あなたは見ました?読みました?『国宝』に惹かれ、巻き込まれる~TBSの専門家が分析「データからみえる今日の世相」~【調査情報デジタル】

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2026-01-31 08:00
あなたは見ました?読みました?『国宝』に惹かれ、巻き込まれる~TBSの専門家が分析「データからみえる今日の世相」~【調査情報デジタル】

年も改まって2026年。年始早々、日本海側では記録的な豪雪が続き、高市総理がいきなり衆議院を解散と、予期せぬことがドーンと起こって巻き込まれ、事態がドンドン進んでしまうような印象。

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そうしたなかで昨年の話をするのも気がひけますが、今回のテーマは、小説と映画の大ヒットで社会現象化した、あの『国宝』です。「任侠の一門に生まれながらも、歌舞伎役者の家に引き取られ、芸の道に人生を捧げた主人公・喜久雄の50年を描いた壮大な一代記」(映画『国宝』公式サイト)が、多くの人を魅了し、動かし、巻き込みました。

『国宝』の発端は、2017年元日開始の新聞小説でした。18年5月に完結して同年9月に上下巻の単行本が出ると、作者・吉田修一さんが18年度芸術選奨文部科学大臣賞、作品が第14回中央公論文芸賞を受賞。21年には文庫化。

映画のほうは、ウィキペディアによると、昨年(25年)6月に公開以降、累積の興行収入が8月に100億円、9月に150億円を超え、11月に173億7千万円を超えて実写邦画歴代No.1を記録。

これを受けて小説も、10月には単行本、文庫、電子版の上下巻の累計発行部数が200万部超え。「そのうち少なくとも164万部は、6月の映画公開後の4か月あまりの間に次々と版を重ね」たもの(朝日新聞、2025年11月1日)。

ご多分に漏れず、筆者も昨年映画を鑑賞。175分の上映時間が気にならないほど没頭しました。一緒に見た妻は、年末に文庫版の小説を買って冬休みに一気読み。夫婦で売上に貢献した次第です。

こうした映画の興行収入や小説の発行部数もデータですが、人々の行動や趣味嗜好についての調査データであれこれ考えるのが、このコラム。『国宝』のことも調べた昨年10月実施のTBS総合嗜好調査(注1)データがようやく集計できたので、早速お披露目したいと思います。

小説も映画も『国宝』が世間を席巻

毎年10月に行うTBS総合嗜好調査では、「最近話題になった作品で読んだもの・読みたいもの」や「見て面白かった・ぜひ見たいと思う映画」について、示された選択肢からいくつでも選ぶ質問をしています(注2)。昨年の東京地区での調査結果を集計して、それぞれのベスト10を並べてみると、次の棒グラフのようになりました(注3)。

これを見ると『国宝』は、小説では断トツのトップ、邦画ではアニメ「劇場版『鬼滅の刃』無限城編第一章猗窩座再来」(25年7月18日公開)に次ぐ2位。実に3人に1人が小説を「読んだ・読みたい」、4人に1人が映画を「見て面白かった・ぜひ見たい」と回答した計算です。

実際に小説を読んだり映画を見た人だけでなく、「読みたい」「見たい」という希望者も含むTBS総合嗜好調査の結果は、いわば潜在顧客も見込んだ、それぞれの作品のポテンシャルを表したものといえるかも。

毎年世に出る数多の書籍や映画を、アンケート調査の限られた紙面で網羅するのは無理。そのため、日頃アンテナを張って質問項目を検討している担当者が「これは調査で取り上げたい」と思う程度には話題になる必要があり、選択肢に挙がるのはそれなりに露出しているものばかり。そのベスト10でも多くが一ケタ台の選択率のところに、ドーンとそびえ立っているのが『国宝』であり、その特異さがよくわかります。

では、小説や映画の『国宝』に接したり関心を持っているのは、どんな人なのか。それをデータで少し掘り下げてみます。

なお、この先では、映画『国宝』を「見て面白かった・ぜひ見たい」人を「映画◯」、小説『国宝』を「読んだ・読みたい」人を「小説◯」、そうでない人を各々「映画✕」「小説✕」と書くことにします。

映画『国宝』に魅せられる女性

映画と小説の◯✕を組み合わせると、4つのパターンが出来ます。

回答者全体に占める各パターンの割合は、「映画◯・小説◯」15%、「映画◯・小説✕」9%、「映画✕・小説◯」17%、「映画✕・小説✕」59%。4割くらいの人は、何らかの形で『国宝』に関心がある様子。

そこで、各パターンで性年代の内訳を調べると、次の帯グラフのようになりました。

男女が半々の全体と比べて、明らかに「映画◯・小説◯」と「映画◯・小説✕」で女性の比率が高く、前者では7割、後者でも6割が女性。

一方、「映画✕・小説◯」と「映画✕・小説✕」の性年代構成は全体並みで、強いていえば後者はやや男性が多めといったところ。

映画では、いずれも主役級の若手実力派俳優と重鎮俳優がふんだんに登場して真に迫った演技を見せ、種田陽平美術監督が「“本物らしく=オーセンティックに”見せることにこだわっている」(劇場用パンフレット)舞台で繰り広げられる絢爛豪華な芝居や踊りが映し出されます。

「映画◯」に女性が多い理由はハッキリしませんが、映画ならではのビジュアルの美しさ、素晴らしさに多くの女性が惹かれたのかも。

映画好きが映画『国宝』に関心、でも小説は……

大ヒットとなった映画と小説の『国宝』。それに興味を持ったり接したりした人は、ふだんから映画や読書をたしなんでいるのか。それとも、『国宝』が特別に目を引いたのか。

そのあたりをデータで示すべく、パターン別に「好きな余暇の過ごし方」を集計。昨年実施のTBS総合嗜好調査では、70個の選択肢からあてはまるものをいくつでも選んでもらいますが、各パターンのベスト5(同率5位が2つある「映画◯・小説✕」はベスト6)は次の棒グラフの通りです。

これを見ると、「映画◯・小説◯」の半分や「映画◯・小説✕」の4割は「映画をみに行く」のが好きな人で、元々劇場で映画を見る趣味の持ち主が映画『国宝』にも関心を示した模様。

「好きな余暇の過ごし方」には「読書」という選択肢もありますが、回答者全体の選択率は18%で、どのパターンでもベスト5には届かず。

各々の選択率は「映画◯・小説◯」24%、「映画◯・小説✕」23%、「映画✕・小説◯」16%、「映画✕・小説✕」16%で、必ずしも読書好きだから小説『国宝』に関心がある、ということでもなさそう。

まとめると、映画館に出かけるのを好む人が映画『国宝』への関心を支えている面が大きそうなのに対し、小説『国宝』への関心は読書好きを超えて拡がっている感じ、といったところでしょうか。

どうせ作り物に巻き込まれるなら

この集計をさらに眺めると、映画か小説で1つでも◯があるパターンには、「旅行」や「家族と外で食事をする」といった、家の外に出る余暇の過ごし方が含まれるのに対し、「映画✕・小説✕」にはそれがありません。

一方、「映画✕・小説✕」では、2~4位にネットやスマホ関連の行動がランクイン。他の3つのパターンでもそれらがひとつずつ入っているものの、全部入りなのは「映画✕・小説✕」の特徴的です。

予期せぬことがドーンと起こって巻き込まれてしまいがちな昨今。『国宝』現象に巻き込まれる人も多かったですが、そうではない「映画✕・小説✕」の人たちでは、『国宝』の代わりにネットやスマホで見聞きするものに巻き込まれる人が多いかなあ、などとふと考えました。

映画や小説は、どんなによく出来ていても作り物だと分かっていて、分かっているのに没頭し感動してしまうところに妙があります。

しかし、ネットやスマホで見聞きするものには、作り物かどうか分かりにくいものもあり、真実のつもりでフェイクに没頭し感動してしまうこともありそうな話。真に受けている分、余計にタチが悪いかも。

どうせ作り物に巻き込まれるなら、一級のエンタテインメントのほうがはるかに好ましいと思うのは、筆者だけでしょうか。

注1:TBS総合嗜好調査は、衣食住から趣味レジャー、人物・企業から、ものの考え方や行動まで、ありとあらゆる領域の「好きなもの」を調べる質問紙調査です。TBSテレビが、東京地区(1975年以降)と阪神地区(1979年以降)で毎年10月に実施し、対象者年齢は、1975年が18~59歳、76~2004年が13~59歳、05~13年が13~69歳、14年以降は13~74歳となっています。

注2:「最近話題になった作品で読んだもの・読みたいもの」では、調査前の1年間に話題になった本を選択肢(25年調査では30個)にしており、刊行年は必ずしも直近1年間ではありません。また、「見て面白かった・ぜひ見たいと思う映画」は邦画と洋画を分け、それぞれ昔からのシリーズ作や名画と、調査前の1年間に公開された新作を選択肢にしています。25年調査では、40個ある邦画の選択肢のうち、23個が新作でした。

注3:「見て面白かった・ぜひ見たいと思う邦画」には、例えば選択率24%の「踊る大捜査線シリーズ」など、人気の高い旧作もありますが、ここでは特に新作23個について集計しました。

引用・参考文献
● 映画『国宝』公式サイト
●「国宝 (小説)」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』
● 種田陽平(2025)美術監督インタビュー 『国宝』劇場用パンフレット 東宝株式会社ライツ事業部 p.18.

<執筆者略歴>
江利川 滋(えりかわ・しげる)
1968年生。1996年TBS入社。
視聴率データ分析や生活者調査に長く従事。テレビ営業も経験しつつ、現在は法務・コンプライアンス方面を主務に、マーケティング&データ戦略局も兼任。

【調査情報デジタル】
1958年創刊のTBSの情報誌「調査情報」を引き継いだデジタル版のWebマガジン(TBSメディア総研発行)。テレビ、メディア等に関する多彩な論考と情報を掲載。原則、毎週土曜日午前中に2本程度の記事を公開・配信している。

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