「ガソリン高騰は日本だけ」低金利⇒円安⇒物価高の“悪循環”から抜け出せるのはいつ?【Bizスクエア】

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2025-11-05 06:20
「ガソリン高騰は日本だけ」低金利⇒円安⇒物価高の“悪循環”から抜け出せるのはいつ?【Bizスクエア】

円安を起点とした物価高で「ガソリンが高騰して苦しんでいるのは日本だけ」。それでも金利据え置きの日銀は、利上げにたどり着けるのだろうか?

【写真を見る】見通せないトランプ関税の負の影響

株高“熱狂”「年内まだまだある」

株高の勢いが止まらない。

10月27日に史上初めて5万円を突破した日経平均株価は、29日から3日連続で最高値を更新。31日は終値で前日より1085円高い5万2411円で取引を終えた。

『野村証券』小髙貴久シニア・ストラテジスト:
「年初来の不安定材料は、関税を巡るトランプ政権の政策の不確実性、日本では少数与党政権の政治の不安定さの2つだったが、日米首脳会談で政治の安定性が確保され、かつ大型の様々なビジネス取引が署名され日本企業と契約すると。アメリカとうまくコミュニケーションが取れない欧州などあるなか、これだけ親密にビジネスが進んでいるのは日本企業としては他国の企業と比べると全く環境が違うので追い風になっている」

では、日本市場の熱狂はいつまで続くのかー

小髙さん:
「2026年はアメリカの中間選挙。その手前に選挙に不利になる材料は一旦出尽くして、日本では補正予算や経済対策、減税などもある。“株価を押し上げる材料になるチャンスは年内まだまだある”

米財務長官が金融政策をけん制?

一方、為替をめぐっては、10月27日に行われたベッセント財務長官と片山さつき財務大臣の会談が注目された。

ベッセント氏は以前「日銀は後手に回っている」と発言。

会談でも“円安けん制”の話が出たのか聞かれた片山大臣は「直接的に金融調節をどうすべきかという話は全然出ていない」と話したが、28日、アメリカ財務省はベッセント氏が会談で『アベノミクスの導入時とは状況は大きく変わっており、健全な金融政策の重要性を説明した』と明らかにした。

さらにベッセント氏も29日、SNSに<日本政府が日銀に政策余地を与える意思を示すことが為替レートの過度な変動を回避するカギになるだろう>と投稿した。

“けん制”も日銀「金利据え置き」

直前の日米財相会談でさらに注目を浴びることになった日銀の金融政策決定会合だったが、30日「0.5%としている政策金利を6会合連続で据え置く」ことを決めた。

背景にあるのは、“トランプ関税の負の影響”だ。

【日銀 植田総裁発言要旨】(30日)
▼海外経済などは不確実性が高いので“もう少しデータを見たい”
▼来年の“春闘の初動のモメンタム”がどうなるか情報を集めたい
▼納得がいけば“政治状況にかかわらず”金利を調整する

ただ、「以前よりは利上げに前向き」と評価するのは、マネーマーケットの現場の視点から金融政策を分析する加藤出さんだ。

『東短リサーチ』社長 加藤 出さん:
「マーケットが期待していたほど12月・1月の利上げを植田さんが強く示唆しなかったことでハト的だという解釈が多くて円安が進んだ。ただ10月3日の植田さんの講演は大変慎重で利上げには三つのポイントがあるという言い方までしていたが、今回は『もう少しデータを見たい』と距離感が縮まっている言い方でもある」

――日銀の会合前にはベッセント財務長官による異例の円安けん制もあった。そもそも他国の閣僚が先進国の金融政策に、まして金融会合の直前に言及するなどというのは異例

加藤さん:
「ちょっと内政干渉的な感じもあるが、一方でベッセント氏の言い回しがだんだんエスカレートしている。8月は単に『日銀のインフレ抑制が遅れているから実態に合わせた金利を運営しなさい』という言い方だったのが、10月中旬になると『金融政策が適切なら為替レートは適切なところに行く』と為替レートへの言及が直接的になった。29日は『日本政府は日本銀行に政策余地を』と政府が日銀に利上げさせようとしていないじゃないかという指摘になっている」

低金利⇒円安で「ガソリン高騰は日本だけ」

ベッセント氏の発言を“異例のけん制”とする一方で、“ある意味正論”でもあると加藤さんは指摘する。

『東短リサーチ』社長 加藤 出さん:
「もちろん急に金利を上げてはいけないが、ただ今のインフレとのバランスで言うと日本はあまりに低すぎる。このような状況では、お金が外に流れやすいのでやはり円安が止まらない」

複数の国の通貨に対する自国通貨の総合的な価値を示す【名目実効為替レート】を見ると、主要通貨の中で円だけが突出して弱い。

10月下旬時点(※2020年の年初=100)
▼ユーロ圏:114.3
▼中国:108.4
▼アメリカ:106.8
▼イギリス:105.6
▼日本:74.4

加藤さん:
「それゆえ原油価格も、2020年初から最近までの原油価格の変化を見ると、円建てで計算すると日本だけが上がって見える。実は、“他の国はこの間原油価格は上がっていなくて、むしろ下がっている”。ガソリン価格が高いと国民が悲鳴を上げていて政府が対処せねばと騒いでいるのは日本だけで、円安をなんとかしないとガソリンの暫定税率を下げてもまたじわじわと上がり始める」

【2020年初からの原油価格の変化】
※ドル建て・10月27日時点
▼日本円:+37%
▼米ドル:0%
▼中国人民元:-1%
▼英ポンド:-1%
▼ユーロ:-4%
▼スイスフラン:-21%
(東短リサーチ分析より)

利上げ「1月の可能性が一番高い」

会合に合わせ日銀は、経済・物価の見通し(展望レポート)も公表したが、前回7月の発表から全く変えていない。

【日銀展望レポート(10月)】※前年度比
▼消費者物価指数(除く生鮮・エネルギー)
(24年度)2.7%⇒(25年度)2.7%⇒(26年度)1.8%⇒(27年度)2.0%

『東短リサーチ』社長 加藤 出さん:
「7月に比べて大きな情勢の変化がないということだが、ただ2%の目標に対して上振れしている状況が24年度から丸4年続きそうだと。今まで日銀は『インフレの上振れは一時的なので利上げを急がなくていい』という説明だったが、本当に一時的と言っていていいのか。また、『物価の基調がまだ十分に上がっていない』というが、これがまたわかりにくい説明なのでマーケットの間でもギクシャク感が出ている」

では、利上げのタイミングはいつになるのだろうか?
▼金融政策決定会合【12月18・19日】【1月22・23日】【3月18・19日】

加藤さん:
「日銀は今回盛んに『春闘の初動を見たい』と。初動というのは抽象的だが1月の賀詞交歓会あたりから徐々に春闘への方針を大手企業経営者が語り始める。また1月の決定会合の前にある日銀支店長会議で全国の企業の情報も集まってくることから考えると、“1月の可能性が一番高い”と思う」

一方、12月の可能性も残っているという。

カギとなるのは「アメリカの利下げ」。10月29日、FRB(連邦準備制度理事会)は政策金利を0.25%引き下げ、3.75~4%としたが、パウエル議長は12月の追加利上げには慎重な姿勢を示している。

加藤さん:
「FRBが12月に利下げをしないかも…みたいなマーケットの空気が高まってくると円安が相当進む。それでまたベッセント氏が強く言ってきたりすると12月の利上げの確率は高まる。“FRBが12月に利下げをするかしないか”は、結構大きな要因になってくる」

高市政権「説得」のポイントは?

――高市政権ときちんとすり合わせて調整ができるかどうかだと思うが、利上げを納得してもらうためのポイントは?

『東短リサーチ』社長 加藤 出さん:
「高市さんも首相就任会見で、コストプッシュインフレ(原材料費や人件費などの生産コスト上昇によるインフレ)ではなく、賃金が上がる形で起きるいわゆるデマンドプッシュ型のインフレになるまで利上げをしない方がいいというような発言をしている。そうなるとある程度春闘の話が見えてくる1月まで待たないと説得しづらい。ただ対アメリカとの関係で、日本政府もちょっとやばいかなと…となれば、つまり外圧があれば日銀は12月にやりやすくなる」

――また外圧頼みかという気もするが、やはり賃金と物価の好循環が少しでも進んでるということをきちんと説明できるかどうか

加藤さん:
「あとは、コストプッシュインフレなのか賃金が伸びることでのインフレなのかを植田さんも分けて説明しているが、現実はクリアに分けられない。すでに3年半以上日本国民はインフレに苦しんでいるわけで、それに対処しようとする姿勢を見せないと円安が進んでまたエネルギーや食品が上がっちゃって国民が苦しむという悪循環になる」

日銀は、「最大の物価高対策は円安を止めることなんだ」と説得できるのだろうか。

(BS-TBS『Bizスクエア』 2025年11月1日放送より)

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