“謎の動画”「イタリアンブレインロット」から「シール交換」まで…ヒット商品からみる2025年の消費【Bizスクエア】

消費・流通・マーケティングの専門誌『日経MJ』が発表した「2025年ヒット商品番付」。そこから見えた消費のトレンド「3つのR(Real・Retro・Reiwa)」とは?
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横綱「大阪・関西万博」「国宝」
2025年のヒット商品番付。まずは、東西の【横綱】から。
東の横綱はあまり盛り上がらなかった開幕前の懸念を覆し2557万人が来場した▼【大阪・関西万博】だ。飛ぶように売れた「ミャクミャク」グッズなど、経済効果は3兆541億円との試算もあり、日本経済への貢献も大きい。
対する西の横綱は、邦画実写の記録を塗り替えた映画▼【国宝】。
任侠の一門に生まれながら歌舞伎役者の家に引き取られ、芸の道に人生を捧げた主人公の半生を描いた作品だ。
20代男性:
「若者が歌舞伎に興味なくても、これ観ることによってめちゃめちゃ分かりやすい映画になっていて、非常によかったなと」
歌舞伎に馴染みのない若い世代も映画館に足を運び、興行収入は12月14日時点で179億円を突破。実写の日本映画の興行収入では“22年ぶりにトップ”となった。
2025年は映画の当たり年で、アニメの▼【劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来】も東の【小結】に。
国内の興行収入は11月16日時点で、歴代2位の379億円。世界157の国と地域でも公開され、日本映画史上初の「世界興行収入1000億円」を突破している。
大関「ドジャース制覇」「Nintendo Switch 2」
東の【大関】は、▼【ドジャース連覇】
大谷、山本、佐々木、日本人3選手の活躍が生んだ経済効果は、ポストシーズンだけで1300億円超との試算も。
一方、西の大関は日本が誇るゲーム機の待望の次世代機▼【Nintendo Switch 2】。
発売からわずか4か月で1000万台を突破し、任天堂のゲーム機史上最速のロケットスタート。「強いエンターテインメント」は、物価高が叫ばれる中でも活発な消費をもたらした。
“中毒性がある”動画や謎キャラも
【関脇】は、東▼【日経平均5万円】/西▼【米(コメ)フレーション】と、25年の日本経済を象徴する顔ぶれ。
女性:
「5kg6000円とかになった時は買わなかった。25年は買う頻度をかなり減らした」
さらに、AIが生んだ“謎の動画”も番付入り。
▼【イタリアンブレインロット】(西・前頭)は、インターネット上で拡散されている“中毒性がある”動画コンテンツ。生成AIが生んだキャラクターの奇抜な見た目と音楽が特徴的で、小学生を中心に絶大な人気を誇った。
13歳女の子:
「歌をみんなで歌ったりとか、キャラクターのポーズの真似とか。推しは、トララレロ・トラララくん(笑)」
中国発のキャラクター▼【LABUBU】(西・小結)もSNSをきっかけに世界的な争奪戦となるなど大ヒット。街行く女性のバッグにはぬいぐるみがぶら下がり、「可愛いのは、歯がギザギザしているところ」「顔とモコモコが好き」との声。
10体ほど買ったという女性は「総額5万円ぐらい。手に入らんってところが、手に入れた時の満足感かな」と話す。
大ヒット「歯磨き粉」や1本55円の「無限串」
東の【前頭】には、身近な生活用品も。
▼水分に触れると発泡する【花王「ピュオーラ 炭酸ハミガキ」】
▼コンセントが必要なく、携帯できる高圧洗浄機【ケルヒャージャパン「OC Handy Compact」】
『ケルヒャージャパン』マーケティング&プロダクト本部 加藤統子本部長:
「11月時点で当初計画していたものから、“計画比の7倍の売れ行き”を記録している。もはや収納ではなくて“携帯してもらえるまで小さくした”というのが大きな特徴」
また西の【前頭】には、▼【串カツ田中「無限ニンニクホルモン串」】。1本税込55円という安さとパンチのある味で1300万本の売り上げ。12月で販売終了となるが、ヒット商品番付入りを記念して24日~年末まで「1本39円」(税込42円)で提供される。
『串カツ田中 有楽町店』澤田裕輝店長:
「非常に多くの反響をいただいて嬉しい。4人で来て200本食べた客もいる。無限です(笑)」
2025年の傾向は「Real・Retro・Reiwa」
番付の選定に携わった『日本経済新聞社』の中村さんが考える「2025年のキーワード」は、“3つのR”だ。
【Real】並んで並んで…タイパは捨てます
【Retro】懐かしき「平成」をかみ締めて
【Reiwa】新しいノーマルに対応
『日本経済新聞社』編集委員 中村直文さん:
「Real(リアル)は、AI中心のデジタル社会の中で『生きる実感』って何だろうかと。スマホはベースとしてあって、スマホだけに依存しない新しい面白いライフスタイル。例えば▼【10万円コンデジ】(西・前頭)。今頃コンパクトデジカメを?と思うが、売れていて抽選制だったりする。スマホで撮ると鮮明すぎるけど、デジカメは少し色が抑えめになっていて、優しい現実っぽい感じがする、エモいと」
他にも、“スマートフォンを超えてリアルな体験”の例として
▼大阪・関西万博▼映画
▼小学館「GOAT」(東・前頭)
▼シール交換(東・前頭)
▼JR東日本「高輪ゲートウェイシティ」(西・前頭)など
【シール交換】は皆川玲奈アナが小学生だった20年前にも流行っていたとのことだが再びブームに。シールは品薄状態で「世の中のお父さんお母さんは奔走している。私もその1人」と話す。
【小学館「GOAT」】の流行に関しては、中村さんも「不思議な現象」だと話す。
『日本経済新聞社』中村直文さん:
「今はもうデジタル全盛の時代なのに、500ページ近い小説がぎっしり詰まった文芸誌が売れた。最近は電車の中で紙の本を読んでる人が増えたと思う。やはりデジタルも大事だけど、活字の方が頭に入りやすいと少し回帰現象も起きてるのかなという気もする」
昭和レトロ⇒平成レトロ
「3つのR」の2つ目、Retro(レトロ)の例としては
▼バンダイ「Tamagotchi Paradise」(西・前頭)
▼オアシス再結成(西・前頭)
▼ホンダ「プレリュード」(東・前頭)
『日本経済新聞社』中村直文さん:
「1990年半ばに発売されたたまごっち。それ自体も人気があるし、たまごっちをベースとしたファッションも。さらに昔流行ったナルミヤという子供服が大人向けも発売されていて話題になったりしている。今は昭和レトロではなく、“平成レトロ”。流行は“30年周期”と言われていたが、最近は20年とか“懐かしさ”というのが早くなっている」
「時代を象徴する」Reiwa
25年のキーワード「「3つのR」のReiwaは、“令和時代を象徴する”もの。
▼日経平均5万円
▼米フレーション
▼イタリアンブレインロット
『日本経済新聞社』中村直文さん:
「昭和100年と言われるが、それをリセットした新しいライフスタイルが生まれてきた時を差して、あえてReiwaと。ゼロ昭和という言い方もできる。いろんな経済体制も終わる中で新しい過渡期を迎えているかなと。“非連続型”の傾向、トレンド」
26年は何が人気?カギは「瞬間」
では、2026年の「ヒットのキーワード」は何なのか。
『日本経済新聞社』中村直文さん:
「加速する社会の中において“瞬間”というのがテーマであるなという印象。例えば出来たて料理。コンビニで出来立てほかほかを食べられるものが増えてくる。食事はささっと済ませて色々やりたいから完全栄養食とかも増えている。あとはAIの実装が進み、翻訳も買い物も“瞬間的”に完結するサービスが当たり前になる。情報が多くて決められなくても、自分に合ったものをサッと選んでくれて楽に購入できるとか」
“瞬間で印象に残る”、そんな意味でも2026年にヒットしそうなものが2つあるという。
▼中国発・ドクロをモチーフにしたミステリアスなキャラクター「SKULLPANDA(スカルパンダ)」
▼2027年国際園芸博覧会(横浜)のマスコットキャラクター「トゥンクトゥンク」
『日本経済新聞社』中村直文さん:
「スカルパンダはキモカワ。ちょっと不気味というか、なんか頭から離れない。イタリアンブレインロットもそうだけど、何か印象付ける感じ。トゥンクトゥンクはミャクミャクとも通じる少し不思議な感じで、若い人からはわりと支持を得ている」
また、26年は改めて「日本のコンテンツ」が話題になりそうとのこと。
『日本経済新聞社』中村直文さん:
「日本のJ-POP、アニメ系がやはり多い印象。昔は“異質”というと少し後ろ向きだったと思うが、今は『そこがいいんだ』みたいな。インバウンドもあって、それが逆に日本らしいと。なので最近、東宝なんかも海外に積極的展開していこうという感じになっている」
(BS-TBS『Bizスクエア』 2025年12月20日放送より)