「自分が総理でいいか」高市総理の問いにどう答える? 戦前の政党政治崩壊から学ぶ・・・現代の有権者が担う「一票」の真の意味とは【サンデーモーニング・風をよむ】

2月8日は衆議院議員選挙の投票日でした。高市総理は「自分が総理でいいか、国民に決めていただく」と述べていましたが、首相の信任を問うという今回の選挙をどう捉えたらいいのでしょうか。
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「総理大臣への信任」問う選挙?
60年ぶりとなる通常国会冒頭。余りに急な解散に世論調査でも、解散に「納得していない」が46%と、「納得している」の39%を上回りました。
高市総理はこう語って、解散総選挙に打って出ました。
高市早苗 総理大臣(1月19日)
「高市早苗が内閣総理大臣で良いのかどうか。いま主権者たる国民の皆様に決めていただく、それしかない」
総理への信任を問うとした今回の選挙。では、選挙で総理や内閣への信任は問えるのでしょうか。
そもそも、日本の総理はアメリカの大統領と違って直接、選挙では選ばれません。いわゆる「議院内閣制」によって、国会の議決によって選ばれることが憲法に定められています。
実は戦前にも、最初の本格的政党内閣とされる原敬内閣をはじめ、議会で多数を占める政党の代表が総理となることが「憲政の常道」とされた時期もありました。
ただ当時の帝国憲法にはそれを明文化した規程はなく、総理は元老などの推薦によって天皇が任命。「政党内閣」は制度的に保障されたものではなかったのです。
その結果...
1940年、戦時下の国民統制を期待された近衛内閣は、大政翼賛会を結成。ほとんどの政党は解散され、これに合流。議会は戦争を止めることは出来なかったのです。
「鋭敏でない」議院内閣制 首相公選も取り沙汰され
なぜ、戦前の「政党政治」は終わりを迎えたのでしょうか。
慶応大学(日本政治外交史)清水唯一朗 教授
「『憲政の常道』といって、政権が失敗したら第2党がその次に政権に就くという形をとっていた。選挙によって選ばれる政権ではないので、(政党は)お互い足の引っ張り合いを続ける。そうすると国民だけでなく、天皇を中心として政治家の側でも政党に対する信頼がなくなっていく」
「なので全ての政党を解散してでも、議会と政府の関係を良く保つために、大政翼賛会という仕組みを作るということになった」
そして終戦を迎えた日本。1947年、日本国憲法が施行され、戦前の憲法にはなかった「議院内閣制」が取り入れられたのです。
1955年には自民党が結党し、以降、自民党と社会党の55年体制が続く中「議院内閣制」のもと、国会で多数を占める自民党の総裁が総理を務め続けます。
ところが、1980年代中盤、当時の中曽根総理は...
中曽根康弘 総理大臣(当時)
「議院内閣制と言われた政治の場合は、ややもすれば国民のフラストレーションや何かを先手を打っていくということに、割合それほど鋭敏でなかった」
「それが私がいわゆる大統領制型の政治、つまり首相公選型の議員内閣制ということを考えた」
強力な官僚組織を前に、総理が独自の政策を実現できないいらだちなどから、国民が直接投票で総理大臣を選ぶ「首相公選制」を唱えます。
その背景を清水教授は...
慶応大学(日本政治外交史)清水唯一朗 教授
「首相が政策を変えたいというものに対して、『変えないで維持したい』というのが官僚にも議員にもいる。かつて族議員という言われ方もした」
「そこから独立させた形で政策を変えていきたいと思う首相がいれば、それは当然、議院内閣制の首相よりも、大統領制の形をとりたいという風に考える」
2000年代にも、当時の小泉総理が首相公選制を唱え、導入を検討する懇談会を設置しました。
しかし今の「議院内閣制」では、総理大臣はあくまで国会の信任のもとで成り立っています。
「小選挙区制」で議院内閣制に変化が…
そうした中、現在の「議院内閣制」に大きな変化をもたらしたものがありました。それが「小選挙区制」です。
一つの選挙区で一人が勝利する「小選挙区制」では、選挙で「圧勝」や「大敗」が生まれやすいといわれます。
小泉純一郎 総理大臣(当時)
「郵政民営化に賛成してくれるのか反対するのか、はっきりと国民の皆さまに問いたい」
例えば小選挙区制のもと行われた、小泉総理による「郵政解散」。
また、民主党の大勝による政権交代。そして安倍一強と言われる中での解散総選挙。
こうした選挙では、とりわけ無党派層に吹いた「風」や、リーダーのいわゆる「顔」の力が大きく働いたとされます。
そして今回の選挙では、高い支持率を背景に、自らの信任を高市総理は国民に問いました。
その意味を、清水教授は...
慶応大学(日本政治外交史)清水唯一朗 教授
「小選挙区(制)だから、(有権者は)実質的にはどの政党を政権政党として選ぶかという投票行動をしている。そうすると総理大臣を選んでいる選挙ということにもなってくる」
「ただその際に本当に、その人柄で選ぶのか、政策で選ぶのか、そこの責任というのは、むしろ政治家の側というより、私たちの側により大きくある」
有権者の責任の重さが、改めて問われます。