キャッシュレス社会の実現はどこまで? 30の支払いシーンから見る利用実態と世代間ギャップ
TISインテックグループのTIS株式会社は、全国15~69歳の男女600名を対象に、日常生活や冠婚葬祭など全30の支払いシーンにおけるキャッシュレス決済と現金の利用実態・利用意向を調査した結果を発表した。経済産業省によれば、2024年の国内キャッシュレス決済比率は42.8%と初めて4割を超え、将来的には80%までの引き上げを目指して環境整備が進められている。TISは社会課題の一つとして「金融包摂」を掲げ、安全かつ円滑なキャッシュレス決済の実現に向けたシステム開発を推進している。
日常生活では7割超がキャッシュレス派、冠婚葬祭でも3割以上が利用意向

日常生活の支払いシーン(図1 No.1~13)では約7~8割が「キャッシュレス派」と回答し、利用実態を上回る意向が示された。冠婚葬祭・儀礼的な支払い(図1 No.14~19)でも3割以上がキャッシュレス派であり、特に「結婚式のご祝儀」では20代42.0%、30代43.0%と若年層で高い比率を示した。事前振込型のご祝儀の普及も背景にあり、今後の拡大が予想される。また、現金主体のエンタメ分野(図1 No.23~30)でも「ゲームセンター」57.7%、「カプセルトイ」55.0%と過半数がキャッシュレス意向を示した。
キャッシュレス利用意向ランキング、交通手段が上位

「高速道路の通行料」83.5%、「電車やバスの乗車料」82.8%と交通手段への支払いが上位を占めた。スムーズな移動への需要がキャッシュレス志向を後押ししている。
さらに「病院やクリニックで診察料を支払うとき」でも73.8%がキャッシュレス意向を示し、現金主体の場面でも環境が整えばキャッシュレスを選びたいという意向が確認された。
現金利用意向ランキング、冠婚葬祭や「お金を贈るシーン」が上位

冠婚葬祭やお小遣い・お年玉・募金・投げ銭などでは「現金派」が優勢であり、特に「結婚式のご祝儀」では60代が85.0%と突出して高い。20代58.0%、30代57.0%と世代間で意識差が見られた。
冠婚葬祭シーンの理由、現金派は「伝統的慣習」、キャッシュレス派は「現金準備の手間」

冠婚葬祭で現金派を選んだ理由は約半数が「伝統的な慣習だから」であった。一方キャッシュレス派は半数以上が「新札の用意が面倒だから」と回答し、利便性を重視する姿勢が明らかとなった。
「お年玉」については「お金の価値を考える機会」「使い方を学ぶ良い機会」として現金を支持する声も一定数存在した。
友人・知人との金銭授受、相手環境次第でキャッシュレス志向

友人や知人との金銭授受では「現金の方が安心だから」が最多理由であったが、30~50代では「相手がキャッシュレスを使っていないことがあるから」という回答も3~4割を占め、環境が整えばキャッシュレスを利用したい意向が伺える。

一方キャッシュレス派の理由は「ラク・スムーズだから」が約半数を占め、利便性が支持されている。20代では「飲み会の会費」73.0%、「ランチ割り勘」72.0%、「旅行代金精算」69.0%と他世代よりも高い割合でキャッシュレスを選択している。
本調査は、日常生活におけるキャッシュレス決済の浸透とともに、冠婚葬祭など伝統的な場面にも徐々に広がりつつある傾向を示した。特に若年層においてキャッシュレス利用意向が高く、今後の社会環境整備次第では「キャッシュレス社会」のさらなる発展が期待される。