「出勤偽装会社」や「高級ホテルの屋台」も出現…低迷が続く中国経済どうなる?【Bizスクエア】

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2025-10-01 06:30
「出勤偽装会社」や「高級ホテルの屋台」も出現…低迷が続く中国経済どうなる?【Bizスクエア】

消費低迷、若者の失業率最悪、不動産不況にトランプ関税の追い打ちと「出口なき迷路」に陥った中国経済。景気回復のカギはあるのか? 

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22歳・定職就けず「公園暮らし」

中国南部にある広東省・深圳市。
AIなど先端技術の開発拠点として急成長する町で、“中国のシリコンバレー”とも呼ばれている。

その町の、バスターミナル周辺に集まる多くの人たち。その目的はー

人材派遣会社の職員:
「あと1名の枠が残っています。先に申し込んだ人が選ばれます」

周辺には多くの人材派遣会社があり、日雇いでの工場勤務や住み込みでの仕事などを求める人が集まっているのだ。

いま中国では若者の失業が深刻化。16歳から24歳の8月の失業率は「18.9%」に達し、統計方法が変わった2023年12月以降で最悪となった。

22歳の男性、寥(りょう)さんも職を求めに深圳に来たが4か月間定職に就けず、いまは公園やネットカフェで寝泊まりしている。

江西省出身・寥雄輝さん(22):
「日雇いの仕事だと朝4時過ぎには動き出し、7時から夜10時まで働く。1日で手取りは100元(約2000円)くらい」

また、9月に黒竜江省で行われた2026年度の新卒者向けの就職説明会では、約9000件の募集に対して10万人以上が殺到したという。

「出勤偽装会社」高まる需要

若者の失業者が増える中、6月に北京に登場したのが「出勤偽装会社」だ。

平日の午前中、デスクが並ぶフロアで数人の若者がパソコンに向かって作業をしている。一見よくあるオフィスの風景だが、彼らは“失業者”だ。

利用者の女性:
「SNSで出勤するふりができる場所があると知り、面白そうだと思って」

施設の使用料は昼食付で、1日約1000円。
希望する人には偽物の「在職証明書」や「給与明細」を発行するサービスもあり、周囲に失業していることを知られたくない人や、失業中でも人とのつながりを求める人で需要が増えているという。

高級ホテルが「屋台販売」

景気低迷で利用者が減少しているのが、中国のホテル業界だ。

売上げを少しでも確保するため、ヒルトンやマリオットといった高級ホテルが「屋台での総菜販売」をホテルの前で始め、肉まん1個約40円など、ホテル品質を手頃な価格で販売してる。

「倹約令」によるパーティー需要の減少に加え、「反スパイ法」強化の影響も大きいと話すのは、中国経済に詳しい柯隆さんだ。

『東京財団』主席研究員 柯隆さん:
「反スパイ法によって外国人ビジネスマンが中国に行かない。怖いから。だから利用者が大きく減って、一時しのぎとして惣菜を売る。ただ、肉まんを何億個売っても間に合わない。外資系の五つ星ホテルは、このままだと撤退せざるを得ないと思う」

中国の成長率「0%に近い」

深刻な経済状況を受け、中国政府は16日、景気回復に向けヘルスケアやレジャー分野の規制緩和などで「サービス消費の拡大を目指す」経済対策を発表した。

しかし、柯隆さんは「中国の成長率はもはや0%に近い」と厳しい現状を口にする。

【中国 GDP】※国家統計局
▼2025年4-6月期⇒前年同期比5.2%

『東京財団』主席研究員 柯隆さん:
「中国経済は今、“三重苦”に悩まされている。【コロナ禍の後遺症】がずっと残っていて、不動産バブルが崩壊した後の【不動産不況の長期化】。そこに来たのが【トランプ関税】。この三つが、いずれもまだクリアできていない。公式統計ではGDP成長率は5%となっているが、最近の状況見ると“0%に近い成長”になっているのではと感じる」

また、景気の良し悪しを示す【製造業購買担当者景気指数(PMI)】は、8月⇒「49.4」。目安の50を、5か月連続で下回っている。

柯隆さん:
「中国は世界の工場と言われていて、製造業購買担当者景気指数が50を下回るというのは、“異常事態”。“アラームが鳴りっぱなしの状況が続いてる”」

対米関税交渉「習氏はかなり譲歩する」

“三重苦”の1つである「トランプ関税」は、現在30%。
交渉がうまくいかなければ、一時停止されている24%の関税が上乗せされる可能性がある。

『東京財団』主席研究員 柯隆さん:
「関税30%をどう見るか。トランプ政権が一期目の時に課した<最高25%の関税>が残っているので、足すと50%前後の関税になる。中国の輸出製造企業の利幅を考えれば、50%前後の関税に耐えられるわけがない。VTRで出てきた深圳は、まさに輸出製造企業の町なので、経済は相当なダメージを受けている」

トランプ大統領は、10月末から韓国で開かれるAPEC(アジア太平洋経済協力会議)にあわせて習近平国家主席と対面で会談を行うとしているが、関税交渉はうまくいくのだろうか。

柯隆さん:
「中国も対米交渉をようやく重視してきて、アメリカに対して譲歩し始めた。TikTokの売却もそうだが、今後交渉が行われる(合成麻薬)フェンタニルの問題とか、もう一つはレアアース。多分レアアースは少しずつ出していかなきゃいけない。関税を下げてもらうために習近平主席がかなり譲歩してくると思う」

若者の失業率「実態は50%超」?

トランプ関税は、若者の失業率にも大きく影響している。

【中国 8月の失業率】※国家統計局
▼全体⇒5.3%
▼16-24歳⇒18.9%(2023年12月の統計方法変更以降で最悪)
▼25-29歳⇒7.2%
▼30-59歳⇒3.9%

調査対象には元々「出稼ぎ労働者」は含まれていないが、 柯隆さんによると、2023年12月からはさらに「就職活動をしていない人」、「親と同居している人」も除外されたという。

――実態は18.9%どころではない

『東京財団』主席研究員 柯隆さん:
「清華大学の研究チームの調査では、“実際は30%を超えている”と言われているらしい。また、先ほどの深圳で職探しをしているような出稼ぎの人を入れると50%を超える。このまま若者が就職できないとなると、自暴自棄になって社会に対する報復、犯罪に走る可能性が出てくるので、ものすごく治安が悪化して社会不安になる」

柯隆さんによると、中国の大学卒業は6月末で、卒業した学生が就職できず「7月は失業率が上がる」とのこと。しかし通常なら、その後は下がるか最低でも横ばいだというが、今回は8月にさらに上昇した。

柯隆さん:
「8月はアメリカへの輸出がマイナス33%だった。それでさらに解雇された人もいて18.9%に上がった。トランプ関税の影響が8月になって出てきたということ」

――若年層の失業率がどんどん高くなり、不況が深刻化しているとここ数年言われてきた。そこに手を打てていないということか

柯隆さん:
「一番雇用を作れる中小企業がコロナでたくさん潰れてしまった。もう一つは、飲食店。25年1-7月で、全国で270万店舗が閉店になった。客が食べに来ないから。それで若者の就職口がない。要するに負のスパイラルの状況。失業率が上がる⇒生活防衛で消費が伸びない⇒設備投資の抑制・飲食店も潰れる⇒失業者が出る。日本の“失われた30年”の入口とよく似てきている」

中国経済「迷路の出口」は?

8月の消費者物価指数も「前年同月比-0.4%」と、3か月ぶりのマイナスとなった。

『東京財団』主席研究員 柯隆さん:
「中国は本来、14億の人口だから物価がマイナスになりにくい体質を持っている。それでも最近見ているとマイナス。あと卸売物価、生産者物価指数(PPI)はずっとマイナスが続いている。つまり企業が設備投資をしない、そうすると工業製品が売れない。消費者物価というのは、日用品、食料品などが入ってるので、“完全にデフレ状態に陥っている”

――その上、不動産不況の出口が見えない状況がずっと続いてる。経済を正常化していく政策的な舵がなぜ切れないのか

柯隆さん
「やはり人間は期待値を持つ。特に政策立案者が『あと半年ぐらいしたらリカバリーされるだろう』と。かつて日本も同じことを考えて、時間をロスして気がついたら30年失われた。中国の政策立案者は今まさに同じことを考えている。もう1つは、今の中国では自由な言論ができないので、習近平主席の耳に都合の悪い情報が入りにくい。そうすると正しい政策が決断されない。これが多分一番困る。今のところ“迷路からの出口は全く見えてこない”

(BS-TBS『Bizスクエア』2025年9月27日放送より)

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