増え続ける防衛費…安保政策「大転換」の是非 復興税を防衛の税に転用も 被災者の思いは【報道特集】

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2026-02-07 21:10
増え続ける防衛費…安保政策「大転換」の是非 復興税を防衛の税に転用も 被災者の思いは【報道特集】

高市総理が「国論を二分する」とした安全保障政策の大転換と、4月から始まる「防衛増税」。来年からは震災復興のための税からも転用される。選挙戦で議論はどれほど深まったのだろうか。

【写真で見る】「何のために生まれてきたのか」仮設住宅の退去を迫られる72歳の住民

「大転換」目指す高市総理 深まらない“安保”議論

公示前日、1月26日の党首討論。高市総理の第一声はこれだった。

高市総理
「『責任ある積極財政』への大転換を訴えさせていただきます」

そして、もう一つ強調した大転換がある。

高市総理
「安全保障政策の大転換。防衛3文書、戦略3文書、これを今年のうちに見直す。アメリカの国家防衛戦略、これに引っ付いていくものじゃございません。日本は日本独自で、私たちの考え方で、必要な防衛力をしっかりと整備する」

高市氏が2026年中に見直すと述べたのは、防衛費の倍増や敵基地攻撃能力の保有を明記した「安保関連3文書」を前倒しで改定することを指す。非核三原則の見直しも焦点の一つだ。

中道改革連合 野田佳彦 共同代表
「自国防衛のための自衛権行使というのは、個別的自衛権で考えるのか、集団的自衛権で考えるのか。どちらにしたってね、憲法のいわゆる専守防衛の限りにおいては、これは合憲であるということ」

立憲民主党が掲げてきた「違憲部分を廃止」とする安保関連法に対する基本政策は、公明党との合流で、事実上あらためられた。

3文書改定に一定の理解を示していることもあり、高市氏が大転換を目指す安保政策についての議論は深まらないままだ。

「加害基地にならないことを願う」“巨大防衛施設”計画に東洋一の軍港だった呉市の住民は

1兆円以上をかけて巨大基地化が進む、鹿児島県の馬毛島。

南西諸島では、台湾有事を念頭にミサイル基地の建設など、防衛力が強化されている。

人口約19万人の広島県呉市。「海上自衛隊呉基地」に隣接する製鉄所跡地。今、ここでも巨大な防衛施設が作られようとしている。

防衛省は、地域の防災拠点などの役割も兼ねる「複合防衛拠点」だとしている。

呉基地では2025年、陸・海・空の自衛隊からなる共同輸送部隊が編成され、新型の潜水艦なども配備された。

こうした動きに、呉市の住民からは、反対の声も上がっている。

呉の町で生まれ育った西岡由紀夫さん(70)と森芳郎さん(83)。建設に反対する理由は…

森芳郎さん(83)
「火薬庫であるとか、あと無人機の製造をするとか」

防衛省が2025年3月、新たな巨大防衛施設の建設計画の内容を明らかにした。中には継戦能力向上のための火薬庫や、ドローンの製造施設が含まれている。

村瀬健介キャスター
「防衛省の説明は足りている?」

西岡由紀夫さん(70)
「全く足りていない。一応資料が1枚出て、1、2行説明がついてるものが出てる。具体的にどうなっていくのか、まだ全然分からない」

戦時中、東洋一の軍港だった呉は、度々アメリカ軍による空襲の標的となり、市民約2000人が犠牲になった歴史がある。

森芳郎さん(83)
「呉が全国的にも狙われるような施設が沢山できてきている。空襲で同じように焼け野原にされるのでは」

西岡由紀夫さん(70)
「今も軍事拠点には間違いはないが、これまでのような専守防衛に限っていくような形ではなく、加害の基地にならないことを願っています」

脱“シャッター商店街”に期待も… 専門家は「前線になりうる」と指摘

一方で、製鉄所の閉鎖を受け、“シャッター商店街”と化すなど、疲弊する地元経済の起爆剤として期待する声もある。

呉市民
「防衛関係のちゃんとした所が、整備した方が人も集まってくる」
「色んな設備が来たら、人数が第1に増える。10人でも20人でも、100人でも1000人でも、増えただけ活気が戻る」

日本の防衛政策などをまとめた「防衛白書」。

呉の新しい防衛施設の位置づけとして、有事の際、南西諸島に部隊や装備品などを、より迅速に輸送するためとしている。

安全保障の専門家は、有事の際に標的となるリスクが高まると指摘する。

広島市立大学 広島平和研究所 梅原季哉 教授
「米軍の手足となり戦うときのロジを支える、そういう拠点としての期待が当然かけられる」

村瀬健介キャスター
「やはりそれは軍事標的?」

広島市立大学 広島平和研究所 梅原季哉 教授
「後方支援と言うが、そこも前線となりうる」

「財源は無限ではない」 増え続ける「防衛費」

10年以上連続で増え続けている防衛費。

高市総理(所信表明演説・2025年10月)
「対GDP比2%水準について、補正予算と合わせて、今年度中に前倒しして措置を講じます」

防衛費をGDP比2%、約11兆円まで引き上げる目標を前倒しした。

防衛費が増え続けた場合、「財源は無限ではない」と慶応大学の土居丈朗教授は指摘する。

日下部正樹キャスター
「防衛費について、安定的な恒久財源を確保することは可能だと思いますか?」

慶応大学(財政学)土居丈朗 教授
「増税を国民が歓迎するなら別だが、なかなかそういうご時世でもない。もっと(防衛費を)増やすということになると、今までの財源は、もうすでに(GDP比)2%を達成するための財源。その上積みをしないといけない。打ち出の小槌のようにどんどんお金が出てくるわけではない」

1月、アメリカのトランプ政権は日本を含む全ての同盟国に対し、GDP比5%の防衛支出を求める方針を公表した。

現在の2倍を超える巨額の防衛費が必要となる。

慶応大学(財政学)土居丈朗 教授
「トランプ大統領にとっては、よく日本は防衛装備品をアメリカ企業から買ってくれたと、喜んでくれたということだが、元々は日本の納税者のお金。我々のお金がアメリカにどんどん貢がれてしまう。防衛費が増えれば増えるほど、どんどん日本からお金が流出することだけだと、何のための防衛力整備なのか」

震災復興税の1%を防衛に転用 衆院選では“減税”争点も防衛増税へ…

選挙後、まもなく防衛増税が始まる。土居教授は国民への説明が十分ではないと指摘する。

慶応大学(財政学)土居丈朗 教授
「消費税減税が衆議院選挙で問われている中で、防衛財源のための増税を、どれぐらい多くの人が納得ずくで賛成するか。なかなか厳しいものがあると思う。国の予算の中で社会保障に次いで2番目に多いのが防衛費だということを、よく見ていただく必要がある。多くの国民も認識していないのではないか」

防衛増税は4月から、まず法人税とたばこ税で始まる。さらに、与党は税制改正大綱で…

税制改正大綱
「復興特別所得税の税率を1.1%(現行:2.1%)に引き下げる」

東日本大震災復興のために徴収されている税金を引き下げるとしているが、実はそのかわりに防衛のための税に転用する。

2037年まで、震災復興として所得税に2.1%が上乗せされることになっていたが、2027年の1月から1%分は当分の間、防衛目的に充てられることになった。期限を切らない形で違う目的に転用するのだ。

さらに、残された1.1%の復興税も2037年までだった期限を10年延長し、2047年までとした。トータルでは増税となる。

「町作りはこれから…」復興税の転用に被災地からは反対の声

この税金の転用を、被災地はどのように受け止めているのか。

福島県いわき市にある復興公営住宅には、15年前の東日本大震災による原発事故で故郷を追われた双葉町の住民が、80人あまり暮らしている。

1月31日、町民有志が企画した「復興干支祭り」が開かれ、会場には賑やかな歌声が響いた。

30年近く双葉町で美容室を営んできた松本節子さん(75)。原発事故のあと、仮設住宅などで避難生活を続け、8年前に単身でこの復興住宅に移り住んだ。

復興住宅は収入に応じて家賃が決められていて、国民年金暮らしの松本さんは、ひと月1万7900円。そのうち8200円の家賃補助を受けている。だが県は、3月末でこの事業の終了を決定。

全町避難を余儀なくされた双葉町は、町の一部の避難指示が解除され、2月1日現在193人の住民が暮らす。今も85%が帰還困難区域だ。

支援が打ち切られる中、松本さんは、復興のための税金が防衛費に充てられることについては反対の意見だ。

双葉町民 松本節子さん(75)
「まだ道半ば、始まったばかりです、復興は。これからでしょ、町作りするのは。この(復興の)お金じゃなくて、他のところから持っていけばいいと思う。防衛費は」

復興住宅の前自治会長はこう話す。

復興公営住宅 前自治会長 國分信一さん(78)
「3年経っても学校もない。(避難指示が)解除になったら、設備が全部揃ってるのかと思ったら揃っていない。防衛予算を増やさないといけないのはわかっている。お金を国がある程度、町に配分しないと町が立ち行かなくなる」

「何のために生まれてきたのか」仮設住宅の退去を迫られる72歳の住民

原発事故のあと、福島県内には応急仮設住宅があちこちに建てられた。

現在、そのほとんどが取り壊されているが、まだ一部が残されている。

今も、3世帯が国の支援を受けながら暮らしている仮設住宅。その中のひとり、舘林敏正さん(72)。

双葉町で生まれ育った舘林さんは、原発事故後、夫婦で親戚の家に身を寄せ、半年が過ぎた頃、この仮設住宅に入った。

だが避難してまもなく、妻が難病を発症。そこから長い介護生活が始まった。

双葉町民 舘林敏正さん(72)
「家内も半分寝たきりになって、車椅子で。さくらんぼ(の木が)1本あるんですけど、美味しいって、食べて喜んでたんですよ」

そんな妻は2025年1月、突然亡くなった。

長引く避難生活で舘林さん自身もうつ病を患い、今も投薬治療を続けている。そんな中、さらなる追い打ちが。

3月末で、この仮設住宅から退去しなければならなくなったのだ。

アパートなどの借り上げ住宅を含め、今も応急仮設住宅で暮らす双葉町の住民は271人にのぼる(1月1日現在 ※みなし仮設住宅含む)。

長年暮らした仮設住宅の前には、妻が好きだった草花の鉢が置かれたまま。

ここを出なければいけないことはわかっているが、未だに気持ちの整理がつかないという。

双葉町民 舘林敏正さん(72)
「どこにも行くところがない。気力が薄れちゃう。いくら頑張っても頑張っても、結果が出ない」

今の政治に対する思いを聞くと…

双葉町民 舘林敏正さん(72)
「私どもの小さい声はなかなか届かない。何のために生まれてきたのかな。ある程度、年になれば、自分たちの時間ができて、のんびり暮らせる。最後はこういう惨めな目にあって。人間ってね…辛い人にはいろんな辛いことが重なってくるというか。不思議なものですよ、人生って」

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