福井市が挑むZ世代と創るまちづくり クリエイトフクイプロジェクトの挑戦

2026-02-25 08:00

近ごろ、「若者の声をもっとまちづくりに」という言葉を耳にする機会が増えました。けれど実際に、若者が行政の中に入り、職員と肩を並べて課題に向き合う場面は、まだそう多くはありません。

福井市で行われた「クリエイトフクイプロジェクト」は、その一歩を確かに形にした取り組みです。高校生や大学生、若い社会人などZ世代の若者たちが市役所の各課に分かれ、公民館の活性化や防災、結婚支援、農業、スポーツの魅力発信など、身近なテーマに挑戦しました。SNSを活用した発信も多く、若い感性がそのまま形になっているのも特徴です。

まちづくりは、どこか「大人が決めるもの」というイメージがつきまといがちです。しかし、自分たちの言葉やアイデアが市政に反映されるとしたら、まちはぐっと身近な存在になります。福井市が示したのは、そんな“他人事ではないまちづくり”の可能性でした。

このプロジェクトがどのように始まり、どんな挑戦が行われ、参加した若者たちにどんな変化をもたらしたのか。その背景にある想いとともに、ひも解いていきます。

なぜ福井市はZ世代と本気で向き合ったのか

「クリエイトフクイプロジェクト」は、外部から持ち込まれた企画ではありません。福井市役所の若手職員チームが、「もっと若者の声を市政に取り入れたい」と考えたことから始まりました。2025年度にスタートし、公募で集まったZ世代の若者たち42人が“福井市Z世代クリエイター”として参加しています。

行政の取り組みというと、計画や制度が先にあり、市民は“利用する側”に回ることが一般的です。しかしこのプロジェクトでは、若者が最初から“当事者”として関わります。市役所の7つの課に分かれ、職員と一緒に地域の課題を考え、アイデアを出し、形にしていく。そこには、若者の意見を聞くだけでなく、実際に任せるという姿勢が見えます。

「若者の意見を取り入れる」と言葉にするのは簡単ですが、実際に仕組みとして動かすのは決して容易ではありません。市の各課に配属され、具体的なテーマに取り組むという形をとったことは、福井市が本気で若者と向き合おうとしている証でもあります。

参加した42人は、ただアイデアを出すだけではなく、企画や発信まで担いました。市役所の職員と連携しながら、地域の課題に取り組む過程は、若者にとっても新しい経験だったはずです。そしてそれは同時に、行政にとっても新しい風を受け入れる挑戦だったと言えるでしょう。

若者の声を“参考意見”で終わらせず、プロジェクトとして動かす。その背景には、これからのまちづくりは世代を越えて共に考えるものだというメッセージが込められているように感じます。

7つの挑戦が示した“福井市の本気”

今回のプロジェクトでは、福井市の7つの課に若者が配属され、それぞれのテーマに取り組みました。ただ数が多いというだけでなく、内容の幅広さにも驚かされます。お祭りの広報、防災教育、認知症への理解促進、結婚生活の魅力発信、農業のPR、市政情報の発信、そしてスポーツの魅力紹介まで。まさに“まち全体”がフィールドになっています。

まず目を引くのは、SNSを活用した情報発信の取り組みです。商工労政課ではフェニックスまつりの広報を若者目線で企画し、撮影からInstagram投稿までを担当しました。広報プロモーション課やスポーツ課でも、TikTok動画の企画・撮影・編集を行い、若年層に向けて市政やスポーツの魅力を届けています。単に内容を伝えるだけでなく、「同世代にどう届くか」を考えながら発信している点が印象的です。

一方で、防災や認知症、結婚生活といった“暮らし”に直結するテーマにも挑戦しています。

生涯学習課では、若者が楽しめることを重視した防災ゲームの制作に取り組み、実際に高校生向けの体験会も実施しました。地域包括ケア推進課では、介護施設での体験や当事者との意見交換を通して得た学びをもとに、認知症への理解を広める企画を行っています。

女性活躍促進課では、若者自身がリポーターとなって結婚生活を営む家庭を取材し、Instagramで発信しました。

さらに、農政企画課では農業体験や就農者との意見交換を経て、パンフレット制作やTikTok動画の作成にも取り組んでいます。若者が実際に体験し、その魅力を自分の言葉で伝えることで、新しい層へのアプローチが生まれています。

このプロジェクトは単なる“若者参加型イベント”ではありません。福井市のさまざまな分野に若者が入り込み、行政と並走しながら具体的な形をつくっている点に大きな意味があります。

広報だけでなく、教育、福祉、産業、スポーツといった多様な領域に挑戦していることが、福井市の本気度を物語っています。

若者の感性や発想が市政の現場でどのように生かされるのか。その可能性が、7つのプロジェクトを通して形になり始めています。

「まちづくりが他人事じゃなくなった」参加メンバーの声ににじむ変化

このプロジェクトをより印象深いものにしているのは、参加した若者たちの言葉です。

「自分たちの意見がちゃんと反映されるのがうれしいです。まちづくりが“他人事”じゃなくなりました!」
そんな感想からは、単なるボランティアや体験学習とは異なる実感が伝わってきます。行政の現場に入り、自分の提案が形になっていく。その経験は、まちとの距離を大きく縮めたのではないでしょうか。

また、「地域のことを“知ってるつもり”だったけど、参加して初めて本当に向き合えた気がします」という声もありました。日常の中にある課題は、普段は見過ごされがちです。しかし実際に取り組む立場になると、見え方が変わります。防災や認知症、農業といったテーマに真正面から向き合うことで、地域への理解が深まったことがうかがえます。

さらに、「将来の進路や仕事にもつながりそうです」「就活に向けて、今回の活動と関連した事業を行う会社の面接を受けてみようと思います」といった声も紹介されています。プロジェクトへの参加が、将来を考えるきっかけにもなっている点は注目に値します。まちづくりの経験が、自分自身の未来を考える材料になっているのです。

行政と若者が一緒に取り組むことで生まれるのは、目に見える成果だけではありません。そこには、参加した人の中に残る変化や気づきがあります。福井市の取り組みは、地域課題の解決と同時に、次世代を育てる場にもなっているように感じられます。

若者の挑戦は、まちを変えると同時に、自分自身の未来にも影響を与えています。その循環が生まれていることこそ、このプロジェクトの大きな価値なのかもしれません。

次はあなたの番かもしれない 2026年度メンバー募集が示す“続いていく挑戦”

今回の成果発表で一区切りを迎えたように見える「クリエイトフクイプロジェクト」ですが、挑戦はここで終わりではありません。すでに第2期生となる2026年度メンバーの募集が始まっています。

次年度のテーマは「SNSを活用した情報発信」です。主にTikTokなどのSNSを通じて、若者向けに福井市の魅力を発信していく取り組みが予定されています。これまでの活動でもSNSは重要な役割を担ってきましたが、次年度はその部分をより強化していく構想です。

行政の情報発信というと、どうしても堅いイメージがつきまといます。しかし、若者の感性や言葉を通すことで、同世代に届く形に変わります。短い動画や身近な視点からの紹介は、「知ってもらう」だけでなく「興味を持ってもらう」きっかけにもなります。

募集締切は2026年2月27日(金)までとされています。対象はZ世代の若者で、高校生や学生、社会人など幅広い層が参加できる形です。行政の取り組みに直接関わり、自分のアイデアを形にできる機会はそう多くはありません。

まちの未来をつくるのは、遠い誰かではなく、そこに暮らす人たちです。今回の成果発表は、その可能性を具体的に示しました。そして次の一歩は、また新しい若者たちへと引き継がれていきます。

挑戦のバトンは、静かに、しかし確かに渡されています。

若者と行政が並んで立つまちへ

まちづくりという言葉は、ときに遠いものに感じられます。制度や計画はどこか専門的で、自分とは関係のない世界の話のように思えてしまうこともあります。

しかし、福井市で進められている「クリエイトフクイプロジェクト」は、その距離を縮めようとする取り組みです。若者が市役所の各課に入り、職員とともに課題に向き合い、発信し、形にしていく。そこには、世代を越えて並んで立つ姿があります。

お祭り、防災、認知症、結婚、農業、スポーツ、市政情報。テーマは違っても共通しているのは、「若者の目線が加わることで見え方が変わる」という点です。行政の取り組みが、より身近に、より伝わる形へと変化していく。その過程そのものが、まちの未来をつくる力になっています。

参加した若者たちの言葉からも、自分の住むまちを“他人事ではない存在”として捉え直した様子が伝わってきました。まちに関わることで、自分の将来や進路について考えるきっかけを得た人もいます。地域課題の解決と人の成長が重なり合う場所が、ここにはあります。

行政と若者が対話し、協働し、次の世代へと挑戦をつないでいく。福井市の取り組みは、その一つのモデルを示しているように感じられます。こうした動きが各地に広がれば、まちづくりの風景も少しずつ変わっていくのかもしれません。

挑戦は続きます。若者の視点とともに、福井市の未来はこれからも形づくられていきます。


福井市 概要

福井市は人口約26万人を擁し、福井県嶺北地方に位置しています。日本海と東西の山々に囲まれた広大な福井平野は、古くから日本有数の米どころとして知られてきました。江戸時代には福井藩主・越前松平家の居城を中心とした城下町として栄え、現在も福井県の県庁所在地として発展を続けています。
適度な利便性と豊かな自然に恵まれた住みよいまちとしても知られ、幸福度No.1と評価されたこともあります。2024年3月16日には北陸新幹線が福井まで延伸開業し、さらに注目を集めています。

福井市公式サイト:https://www.city.fukui.lg.jp/

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