「コーヒーかすはそのまま下水へ流して」黒部市独自のバイオマス発電とリサイクルとは<シリーズSDGsの実践者たち>【調査情報デジタル】

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2025-11-15 07:30
「コーヒーかすはそのまま下水へ流して」黒部市独自のバイオマス発電とリサイクルとは<シリーズSDGsの実践者たち>【調査情報デジタル】

富山県黒部市では、コーヒーを淹れた後のかすを、台所の排水管に流すことを市民に呼びかけている。その理由は、国内で唯一導入している下水汚泥のバイオマス発電とリサイクルの仕組みにあった。「シリーズSDGsの実践者たち」の 第49回。

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コーヒーかすを下水に流すだけでSDGsに貢献

コーヒーメーカーやドリップバッグでコーヒーを淹れている人は、コーヒーかすを可燃ゴミに出すことが一般的だろう。ところが、富山県黒部市ではコーヒーかすをそのまま下水に流すように呼びかけている。

その方法は、シンクの排水かごを外して、ペーパーフィルターからコーヒーかすを出して、水と一緒に流すだけ。

コーヒーかすを下水に流すことを奨励している自治体は、全国で黒部市しかない。その理由を黒部市上下水道工務課の柳田英昭さんが説明する。

「コーヒーかすはそのまま流しても大丈夫だということと、コーヒーかすを流すだけでSDGsに貢献できることを市民にPRしています。その理由の一つは、可燃ごみを減らせること。もう一つは、コーヒーかすを活用してバイオマス発電ができることです。黒部市では全国の自治体で唯一、環境循環型の下水道バイオマスエネルギー利活用施設を所有していて、コーヒーかすを活用したバイオマス発電や下水汚泥のリサイクルを行っています」

下水汚泥処理に困ってコーヒーかすに着目

黒部市下水道バイオマスエネルギー利活用施設は2011年から稼働している。公共施設の整備や運営に民間の資金、経営能力、それに技術力を活用するPFI事業によって導入された。荏原製作所グループの「水ing」が出資する特別目的会社の「黒部Eサービス」が運営している。

もともと黒部市では、下水道の汚泥は産業廃棄物として民間の業者に処分を委託していた。柳田さんによると、汚泥の処理に困ったことをきっかけに施設の導入を構想したという。

「平成の初めの頃に、それまで処分を委託していた業者から、産廃処分場の容量がなくなったので今後は受け付けることができないと突然言われて、市としては困惑しました。今後の対応を検討する中で、下水汚泥を処分するのではなく、エネルギーに変える施設ができないかと考えました。その際に、コーヒーかすがバイオガスを発生させるのに効果的だということを、当時の担当者がどこからか見つけてきて、バイオマスエネルギー利活用施設を構想したそうです」

コーヒーかすの活用を考えたのは、隣の入善町に缶コーヒーを製造するアサヒ飲料北陸工場があるからだった。飲料メーカーにとっても、毎日大量に出るコーヒーかすをどのように処理するのかは課題だった。

ただ、当時の研究では、下水汚泥とコーヒーかすを混ぜただけではバイオガスを期待通りに発生させることはできないと一般的には考えられていた。

すると、市が新たな施設を構想したのとほぼ同じ時期に、バイオマス発電の研究開発をする荏原製作所の一部門が、コーヒーかすと下水汚泥を混ぜてメタン発酵をさせ、バイオガスを大量発生させる技術を開発した。黒部Eサービス代表取締役社長の大矢佳司さんが当時を振り返る。 

「飲料メーカーさんの工場から出るコーヒーかすを何とかしたいという要望を受けて、2000年頃から研究開発をしていました。コーヒーかすはメタン発酵には向かないと言われていた通り、ドリップした後のジャリジャリしたコーヒーかすでは、なかなかうまくいきませんでした。

それが、研究を進めた結果、ジャリジャリのコーヒーかすを下水汚泥と混ぜて細かくすりつぶして、ごまドレッシングのように滑らかにすると、メタン菌の餌になることがわかりました。メタン菌は汚泥とコーヒーかすを食べることでガスを発生させます。バイオガスを取り出すことができるようになり、黒部市さんが要求する水準にも合いましたので、入札に応募して落札することができました」

コーヒーかすは濃縮下水汚泥の約10倍ガスを発生させる

下水道バイオマスエネルギー利活用施設を実際に見せてもらった。通常の下水道処理施設は、コンクリートなどで外壁が囲まれている場合が多い。ところが、この施設は総合運動公園に隣接していて、特に壁などはない。しかも、バイオマス発電による熱を活用した足湯を作っていて、市民に無料で開放されている。

施設にはコーヒーかすの搬入口が設けられていた。アサヒ飲料や県内の飲料工場から持ち込まれるコーヒーかすは年間約2000トン。市内のホテルからも月160キロほどが持ち込まれる。 

コーヒーかすがバイオガスを多く発生させることができるのは、脂質が多く含まれているからだ。荏原製作所が開発した方法によって、コーヒーかす1トンから約200立方メートルのバイオガスが発生する。濃縮した下水汚泥1トンから発生するバイオガスが約20立方メートルであることに比べると、約10倍もの量になる。このバイオガスによって、化石燃料を使わずに発電ができるようになった。

「1回お湯を通しただけで捨てるのはもったいない」

ただ、施設の年数が経つにつれて新たな課題が出てきた。それは、バイオガスの量が減少してきたことだ。人口減少によって下水汚泥が減ってきたことに加えて、バイオガスのボイラーの蒸発効率が低下していることなどが原因と考えられた。

発電量を増やすためにもっとコーヒーかすを集めようと、市内のファミレスやコンビニにも相談したものの、なかなか賛同が得られなかった。そこで大矢さんが思いついたのが、黒部市内の家庭からコーヒーかすを集めることだった。

「私の自宅は富山県外ですが、ある日家でコーヒーを淹れていて、黒部市だったら有効に使えるのに、1回お湯を通しただけでかすを捨てるのはもったいなと思いました。その時に、黒部市ではコーヒーかすを直接下水に流しても問題がないことに気づきました」

黒部市は生ごみを粉砕処理するディスポーザを設置した家庭に補助金を出し、市内での普及率向上を目指している。家庭ごみを処分する際の収集コストが高くなっていることから、ディスポーザから下水に直接流すことで、一般的に可燃ごみの3割から4割程度を占めると言われる生ごみの量を減らすことと、ディスポーザで粉砕した生ごみと下水汚泥などを混合発酵させて、バイオマスを取り出すことが狙いだ。

また、市内を流れる黒部川は、3000メートル級の北アルプスから黒部峡谷を一気に駆け下る世界的にも急流な河川で、巨大な扇状地が形成されている。この地形によって下水も低地に向かって流れていくため、ある程度粉砕された生ゴミであれば、下流の低地にあるバイオマスエネルギー利活用施設までスムーズに届く。

市と黒部Eサービスでは、粉砕された生ごみと同様に、細かいコーヒーかすであれば、そのまま下水に流すことで施設に届くことに気づいて、2023年2月から市民に呼びかけを始めた。すると、家庭のほか、喫茶店からも持ち込まれるようになった。家庭から集まる量は多いとは言えないものの、発電量を維持するのには役立っているという。

乾燥汚泥を燃料や堆肥に100%リサイクル

下水道バイオマスエネルギー利活用施設は、バイオマス発電とともに、下水汚泥とコーヒーかすを100%リサイクルできることでも、環境に貢献している。

バイオガスを取り出した下水汚泥とコーヒーかすの混ざり合った消化汚泥は、脱水機にかけられる。

ここで水分を約81%に落とした汚泥を、さらに乾燥機に入れる。この乾燥機の燃料は、メタン発酵槽から取り出したバイオガスのため、化石燃料は使用していない。

乾燥機を通して、水分含有率が約42%の乾燥汚泥が出来上がる。水分が抜けることで、汚泥の量は半分近くにまで減少する。乾燥した汚泥は匂いも弱く、触っても問題はない。 

乾燥汚泥は石炭の3分の2程度のカロリーがあり燃料として利用できることから、高岡市にある製紙工場の中越パルプ工業で、バイオマス発電の燃料として利用されている。二酸化炭素排出量が削減されるメリットがあるという。

また、乾燥汚泥はそのまま肥料としても利用できる。堆肥の原料として業者に引き取ってもらっているほか、市民にも無償で配布している。施設ができる前は処分に困っていた下水汚泥を、化石燃料を使うことなく、燃料や肥料として丸ごとリサイクルできるようになったのだ。

バイオガス発電や下水汚泥の100%リサイクルができる下水道処理施設があるのは、全国で黒部市だけだ。今後も市民に「コーヒーかすは下水へ」と呼びかけることで、下水汚泥を資源に変えていく。

(「調査情報デジタル」編集部)

【調査情報デジタル】
1958年創刊のTBSの情報誌「調査情報」を引き継いだデジタル版のWebマガジン(TBSメディア総研発行)。テレビ、メディア等に関する多彩な論考と情報を掲載。原則、毎週土曜日午前中に2本程度の記事を公開・配信している。

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