SNSは党首人気とどう関わる?~2025年参院選における調査結果より~【調査情報デジタル】

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2025-11-22 08:00
SNSは党首人気とどう関わる?~2025年参院選における調査結果より~【調査情報デジタル】

近年、選挙におけるSNSの影響に大きな注目が集まっている。新聞、テレビ、SNSなど各メディアに対する人々の信頼度は、政治家の人気にどう関わっているのだろうか。慶應義塾大学の谷口尚子教授による考察。

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SNSを活用する政治的リーダーの人気

2024年に実施された東京都知事選挙・兵庫県知事選挙・衆議院議員総選挙で社会を驚かせたことは、「SNSを効果的に活用する政治的リーダーの人気」であった。

東京都知事選挙では、動画配信等で知名度があった前安芸高田市長の石丸氏が、第2位に入る健闘を見せた。兵庫県知事選挙では、再選を目指した斎藤氏を巡り、SNSを中心に「推し活」とも表現される支持が生まれた。衆院選で議席増を果たした国民民主党の玉木代表は、「ネットどぶ板」と呼ばれるSNSを通じた直接コミュニケーションを展開した。

こうした現象は、SNSが政治的リーダー個人の人気を押し上げるツールであることを窺わせる。

そもそも我々有権者が政治に関する情報を直接得る機会は限られており、各種メディアを通じてそれを得る場合が多いだろう。そして政治情報を流通させる主要メディアは、新聞・テレビといったマスメディアからインターネットへと多様化している。

特にインターネットにおいては、検索アルゴリズム等によって人々が自分の好みの情報に取り囲まれる現象(フィルター・バブル)や、SNSのフォロー関係などから似た意見の人と共鳴し合う現象(エコー・チェンバー)が、政治的意見の分極化を引き起こすともされる。

また、新聞やテレビ等のマスメディアから一方通行の情報を受け取る場合と異なり、SNSでは政治家と有権者がコミュニケーションをとることができる。政治家は有権者に語りかけてパラソーシャル(疑似的に親密)な関係を作り、有権者の感情的支持を惹起する。支持者がSNS等を通じて活発なコミュニティを形成する様は、「政治的ファンダム」とも呼ばれる。

さらにこうした政治家への支持やコミュニティの形成は、特定の争点を巡って活発化する場合がある。例えばSNSに盛んに投稿する米トランプ大統領への支持の背景には、経済情勢や移民問題に対する人々の強い不満があると分析されている。

そこで本稿では、人々の情報メディア(新聞・テレビ・SNS)への信頼と争点への関心が、どのように政治的リーダー(本稿では党首を扱う)の好感度に関わっているのかを、直近の国政選挙、つまり2025年実施の参議院議員通常選挙時に行なった全国世論調査(JESⅧ調査)のデータを使って探ってみたい(注)。

どんな人がSNSの政治情報を信頼している? 

まず政治情報について、どのような人がどのようなメディアを信頼しているかを知るために、性別や年齢、「保守―革新」イデオロギー、争点への関心との関係を確認する。

日本政治に関する従来の世論対立は、とりわけ安全保障のあり方を念頭に置いた「憲法改正」対「護憲」という「保守―革新」(保革対立・左右対立)軸に象徴されていた。しかし近年の対立軸は、経済停滞に伴って懸念される所得格差の問題、人口の減少・偏在に代表される地域間格差の問題、社会保障制度等を巡る世代間格差の問題、男女間格差の問題、そして外国人受け入れ問題等を巡って、多元的に存在するとも考えられる。

例えば2025年参院選に際して毎日新聞が用意した投票支援ツール「えらぼーと2025」は、有権者の政治的選好を計るために「憲法改正」「日米関係」「消費税率」「社会保障制度」「経済成長と環境保護」「夫婦別姓」「外国人受け入れ」といった争点を扱っていた。そこで保革対立と共に、このような複数の争点を重視するかどうかに注目してみる。

本調査では、新聞・テレビ・SNSの政治情報の各信頼度について、「まったく信頼できない=1」「あまり信頼できない=2」「まあ信頼できる=3」「かなり信頼できる=4」から1つを選んで回答してもらっている。表1に、性別・年代・保守派/革新派・各争点を重視する人別に、3つのメディアに対する信頼度の平均値を示した。

全体としては、新聞>テレビ>SNSの順で政治情報に対する信頼度が高い。そして、新聞やテレビへの信頼度は女性や高齢層で高く、SNS信頼度は若者層において高いことがわかる。また、自分の考えが「革新」と思う人ほど新聞・テレビを、「保守」と思う人ほどSNSを信頼していた。

さらに、いずれの争点についても重視する人は新聞を信頼しているが、地域間格差や男女間格差の問題を重視する人は新聞やテレビ、安全保障問題や外国人受け入れ問題に関心がある人はSNSへの信頼度がやや高くなる傾向もあった。これらは、属性や関心のある争点によって、各情報メディアに対する信頼度が異なることを示唆している。

SNS等への信頼や争点への関心は党首人気にどう関わっている? 

次に、これらの項目がどのように党首の好感度に関わっているのかを確認した結果を、表2に示す。本調査では各党首への好感度を、「嫌い」を0度、「好き」を100度とする「感情温度計」を用いて測定している。その項目においては、回答者に各党首への好感度を0~100度の範囲で答えてもらった。

これによると、男性や若者層の好感度が高いのは玉木氏・神谷氏で、石破氏(調査当時自民党党首)・野田氏のような大政党の党首は高齢層で好感度が高かった。概ね、自身を保守派と回答した人は保守政党の党首を、自身を革新派と答えた人は革新政党の党首を好む傾向にあった。

争点については、所得格差や男女間格差の問題を重視する人は革新政党の党首に、安全保障や外国人受け入れ問題を重視する人は保守政党の党首に好感を抱いており、こうした争点が現在の左右対立軸に関係していることがうかがわれた。他方でSNSの政治情報を信頼する人は、玉木氏・山本氏・神谷氏・百田氏への好感度が高く、テレビの政治情報を信頼する人がそれ以外の党首について好感を持っていた。

ちなみに複数の項目の影響を考慮した重回帰分析という統計分析法を使った場合でも、若年層や保守派、安全保障や外国人受け入れ問題を重視する人でSNS信頼度が高いという結果となった。

また党首好感度に関する重回帰分析では、SNS信頼度は比較的新しい/小さい政党の党首好感度と結びついていた。これらのことは、SNS信頼度は日本社会に対する外的・将来的リスクを感じている人において高く、かつ新しいリーダーへの期待に結びついていることを示唆していると考えられる。

もちろん、このような結果は項目間の「相関関係」を表しているだけで、何が原因・結果なのかという「因果関係」を突き止めているものではない。例えば「SNSを信頼するから特定の党首を支持するようになる」と結論付けられるものではなく、「SNSを信頼している人が〇〇党首を支持している」ということを示すに過ぎない。

しかしこの結果は、人々の各種メディア信頼と政治的対立軸とがリンクしていることは示唆する。SNSは現状、特定の属性や争点にマッチした場合に政治的リーダーの人気に繋がっている。また最近のマスメディア不信の背景には、政治的・社会的に根深い要因があると考えるべきであろう。

注:本稿で使用した調査データは、2025年度~2028年度 文部科学省科学研究費補助金(基盤研究A:25H00533)「大規模政治意識調査『JESⅧ』による現代民主主義体制の理解・改善・課題解決」に基づき取得された。当該プロジェクトや調査に関係された方々に深く感謝する。匿名のインターネット調査で、47都道府県毎に回答者の年代・性別・居住地の都市規模の分布が国勢調査のそれに沿うように回収しており、総回答者数は9989名である。

<執筆者略歴>
谷口尚子(たにぐち・なおこ)
慶應義塾大学教授。専門は政治過程論、政治行動論。
慶應義塾大学大学院法学研究科政治学専攻博士課程単位取得退学、博士(法学)。
東京工業大学大学院社会理工学研究科准教授、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授等を経て現職。日本政治学会・日本選挙学会・公共選択学会各理事等を務めた。

著書に『現代日本の投票行動』慶應義塾大学出版会(2005年)、論文に谷口尚子, クリス・ウィンクラー.2020.「世界の中の日本の政党位置―政党の選挙公約に見る左右軸の国際比較研究」『年報政治学』71(1):128-151, Winkler, Christian G. and Naoko Taniguchi. 2022. Only Right Makes Might? Center-Right Policy Competition Among Major Japanese Parties After Electoral Reform, Journal of East Asian Studies 22(3):503-523等。

【調査情報デジタル】
1958年創刊のTBSの情報誌「調査情報」を引き継いだデジタル版のWebマガジン(TBSメディア総研発行)。テレビ、メディア等に関する多彩な論考と情報を掲載。原則、毎週土曜日午前中に2本程度の記事を公開・配信している。

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