半導体の未来を創る拠点 茨城県が仕掛ける「次世代イノベーション」の全貌

2026-02-05 10:45

世界の半導体市場は100兆円を超え、2030年に150兆円規模へ到達すると予測されるが、急激な世界情勢の変化に伴い、かつてないほど複雑化している。
 去る1月22日(木)に開催された茨城県主催のオンラインセミナー「半導体の未来を創る拠点 ―茨城から始まる次世代イノベーション」から、半導体の未来を読み解きたい。

はじめに半導体市場動向における第一人者として知られるグロスバーグ合同会社代表の大山聡氏が、表面的な成長の数字の裏に隠された「劇的な構造変化」を鋭く指摘した。
なぜ今、半導体市場が大きく動いているのか。大山氏の緻密な分析から紐解く。

AIがもたらした「シリコンサイクルの崩壊」と「二つの市場の突出」

大山氏はまず、これまでの半導体業界の常識であった「シリコンサイクル(4年周期の好不況)」が、AIがけん引役となり変質している点に警鐘を鳴らした。
現在、市場全体の成長を支えているのは、演算を担う「ロジック」と記憶を担う「メモリ」の2分野に集約されるという。

「ロジック」市場でのNVIDIAの独走

情報処理機器の分野においてはAIサーバの進化が凄まじい。サーバ全体の出荷台数で見ればわずか15〜20%程度に過ぎないにもかかわらず、金額ベースでは市場の72%以上を占める「超高付加価値化」が起きている。

しかもAIサーバの頭脳であるGPUの9割がNVIDIA(エヌヴィディア)1社によるもので、圧倒的な強さを誇る。ハードウェアとしてのGPUだけでなく、世界中のAIエンジニアが同社の「CUDA(クーダ)」という開発環境を利用し「デファクトスタンダード(事実上の業界標準)」となっていることが、NVIDIAのロジック半導体市場における支配力の源泉となっているという。

「メモリ」市場を牽引する中国の「実需との乖離」

もう一つの牽引役「メモリ」について、大山氏は地政学的な視点から中国市場の特異な動きを詳述した。

現在、世界で出荷される半導体製造装置の約40%以上が中国向けだが、実際に製造されている中国製半導体のシェアは世界市場の10%に満たないという矛盾が生じている。

これは米中摩擦での半導体輸出規制を背景に、中国側が将来の生産を見越し、実需と関係なく「先行投資」や「補助金による装置買い」という動きを強めているためである。工場には装置が並んでいるものの、生産をしていない「埃を被った装置」が大量に存在する可能性を示唆した。この統計上の「装置と実需の乖離」は、将来的に中国製半導体が安価に世界へ流れ出すリスクを含んでいる事を表している。

日本の強み「中工程」をリードする茨城県のポテンシャル

こうした激動の半導体関連市場において、大山氏が日本の勝機として挙げたのが日本が圧倒的な強さを誇る「中工程」だ。
中工程は、従来の前工程の精密さと、後工程の技術が融合した領域であり、次世代AIチップの性能を左右する最大の主戦場となっている。

この分野で茨城県が圧倒的な優位性を持っている。
ルネサスエレクトロニクス那珂工場をはじめ、日立ハイテク、レゾナック、JX金属など前工程・後工程それぞれの企業が茨城県に拠点を構えていることで、中工程に不可欠なイノベーションを起こせる環境が整っているという。
さらにつくば市には中工程で世界をリードする台湾TSMCのR&D拠点「3DIC研究開発センター」が存在する。世界最大の半導体製造企業が茨城県を選んだことこそが、茨城県に「中工程」をリードするポテンシャルがあることを示しているだろう。

大山氏の分析は、単なる市場予測に留まらない。AIサーバのNVIDIAの寡占状態、そして中国の過剰投資。これらの事象が指し示すのは、「サーバ」や「メモリ」では、次世代の競争には勝てないという事実だ。茨城県が提供する「中工程」の研究環境とインフラは、大山氏が指摘した市場の変曲点において、企業が生き残り、勝利するための武器となるだろう。

茨城県が「立地」と「優遇制度」で成長産業を後押し


大山氏の講演を受け、茨城県宅地整備販売課の大窪浩一郎氏が、茨城県の立地環境や優遇制度とあわせて、つくば最先端リサーチパークに関して説明した。

まず、企業の拠点として重視されるのが立地環境。

茨城県は都心からの良好なアクセスや、震災などの災害リスクの低さ、筑波大学や茨城大学をはじめとする工学系教育機関の充実度などで、県外企業の立地件数8年連続全国1位をほこり、半導体企業の集積につながっている。
県の代表的な事業用地として、つくば「最先端リサーチパーク」には、科学技術の集積や交通アクセス、豊富な人材の優位性があるほか、「常陸那珂工業団地」には、広大な敷地に加え特別高圧電力(準備中)や豊富な工業用水など、半導体関連企業などに必要なインフラが整備されている。

また、企業の進出を後押しする茨城県の姿勢はその優遇制度にも表れている。

茨城県では、新たな設備投資に対して、法人事業税や不動産取得税の課税免除などの様々な優遇制度を展開。特筆すべきは、グローバル企業のフラッグシップ拠点を整備するために新設された全国トップレベルの上限100億円という補助制度だ。

これは、単なる資金援助にとどまらず、世界トップシェアを持つ企業を呼び込むことで、県内に強固なサプライチェーンと高度な雇用を創出するという茨城県の強い覚悟の現れでもある。

茨城県から日本の半導体の未来がはじまる

大山氏が語った「AIによる市場の変曲点」と、茨城県が提供する「世界水準の研究・製造環境」は、驚くほどの合致を見せている。
茨城県は今、単なる工業地帯ではなく、世界の半導体戦略の未来を創り出す、日本最大のイノベーション・プラットフォームへと進化を遂げようとしているのだ。今後の展開を注視したい。

本セミナーのアーカイブは下記リンクから視聴可
https://www.youtube.com/live/BDxq_VMBvxg

【取材協力/問い合わせ先】
茨城県立地推進部宅地整備販売課(電話/029-301-2798)

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