Notta株式会社は、AI議事録サービス「Notta」における資金調達および新サービスに関する発表会を12月9日(火)に開催。
同社は、AI文字起こしや議事録作成から事業をスタートし、イヤホンやカード型AI音声レコーダーなどのハードウェアの開発も展開してきました。今回、蓄積した音声ナレッジベースをAIが検索、解析する新サービス「Notta Brain」が発表されました。
発表会には、Notta株式会社 創業者兼CEO Ryan Zhang氏、COO 田村清人氏が登壇。田村氏より企業紹介、シリーズB資金調達および新サービス「Notta Brain」の発表が行われました。
「Notta」の高精度音声認識とAI要約機能で業務効率化へ

AI議事録サービス「Notta」では、高精度の音声認識とAI要約機能によって、1時間の音声をわずか5分で文字起こし・要約が可能です。Nottaを使うことで、商談やウェブ会議の議事録作成を簡易化し、情報共有の効率化を図れます。

そのほかの特長としては、58言語の文字起こしに対応、AIテンプレートで議事録を自在に作成可能、次世代カード型AIボイスレコーダー「Notta Memo」でどこでも高品質に録音ができるという点があります。

Nottaは、個人・チーム・大企業それぞれに適したサービスを定額プランで提供しています。個人向けのプランは1,980円/月から利用でき、チームで作業ができるビジネスプランは4,180円/月からとなっています。
音声AIエージェント市場は2034年には約20倍の規模に

田村氏は、音声AIエージェント市場の成長性について「2024年から2034年へ、Voice AIは新たなフェーズ」に入ると説明しました。初期市場規模(2024年)が24億ドルであるのに対して、2034年の予測は475億ドルと、約20倍に拡大すると予想されています。

そんな急拡大中の音声AIエージェント市場で最前線を走る同社のユーザー数は25年4月に1000万人を突破し、現在は1500万人ユーザーを超えているそうです。同社のサービスは海外にもユーザーが多いですが、国内ユーザーだけでも320万ユーザーを突破しています。

今年リリースされた「Notta Memo」の売上も好調とのことです。
23億円のシリーズB資金調達発表

続いて、Granite-Integral Capitalから23億円のシリーズB資金調達を実施したことが発表されました。
Granite-Integralは、Granite AsiaとIntegral Globaltech Partners(IGT)による共同事業で、1億米ドル規模の成長投資ファンドを運用しています。Granite Asiaはシンガポールを拠点にAPAC全域で50億米ドルを運用するアジア有数の投資プラットフォームで、ユニコーン級企業への投資やIPO実績を多数有しています。

資金調達の背景と目的については、下記の2点が説明されています。
(1)エンタープライズ向け事業拡大にともなう人材採用 現在、個人ユーザーに加え、数千人を超える単位での法人導入も増えています。今後はさらなる営業・サポート体制の拡充を目指し、人員を採用してまいります。
(2)音声AI領域の開発強化 「Notta」は、AI文字起こしからサービスを開始し、議事録自動作成、AIボイスレコーダーの開発など、音声AI領域においてソフトウェア・ハードウェアともに開発を進めてまいりました。今後もソフト・ハードの両軸で、さらに便利な機能の拡充、プロダクトのブラッシュアップを進めてまいります。
「ハードウェア エコシステム」については、「Notta Memo」に続く新製品を開発予定、「企業顧客向け支援体制の強化」については、ここ半年で法人からの毎月の収益が70%が増加していて、引き続き鋭意採用中、とのことです。
また、「AIを中心としたソフトウェア開発の加速」として、今回発表された新サービス「Notta Brain」が挙げられました。
「Notta Brain」でデータ解析から資料作成までを一気通貫に
今回発表された、AI議事録サービス「Notta」の新機能”音声ファースト”AIエージェント「Notta Brain」は、音声データに多様な情報を掛け合わせることで、データ解析から資料作成までを一気通貫で実行するソリューションとして実装予定です。従来のAIでは十分に活用しきれていなかった「会話」という一次情報を最大限に引き出し、企業に蓄積された知識の共有や意思決定を高度に支援することを特徴としています。
企業内には日々、多量の会話データや資料が蓄積されます。しかし、必要な情報を遡って探し出すには手間がかかり、要約だけでは文脈を把握しにくいという課題がありました。さらに、複数の議事録を横断して分析することは難しく、理解に時間を要するほか、ハイコンテキストな会話や社内固有の用語をAIが十分に読み解けないといった問題も指摘されています。

また、資料と議事録の要約を組み合わせて分析する際には、音声テキストを一度ダウンロードし、別ツール(ChatGPT、Gemini、Copilotなど)にアップロードする必要があり、運用面でも手間が発生していました。
加えて、企業では「必要な情報が適切な人に届かない」「別の会議ですでに解決された議論が再び取り上げられる」「新しく参加したメンバーが、過去の背景や意思決定プロセスを把握できない」といった情報ギャップが組織運営の阻害要因となることが少なくありません。本来、会話データは組織全体で活用すべき重要な知識資産であるにもかかわらず、十分に共有・再利用されていない状況が続いています。

「Notta Brain」により、こうした手間や情報断絶を解消し、個々の理解促進、コミュニケーションの高度化、コラボレーション品質の向上、さらには分析・資料作成プロセスの効率化を実現するとしています。「Notta Brain」は単なる要約ツールにとどまらず、会議での論点を統合的に扱い、他会議での議決内容との照合まで自動で行うことで、企業全体のコミュニケーションを円滑にするデジタル資産として機能します。
企業の会話データは、全社的なナレッジベースとして極めて重要な役割を果たします。同社はその価値を最大化し、“第二の脳”として機能するプロダクトの実現を目指し、今後も開発を進めていく方針を示しました。
「Notta Brain」だからできること

「Notta Brain」だからできることとして、大きく分けて3つの作業が挙げられました。
(1)議論の見える化
複数の議事録を横断分析。すでに解決済みの課題や重複する議論を一瞬で判明。組織全体で論点を共有でき、意思決定スピードが加速します。
(2)爆速オンボーディング
新メンバーが過去の背景や意思決定の文脈を即座に把握。社内特有の知識も統合されていて、立ち上がり時間が大幅に短縮。
(3)資料作成のゼロイチ
会話データから資料化まで、プラットフォーム内で完結。コンテキストの引っ越しいらず。本当に価値のあるタスクに集中できるようになります。
Nottaが描く“音声AI”の次なるステージ
Nottaが発表した「Notta Brain」は、会議の自動文字起こしという従来の枠を超え、企業内に蓄積された会話データを“知識資産”として使いこなすための新しいアプローチを提示していました。ユーザー1500万人を超える大規模プラットフォームとして培ってきた技術を軸に、議論の可視化、爆速オンボーディング、資料作成の効率化など、実務に直結する価値が強調されていた点も印象的です。
企業の情報量が増え続ける今、会話データをいかに活用していくかは多くの組織にとって大きな課題です。「Notta Brain」はその課題に対する現実的な解決策として、今後の業務フローを大きく変える可能性を感じました。2026年1月の正式提供に向け、企業のコミュニケーションと意思決定がどのように進化していくのか注目が集まります。