しましたが、走り切ったのは6チームで、残り14チームは脱落しました。

中国では、すでに人型ロボットの販売もされており、2025年8月には、人型ロボットを取り扱うショップが北京でオープンしました。商品は100種類を超え、価格は数万円から、工場などで使うものだと数千万円にもなります。

米モルガン・スタンレーによると、中国のロボット市場は2024年は約6兆9000億円でしたが、2028年には約15兆9000億円に倍増する見通しです。

井上貴博キャスター:
100種類を超える人型ロボット、具体的にはどのような種類があるのでしょうか?

JNN北京支局 松尾一志 記者:
ダンスを披露したり、人と対話ができたり、工場などで物の仕分け作業ができたりと、様々なジャンルのロボットがあります。

古坂大魔王さん:
これらのロボットは、本当は人間の形である必要はありません。車型のほうが足も速いですし、鳥型のほうが飛べるわけですが、「人型」というところに人間を感じませんか?

日本は「アトム」から始まり「ガンダム」など、ゼロをイチにするアイデアを持っていました。しかし今、このあたりは中国とアメリカの2強になってしまっています。

特にAIがすべてに関わっており、そこで負けてしまっているので、日本も頑張りたいところです。

井上キャスター:
本来は日本の専売特許だったものが、ということですね。

アメリカは半導体の対中輸出を規制 中国のAI開発どうなる?

北京支局 松尾一志 記者:
中国では今、ロボット市場が急速に拡大していますが、今回の大会では、「人型ロボットの実用化」に焦点を当てた競技も行われていました。

実際に取材してきましたが、会場内にある薬局を再現したエリアでは、“指定された薬品を正しく運ぶことができるかどうか”試合で競っていました。勝敗を分けるのはロボットに搭載されているAI、人工知能だといいます。

優勝した人型ロボット企業・Galbotの担当者は「ロボットには周辺の環境を理解できるAIが必要」と話していました。

この企業は重力や摩擦といった感覚をAIに学習させ、人間のように動くことができるロボットの開発を目指しており、8月7日には、人型ロボットが運営するコンビニも試験的にオープンしました。

担当者は「(人型ロボットが)100、200の作業をこなせるようになれば、多くの家庭に普及できると思います」とも話しています。

今回の大会で盛り上がっていたのはスポーツの競技でしたが、こうした実用化に焦点を当てた競技もあえて入れてきました。やはり中国政府としては、少しでも早く実用化を進めたい思いがあるのだと思います。

人型ロボット開発の鍵になるのが人工知能=AIです。ただ、中国では今、AI開発に“黄信号”が灯っているような状況です。

その要因がアメリカで、AI開発に欠かせない高性能な「半導体」の対中輸出を、これまでたびたび規制してきています。

2022年には、当時のバイデン政権が高性能半導体などの輸出規制を導入しました。そして2025年に入ってからも、トランプ政権が米・エヌビディアの半導体「H20」の輸出を一時規制対象にしました。

こうした状況について、7月にAI関連のイベントで演説した李強首相は「中国のAIの開発は、高性能な半導体の供給不足や高品質なデータの枯渇、企業間の交流の制限といった問題に直面している」と発言しました。これはつまり、アメリカを念頭に半導体の輸出規制をやめるよう求めた形だと思います。

中国の習近平政権が何を目標にしているのかというと、やはり「自立自強」というところに尽きるのではないでしょうか。AIや高性能な半導体の開発・生産を、アメリカに頼ることなく自分たちの力で成し遂げたいという思いが、これまでよりも強くにじみ出ています。

たとえばAIに関しては、北京市政府が2025年秋から、市内の全小中学校で少なくとも年間8時間のAIの授業を始める方針を示しています。

今後、人型ロボットの実用化は、中国が高性能の半導体やAIをどこまで独自に開発できるかにかかってくると思います。

井上キャスター:
宇宙分野もそうですが、AIの分野も、アメリカと中国の2強が覇権を争っているようですね。

古坂大魔王さん:
今、これが1位になるか2位になるか雲泥の差ですが、実はAIを作るための半導体チップでは、日本が勝っているところがあります。AIには何とかして食いついていかないといけません。

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<プロフィール>
松尾一志
北京支局記者
日中関係から人型ロボットまで幅広く取材

古坂大魔王
お笑い芸人・プロデューサー
2児の父親として育児の様子を発信
SDGsを推進する活動も積極的に行う

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