日本初の人工衛星「おおすみ」の成功 ―ソ米仏に次ぐ宇宙開発への名乗り(1970年)

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2025-11-19 07:00
日本初の人工衛星「おおすみ」の成功 ―ソ米仏に次ぐ宇宙開発への名乗り(1970年)

1970年、日本は初の人工衛星「おおすみ」の打ち上げに成功し、世界で4番目の衛星打ち上げ国となりました。開発を担ったのは国家機関ではありません。あの日産自動車と東京大学宇宙航空研究所。限られた予算と設備のなかで何度も失敗した末につかんだ栄光でした。(アーカイブマネジメント部 疋田 智)

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日本初の人工衛星は民間の力で

1970年2月11日、日本初の人工衛星「おおすみ」が鹿児島県内之浦から打ち上げられ、日本は世界で4番目の人工衛星打ち上げ国となりました。
開発を担ったのは、日産自動車と東京大学。直径31センチ、重さ24キロの小型衛星でした。

この小型衛星は宇宙空間での温度や通信データの取得を目的とした実験機でしたが、衛星本体以上に重要視されたのは、それを軌道へ運ぶロケット技術でした。

失敗に次ぐ失敗の末に

打ち上げは決して順調ではありませんでした。
1966年から69年まで4回連続で失敗し、姿勢制御や点火タイミングなど多くの課題が噴出。計画中止の声すら上がりました。

じつは日本のロケット打ち上げには大きなハンディがあり、技術者はそこをクリアしながら打ち上げなくてはならなかったのです。そのハンディとは「誘導制御装置」の有無でした。

平和利用ゆえの足かせか

「おおすみ」を打ち上げるラムダ4Sロケットには、地球周回の軌道に乗せるために必須とされていた「誘導制御装置」が付いていませんでした。

これは当時の野党第一党・日本社会党などから「誘導装置はミサイルの開発につながり、軍事技術への転用が可能」だとして、猛反対を受けていたからです。
当時の日本社会党は「非武装中立論」をとっていて、軍事転用技術の開発などもってのほかだったのです。

しかも使用されたのは固体燃料でした。これは費用の問題だったとされます。固体燃料のみで人工衛星を投入する方式は世界的にも難易度が高く、挑戦的な計画でした。

世界でも異例の「完全無誘導4段式ロケット」

誘導装置を搭載できなかったため、ラムダ4Sロケットは、ほぼすべて事前プログラムだけで飛ぶ“無誘導ロケット”になりました。
「事前プログラムのみの姿勢制御」「推力調整なし」「完全予定飛行」「一度狂うと修正不可」これが技術者たちに課せられたハードルでした。

このため 初期の4回連続失敗につながったとも言われています。
それでも5号機で成功したのは、技術者たちの絶え間ない努力と研究の結果だったのは間違いありません。

2003年まで地球のまわりを

5号機打ち上げ後、衛星からの電波が確認されると、内之浦の管制室は歓喜に包まれました。独自技術で宇宙へ到達するという、日本の長年の悲願がついにかなえられたのです。人工衛星の打ち上げ成功はソ連、米国、フランスについでの快挙でしたが、ソ米仏の3か国が軍事技術を転用しての成功だったのに比較すると、日本のロケットはあくまで平和的な研究の末でした。

人工衛星 「おおすみ」は高度約350km以上の軌道を周回し、そのまま2003年まで地球を回り続けました。

この後、日本の衛星打ち上げ技術は、気象衛星や惑星探査機などより高度な宇宙科学へと進んでいきます。今日の「はやぶさ」「はやぶさ2」などの成果は、この小さな衛星の成功が築いた基盤の上にあるのです。

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