「新型コロナへの危機感」低下に警鐘…ワクチン接種率減で高まる重症化リスク、いま注目される“早期治療”の重要性とは?

2026-01-09 07:10

2025年、私たちの生活において新型コロナウイルスへの「慣れ」が進む一方で、医療現場からは新たな懸念の声が上がっています。ヒューマン・データ・ラボラトリ株式会社が実施した調査によると、昨年10月から開始されている2025年度「新型コロナワクチン定期接種」の認知率はわずか29.5%。前年度の約半数にまで落ち込んでいることが判明しました。この「認知率の低下」が意味するもの、それは「接種控え」による重症化リスクの再燃です。

危機感の薄れが招く「診断遅れ」と変わらぬ脅威

本格的な冬の流行期を迎え、発熱外来を訪れる患者数は増加傾向にあります。しかし、「KARADA内科クリニック 五反田院」の佐藤昭裕院長は、昨年とは異なる「空気感」を感じているといいます。

「当クリニックでも新型コロナの患者数は増え始めていますが、昨年ほど多くはないように感じます。これはウイルスが減ったというよりも、新型コロナへの危機意識が薄れ、『いつもの風邪だろう』と判断して受診しない人が増えている可能性が高いのです」。

さらに今シーズンはインフルエンザの流行が早く、感染が急拡大しています。医療機関側もインフルエンザへの対処に追われ、結果として新型コロナの診断に至らないケースも想定されます。

しかし、数字はウイルスの脅威が去っていないことを残酷なまでに示しています。厚生労働省の人口動態統計によると、2024年の新型コロナによる死亡数は3万5865人。死因順位は前年から引き続き第8位となっており、これは同年のインフルエンザによる死亡数(2855人)の約12倍にあたります。

高齢者や基礎疾患を持つ人々にとって、新型コロナは依然として命に関わる病です。ワクチンの接種率低下が懸念される今だからこそ、万が一感染した場合の「早期治療」、特に「抗ウイルス薬」の活用が命綱となります。

感染症専門医である佐藤昭裕先生に、今知っておくべき治療の最前線について伺いました。

専門医に聞く「新型コロナ治療」の最前線――なぜ今、早期治療なのか

回答:佐藤昭裕先生(KARADA内科クリニック 五反田院 院長/日本感染症学会専門医)

Q:早期治療のメリットを教えてください。重症化以外に、後遺症リスクも回避できるのでしょうか?

佐藤先生:
最大のメリットは、やはり「重症化の阻止」です。新型コロナは発症早期にウイルスが体内で爆発的に増殖します。この時期に適切な治療を行うことで、ウイルス量を抑え、肺炎などの重篤な症状への進行を防ぐ可能性が高まります。また、重症化予防だけでなく「後遺症(Long COVID)」のリスク低減も期待されています。新型コロナに罹患した人の約10人に1人は後遺症が出るといわれていますが、ワクチン接種や早期の抗ウイルス薬治療によって、後遺症の発現リスクを下げられるという研究データも報告されています。高齢者はもちろん、後遺症を抑えるという意味では、若い世代にとっても早期治療は大きな意味を持ちます。

Q:抗ウイルス薬の処方が想定される「注意が必要な人」はどのような方でしょうか?

佐藤先生:
以下の項目に当てはまる方は「重症化リスクが高い」とされています。これらの方は、感染がわかったら迷わず早期治療を検討すべきです。


●65歳以上の方
●糖尿病・心臓病・腎臓病などの持病がある方
●免疫を抑える薬を使っている方
●肥満のある方(BMI 30以上など)
●ワクチン接種から時間が経っている方

ご自身やご家族がこれらに該当する場合、単なる風邪薬で様子を見るのではなく、ウイルスの増殖そのものを叩く治療が推奨されます。

Q:抗ウイルス薬は、一般的な風邪薬(対症療法)と比べてどう違うのですか?国内では何種類ありますか?

佐藤先生:
解熱剤や咳止めなどの「対症療法」は、あくまで今ある症状を和らげるもので、ウイルス自体を減らす効果はありません。対して「抗ウイルス薬」は、ウイルスの増殖そのものを阻害する薬です。現在、日本国内で承認・処方されている主な経口抗ウイルス薬には以下の3種類があります。


・パキロビッドパック
・ラゲブリオ
・ゾコーバ

「パキロビッドパック」と「ラゲブリオ」は特に重症化リスクの高い方に用いられ、入院や死亡のリスクを低減させる効果が認められています。「ゾコーバ」や「パキロビッドパック」は、症状を早期に改善させる効果も期待できます。

重要なのはタイミングです。これらの飲み薬は概ね「発症から5日以内」に服用を開始する必要があります。ウイルスが増えきってからでは十分な効果が得られないため、まさに「早期発見・早期治療」が勝負の鍵を握ります。

Q:海外では一般的とされる抗ウイルス薬ですが、日本であまり普及していない理由はなぜでしょうか?

佐藤先生:
一つには「コスト」の問題があります。公費負担が終了し、現在は薬剤費が高額(自己負担額が発生)になっているため、処方を躊躇される患者さんもいらっしゃいます。

もう一つは「認識の甘さ」です。「5類になったから安心」「ただの風邪」という認識が広まり、わざわざ高い薬を飲まなくても…と考える方が増えました。しかし、先述した通り死亡者数は依然として多く、リスクのある方にとっては決して「ただの風邪」ではありません。

Q:リスクが高い方の感染がわかった場合、本人や家族はどう行動すべきですか?

佐藤先生:
発熱や喉の痛み、倦怠感など、少しでも体調がおかしいと感じたら、無理をして動かず、すぐに医療機関を受診してください。受診の際は、医師に「重症化リスク因子(持病や年齢など)」を明確に伝えることが大切です。「自分はリスクが高いので、抗ウイルス薬の適応になりますか?」と相談してみるのも良いでしょう。早期診断ができれば、それだけ早く治療を開始でき、重症化を防げる可能性が高まります。

自治体間で最大1万3600円の差も――浮き彫りになった「地域格差」

医師が懸念する「ワクチン接種控え」の背景には、制度変更による影響も色濃く反映されています。今回の調査で、2025年度の定期接種について「知っている」と答えた人は29.5%。2024年度の60.3%から半減しました。


調査概要:n=2,500、65歳以上の全国男女を対象にオンラインで実施
実施時期:2025年1月10日~12日、2025年9月26日~29日
データ補正:性別・居住地が実際の人口比に近くなるように補正を実施

認知率低下の一因として、今年度から国による助成金制度が終了し、自治体ごとの予算での実施となったことが挙げられます。これにより、自治体によって自己負担額に大きな「地域格差」が生まれています。

人口5万人以上の549自治体を対象に行われた調査によると、定期接種の自己負担額(65歳以上等の対象者)には驚くべき開きがありました。

最も高い自治体:茨城県笠間市(1万3,600円)
最も低い自治体:東京都千代田区・港区など6区(0円・無償)

※1年齢や基礎疾患の有無によって金額が変わる地域は最小値を記載。
※2助成金が示されている地域は、当自治体が示す接種費用15600円の差額を記載。
※3選択するワクチンによって自己負担額が変動する場合は平均値を記載。
※4非課税世帯の方や生活保護を受給されている方の自己負担免除の記載は本調査からが除外。

居住地によって1万円以上の差が出る現状は、経済的な理由による「接種控え」を加速させる恐れがあります。しかし、重症化して入院治療が必要になれば、ワクチンの自己負担額を遥かに上回る医療費や身体的負担がかかることになります。

「正しく恐れ、賢く備える」冬の感染対策を

新型コロナウイルスは決して収束しておらず、免疫を逃れるような変異も続いています。
特に感染への抵抗力が低下しがちな高齢者においては、ワクチンによる予防の壁を築くこと、そして万が一感染した際には、ためらわずに「抗ウイルス薬」による早期治療を選択することが、命を守るための最善策です。

もちろん、薬やワクチンだけに頼るのではなく、基本的な感染対策も忘れてはなりません。
「外出時のマスク着用」「手洗い」「こまめな換気」。そして体調が悪い時は無理をせず休養をとること。これらはインフルエンザを含む全ての冬の感染症に有効です。

重症化予防が期待できる治療薬の選択肢も含め、この冬の過ごし方や対策について、いま一度かかりつけ医に相談してみてはいかがでしょうか。

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