Larryにとっては大先輩 「ネズミ捕り主任」として首相官邸に君臨した白黒猫 英国

2026-01-16 06:00

英国首相官邸では、長年「ネズミ捕り主任」としての猫が飼われてきました。現在はLarryがその任に当たっていますが、かつてこの職に就いて大変有名になった猫がいます。その名はHumphrey。彼の活躍ぶりをご紹介します。

有力者と交流し、人気者になった猫

首相官邸の前を歩くLarry

画像はイメージです

英国首相官邸「ダウニング街10番地」といえば、2011年からここで「ネズミ捕り主任」猫として活躍しているLarryが有名です。マスコミにもよく取り上げられ、各国の首脳らと挨拶をかわす重要な「官邸の顔」にもなっています。

しかしLarryより以前に、この職に就いて有名になった白黒猫Humphreyを忘れてはいけません。1989年10月、当時のマーガレット・サッチャー首相の任期末期に、官邸の隣に位置する内閣府で職員に保護されました。

当時この猫は1歳ほどでした。職員による投票の結果、BBCの人気テレビ番組「Yes, Minister」の登場人物「サー・ハンフリー・アップルビー」にちなんで名付けられ、内閣府の正式な「ネズミ捕り」の称号を与えられました。餌代は省庁の予算から支払われましたが、年間100ポンド(約2万円強)の費用は害虫駆除業者を雇うよりもはるかに安価だったため、サッチャー首相も了承したといいます。

Humphreyは8年の就任期間に有力者をはじめとする多くの人々と交流し、猫らしく威厳に満ちた落ち着いた態度とのんびりした性格で人気を博しました。写真撮影にもまったく動じず、政治家や国家元首、英国王室メンバーにさえほとんど注意を払いませんでした。

ヨルダンのフセイン国王は、警察官が歓迎のレッドカーペットに乗ったHumphreyを連れ出す間、しばらく待たされたこともあったと伝えられています。

この猫は、財務大臣の公邸である10番地と11番地、そして隣接する内閣府の間を自由に行き来していました。

失踪事件を起こしたことも

白黒猫の顔のアップ

画像はイメージです

この人気猫は、いくつかの危機も経験しています。クリントン米大統領が訪ねてきた際、大統領専用キャデラック(重量2トンもある装甲車)に轢かれそうになったことがあるのです。

その後、ジョン・メージャー首相の在任中の1994年、Humphreyは官邸の庭でコマドリの雛を殺害したとして告発され、ちょっとした騒ぎになりました。しかしメージャー首相は「猫が連続殺人犯ではないことはほぼ確実だ」と、断固としてこの猫を擁護したというのです。ちなみに、のちにこの件は新聞社の編集委員が捏造した作り話だとわかりました。

1995年には失踪事件がありました。このときHumphreyは約1.6キロ離れた王立陸軍医科大学までさまよい出て、そこで野良猫と思われて保護され、餌と住処を与えられていたのです。約3ヵ月後、タイムズ紙はHumphreyの推定死亡記事を掲載しました。

その写真を見た大学スタッフは「野良猫でなく、実は首相官邸の猫だった」と気づいてびっくり。さっそく連絡を受けた官邸職員が車で迎えに来ました。Humphreyの帰還は世界的なニュースになり、クリントン米大統領の愛猫Socksからも「祝福のメッセージ」が寄せられたといいます。

さらには旅行代理店に勤める男性に「猫さらい」されたことまであります。1997年、セント・ジェームズ公園をうろついていたところ、その男性は野良猫と勘違いしてランベス地区のタワーマンション7階にある自宅のアパートに連れて帰ってしまったのです。しかし獣医で健康診断を受けたときにHumphreyだとわかり、内閣府に返却されました。

18歳の長寿を全うし、虹の橋を渡る

堤防でくつろぐ白黒猫

画像はイメージです

1992年の内閣府の記録に次の記述があります。

「Humphreyは少量ずつ頻繁に食事をする傾向がある。それは、いつでも好きなときに食べ物が手に入ることを知っているからに違いない。彼は仕事中毒で、ほとんどすべての時間をオフィスで過ごし、社交もパーティーにもあまり行かず、性犯罪や薬物スキャンダルに巻き込まれたこともない」

1997年5月に労働党政権が誕生し、数日のうちにHumphreyが追い出されるのではという観測が広がりました。ブレア首相夫人は猫アレルギーがあり、猫は不衛生だと考えていたからです。ところがすぐに猛烈な抗議が起こり、圧力に屈した首相夫人は、ハンフリーを抱いている写真を新聞に掲載せざるを得ませんでした。

でもそれからわずか6ヵ月後、Humphreyは首相官邸を去りました。マスコミは「政治的陰謀か」と大騒ぎをしましたが、真相は「健康上の理由で引退した」のでした。以前から腎臓を患っており、「多忙な環境から退き、郊外でより楽な生活を送る方がよい」という医師のアドバイスに従ったためです。

新しい飼い主の名前や住所は明らかにされませんでしたが、Humphreyは引退生活を満喫し、幸せそうで体重も増えたといいます。

そして2006年3月20日、この猫は眠っている間に亡くなりました。18歳という長寿を全うしたのです。

「Humphreyはよくドアマン用の椅子に丸まって座り、官邸を仕事で訪れる人々にとって非常に心強い存在でした。『引退』したときはみんなが悲しみました。多くの人に愛され、快適な老後を過ごしました。訃報を知り、わたしたちはみんな深い悲しみに暮れています。ダウニング街のあの猫を、深い愛情を込めて偲びます」(保守党の機関紙に掲載された訃報記事より)

出典:Downing Street Cats

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