京都の小児科クリニックが挑む「まちづくり」と新しい居場所のカタチ
京都府精華町で地域密着型の医療を展開する「たけうちファミリークリニック」。
小児外科専門医の知見を強みに、小児の疾患や外傷を専門的に診療する一方、家族全員の「かかりつけ医」として日常の健康管理から急な体調不良まで幅広く対応している。
同院に取材すると、開業後に直面したという地域医療の課題が見えてきた。
「『こどもの風邪を診る』だけでは、地域医療における小児科の役割として十分ではないと強く感じるようになった」。院長はこれまでの歩みをそう振り返る。
院長によれば、診察室で浮き彫りになる家族の悩みは、疾患そのものにとどまらない。育児不安や発達への懸念、家庭内のメンタルヘルス、さらには仕事と育児の両立など、生活全般に及んでいるという。こうした現代特有の現状を受け、同院は現在、医療を中核に据えつつも、患者の生活全体に寄り添う新たな支援体制の構築を模索しているようだ。具体像や今後の展望について、詳しく話を聞いた。
――「医療と子育て支援をつなぐ」取り組みとは
その取り組みのひとつが、クリニック併設の病児保育です。開業当初、こどもの発熱により登園できず、保護者が仕事を休まざるを得ない状況を多く目にしました。医療と子育て、社会生活が分断されている現実を前に、「医療機関としてできる支援があるのではないか」と考え、開業から1年で病児保育室を立ち上げました。
現在は、保育士と看護師が連携し、こどもが安心して過ごせる環境を整えています。利用されたご家族からは、「安心して預けられる」「仕事を続けられる」といった声が寄せられ、病児保育が地域にとって欠かせないインフラであることを改めて実感しています。

――「クリニックは病気のときだけ行く場所」ではない?
当院では、診療以外の時間帯を活用し、絵本の読み聞かせや離乳食教室、ベビーマッサージ、季節のイベントなど、子育て支援の取り組みも行っています。クリニックを「病気のときだけ訪れる場所」から、「日常的に安心して足を運べる場所」へと広げていくことが目的です。
顔の見える関係が育つことで、気軽な相談が生まれ、必要なときには迷わず医療につながる。こうした関係性こそが、地域医療の土台になると考えています。また、「ダウン症しばふひろば」などの地域イベントを通じて、医療・福祉・スポーツ分野が連携し、新たな活動やつながりが生まれていることも、私たちの大切な経験となっています。
――医療のとなりにある、新しい居場所とは
― tPot(Takeuchi Park of Terrace)という取り組み ―
当院が最も大切にしているのは、地域に根ざした医療そのものです。
その一方で、診察室の中だけでは支えきれない子育てや暮らしの困りごとが、日常の中には数多く存在しています。tPotは、そうした「医療と生活のあいだ」に生じる小さな空白に、そっと寄り添う居場所として構想を重ねながら、現在プロジェクトを進めている取り組みです。
医療機関の隣接地という立地を活かし、医療・福祉・教育・子育て支援が制度や役割ごとに分断されることなく、生活の延長線上で自然につながる半公共的な空間を目指しています。支援を前面に出すのではなく、日常の中に関係性が溶け込むことを大切にしています。
こどもが安心して過ごせる一時保育施設や広場を中心に、カフェスタンドやライブラリー、相談やワークショップができる小屋などを設ける予定です。
保護者が立ち話をしたり、地域の大人がさりげなく見守ったり、専門職が日常の一部として関わったりする。そうした無理のない関係性が積み重なることで、小さなコミュニティが育っていくことを意図しています。
tPotは、医療を中心に据えながら、専門と日常、支援と遊び、こどもと大人が、境界をほどき無理なく混ざり合う器(Pot)です。そこに集う人それぞれが、ひと息つき、必要なときには医療や支援へ自然につながっていく。そんな関係性が育つ場でありたいと考えています。

たけうちファミリークリニックはこれからも、「こどもにも家族にもやさしいクリニック」という理念のもと、地域医療の枠を越えたコミュニティづくりに取り組んでまいります。
取材協力
たけうちファミリークリニック
院長 竹内雄毅
https://www.takeuchi-family-cl.com