脳梗塞治療の未来を変えるか? 創薬ベンチャー・ティムスが新薬候補「TMS-007」の可能性を発表

2025-10-31 17:05

10月29日の「世界脳卒中デー」に合わせ、創薬ベンチャーの株式会社ティムスが同日、プレス向け事業説明会を開催しました。説明会では、同社が独自に実施した「脳梗塞に関する意識調査」の結果とともに、現在開発中の脳梗塞治療薬候補「TMS-007」の概要と今後の展望が語られました。

脳卒中とは、脳の血管が詰まったり破れたりすることで脳細胞がダメージを受ける病気の総称です。中でも血管が詰まることで発症する「脳梗塞」は脳卒中の約7割を占め、世界の死亡原因第2位、日本では第4位という深刻な疾患です。治療により一命をとりとめても、片麻痺や言語障害などの重い後遺症が残ることが多く、患者本人だけでなく家族や社会にも大きな負担となります。

現在の標準的な治療薬「t-PA」は、発症後4.5時間以内に投与しなければならず、脳出血のリスクもあるため、実際に投与できる患者は全体の10%未満にとどまっています。この「時間の壁」と「安全性の課題」を乗り越える新たな選択肢として期待されているのが、ティムスが開発する「TMS-007」です。本説明会の内容を詳しくレポートします。

「脳梗塞は死に繋がらない」は大きな誤解

株式会社ティムス 代表取締役社長 若林拓朗氏

最初に登壇したティムスの若林拓朗社長は、まず同社が東京農工大学発のベンチャーであり、日本のシーズ(創薬の種)をグローバル市場へ展開する「ブリッジ型」のビジネスモデルを持つ、日本有数のグローバルバイオ企業であることを紹介。続いて、ティムスが実施した「脳梗塞に関する意識調査」の衝撃的な結果に触れました。

「調査では、28.1%の方が脳梗塞を『死亡につながる可能性が低い』と認識していることがわかりました。これはインフルエンザや交通事故とほぼ同程度の認識であり、脳梗塞の危険性が著しく過小評価されている現状が浮き彫りになりました」(若林氏)

若林氏は、脳梗塞治療の現状について、唯一の承認薬である「t-PA」が抱える課題を指摘します。t-PAは血栓を溶かす強力な薬ですが、投与可能時間が発症後4.5時間以内と極めて短く、脳出血のリスクも伴います。その結果、t-PAの恩恵を受けられる患者は全体の10%未満に過ぎないのが現実です。

「この限定的な使用にもかかわらず、t-PAの世界売上高は約3,000億円に達します。もし、より安全で、より長い時間投与できる薬が生まれれば、マーケットはさらに大きく拡大する可能性を秘めています。ここに我々が挑戦する意義があります」(若林氏)

このような大きなアンメット・メディカル・ニーズ(未だ満たされていない医療ニーズ)に応えるべく、ティムスは次世代の治療薬「TMS-007」の開発を進めているのです。

発症後24時間以内の投与を目指す「TMS-007」の革新性

株式会社ティムス取締役会長(東京農工大学特任教授) 蓮見惠司氏

続いて、TMS-007の発見者である蓮見惠司会長が登壇し、その画期的な作用機序と臨床試験の結果について詳しく解説しました。

TMS-007は、黒カビの一種が作る天然の化合物から発見されました。その最大の特徴は、従来の治療薬とは全く異なる2つの作用を併せ持つ点にあります。


血栓溶解作用:体に元々備わっている血栓を溶かす仕組み(プラスミノーゲン)を穏やかに活性化させ、血流を再開させる。

抗炎症作用(虚血再灌流障害抑制作用):血流が再開した際に生じる炎症や酸化ストレスといった脳細胞への二次的なダメージを抑制する。

「t-PAは血栓を溶かす作用のみですが、TMS-007はこの2つの作用を併せ持つことで、出血のリスクを抑えながら治療効果を高めることが期待できます。この作用機序こそが、投与可能時間の大幅な延長を可能にする鍵なのです」(蓮見氏)

その可能性は、日本で行われた前期第2相臨床試験で示されました。この試験では、t-PAの適応外となる発症後4.5時間~12時間の患者を対象としましたが、結果は驚くべきものでした。


有効性:TMS-007を投与した患者群では、プラセボ(偽薬)群に比べ、後遺症がほとんどない状態まで回復した割合が有意に高いことが示されました(オッズ比3.34)。

安全性:最も懸念される重篤な頭蓋内出血は、TMS-007投与群では1例も発生しませんでした。

この有望な結果を受け、現在、米国バイオ投資会社RTWが支援するコーセル社主導のもと、発症後24時間以内の患者を対象としたグローバル第2相・第3相臨床試験「ORION」が進行中です。ティムスも日本のパートナーとしてこの試験に参加しており、今後の展開が大きく期待されます。

臨床現場の専門家も期待―トークセッションで語られた脳梗塞治療の未来

説明会の後半では、脳卒中治療の第一人者である須田智教授を交えたトークセッションが行われました。

日本医科大学 大学院医学研究科 神経内科学分野 大学院教授/日本医科大学付属病院 脳神経内科部長 脳卒中集中治療科 部長 須田智先生(右)と蓮見会長

――脳梗塞の後遺症について、現場ではどのように感じていますか?

須田先生:昔に比べて亡くなる方は減りましたが、後遺症なく社会復帰できる方はまだまだ少ないのが現状です。片麻痺や言語障害、嚥下障害(飲み込みの障害)などにより、以前と同じ生活を送ることが難しくなるケースが多く、介護が必要になる方も少なくありません。

――TMS-007が投与時間を24時間に延長できる可能性があることについて、医療現場のメリットは?

須田先生:絶大です。現状の4.5時間は、病院に到着してから検査などに約1時間かかることを考えると、実質3.5時間以内に来院していただく必要があります。これが24時間に延びるなら、治療を受けられる患者さんの数が劇的に増えるでしょう。まさに脳梗塞治療のパラダイムシフトが起きる可能性があります。

――日常生活で脳梗塞を予防するためにできることは何でしょうか?

須田先生:まずは「検診」です。血圧、コレステロール、糖尿病などのリスク因子を把握し、適切に管理することが最も重要です。その上で、禁煙、節酒、適度な運動、ストレス管理、質の良い睡眠といった生活習慣の改善を心がけてください。特に冬場は寒暖差で血圧が変動しやすいため、室温管理なども大切です。

――蓮見会長、TMS-007の開発で最も苦労した点は何でしたか?

蓮見会長:全てですが(笑)、特に作用機序が全く新しかったため、誰にも理解してもらえなかった時期が長かったことです。2000年に発見してから、本格的な開発が始まるまで14年かかりました。しかし、私たちはこの薬が多くの患者さんを救う未来を信じて開発を続けてきました。

新たな希望の光となるか……ティムスの挑戦は続く

説明会を通じて、脳梗塞治療が抱える大きな課題と、それに対する「TMS-007」という明確な解決策が示されました。意識調査で明らかになったように、脳梗塞のリスクは未だ社会に十分浸透していません。まずは一人ひとりが正しい知識を持ち、予防に努めることが重要です。

ティムスが開発するTMS-007は、万が一発症してしまった際に、より多くの患者が、より安全に治療を受けられる未来を切り拓く大きな一歩となる可能性を秘めているのは間違いないでしょう。現在進行中のグローバル試験の結果に、世界中から大きな期待が寄せられています。

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