「反転攻勢」なるか? AI総合ランキング9位の日本 初の基本計画を閣議決定 ”勝ち筋”は「フィジカルAI」と位置づけ 匠の技と良質データで巻き返せるか?【サンデーモーニング】

アメリカ、中国が日本の先を行くAI分野。そのAIの開発について、政府が初めて基本計画を閣議決定し、「反転攻勢する」と明記しました。どのように反転攻勢するのか、取材しました。
【画像で見る】なんでもこなす“AI俳優”まで…AI開発の最前線
AI分野で先行する米中…日本の“勝ち筋”「フィジカルAI」とは
笑顔が印象的なティリー・ノーウッドさん。SFにアクション、ホームドラマに歴史ものまでなんでも演じます。
ティリー・ノーウッドさん
「こんにちは、ティリー・ノーウッドです。世界で初めてのAI俳優です。あなたに会えてうしいです」
実在するヒトではなく、AIがつくったバーチャル上の俳優です。ロンドンの映像プロダクションが生み出しました。
パーティクル6 エリーネ・フェルデン代表
「例えば予算が2~3割足りない場合、シーンを削除して制作を進めますが、AIを使えば妥協する必要がなくなると考えています」
AI俳優の作成に使われたのは「生成AI」、文章や動画などデジタル世界のコンテンツを生成するAIです。現在、アメリカのChatGPTとGeminiが世界で億単位のユーザーを獲得し、日本は競争の舞台に立てていません。
スタンフォード大学がまとめたAIの研究・投資・人材などを評価した国別ランキングでも、日本は9位どまり。
こうした中、政府は...
高市早苗 総理大臣(19日)
「AIは産業競争力や安全保障に直結し、我が国の国力を左右します。いまこそ官民連携で反転攻勢をかけるときです」
23日、国産AIの開発などを目指す初の基本計画を閣議決定し、「反転攻勢」をかけると意気込んでいます。計画のなかで「日本の勝ち筋」と位置づけたのはロボットなどにAIを搭載した「フィジカルAI」といわれる分野。
フィジカルAIは、デジタル空間で活用される生成AIとは対照的に、活動の場は現実空間となります。
アメリカの企業が開発したヒト型ロボットは、障害物があっても自在に走るだけでなく、宙返りまでこなします。
中国も高い技術力を見せていて、アクション俳優さながらの動きです。
米中がヒト型ロボットでも先行するなか、日本はフィジカルAIの中でも産業用ロボットで勝機を見い出そうとしています。
自ら判断してテーブル拭きも 実用性で勝負する日本企業
産業用ロボット大手の安川電機。運動能力の高さで目を引く米中のロボットと違い、実用性の高さを目指しています。
安川電機 AIロボティクス統括部長 久保田由美恵氏
「(当社のロボットは)非常に地味な作業をしているかと思います。本当にリアルな現場で必要な作業はこういうことだよね」
安川電機のヒト型ロボット。指示されたのは「会議資料の準備」です。
すると、直接指示されていないペットボトルを掴み、ゴミ箱へ。さらに、自ら判断してテーブルまで拭き始めました。
安川電機 AIロボティクス統括部長 久保田由美恵氏
「テーブルの準備に必要な作業を全てできるようになっていく。今まで人にしかできなかったような作業が、自分で考えてできるようになっていく」
「匠の技と良質なデータをAIに継承」 巻き返し狙う
AIを使って、ロボットを制御するソフトを開発しているチトセロボティクス。
業界で技術革新と評価されたのが、カメラの映像を解析したソフトがロボットアームに指示を出して針の穴に糸を通す技術です。
チトセロボティクス 西田亮介代表
「『もうちょい前に出て』とか、形が変わったから『もう少し下に降りて』とか、この『ちょっと』や『少し』という相対的な表現を、ロボットに与えることができるというのがこのクルーボ(ソフト)の強み」
対象物が動いていても対応できます。
チトセロボティクス 西田亮介代表
「こちらのカメラで認識をして、クニャクニャと曲がったケーブルに対しても、自動的に認識をして動きを変えるというプログラムで動いています」
チトセロボティクス 西田亮介代表
「(Q.ワイヤーの形が変わってもそれに沿って動く?)もちろんです。動きが変わって高くなったら動いてついていきますので」
ロボットが自律的に動くことで、これまでヒトがやってきた複雑な配線作業なども任せられるようになりました。西田さんはものづくりで培ってきた匠の技と、その良質なデータをAIに継承させることが日本の勝ち筋だと考えています。
チトセロボティクス 西田亮介代表
「ロボットでモノを作るとなった時に、0.02ミリ=20マイクロメートルの制御精度を持っているのはわが国だけ。産業現場で本当に使えるフィジカルAIをつくれるのは、われわれ日本の企業だと」
AI分野で日本は巻き返せるのでしょうか。