繰り返す「中耳炎」に悩む犬の飼い主さんへ…手術後も再発した症例に効いた『免疫療法』という選択肢【獣医が解説】

2026-03-01 17:20

犬の中耳炎は治療しても再発を繰り返すことが多く、時には手術をしても残念ながら症状が改善しない場合があります。そんな難治性のケースでも、新たな選択肢として「免疫療法」が有効だった症例が報告されています。本記事では、実際の臨床例を参考に、治りにくい中耳炎に対する免疫療法という可能性をわかりやすく紹介します。

繰り返す耳のトラブルは「耳だけの問題」ではないことがある

獣医師に耳をチェックされている犬

犬の外耳炎や中耳炎では、炎症が慢性化していたり、点耳薬や内服薬でも改善に至らず、手術を行っても症状が再発することがあります。近年の報告では、まさにそのような「手術後も症状が治まらなかった」ケースが報告されており、感染と炎症のコントロールだけでは説明がつかない要因が関与している可能性が示されています。

特に慢性化した中耳炎では、耳道の構造変化や鼓膜の損傷だけでなく、皮膚炎やアレルギー体質、免疫反応の異常が複雑に絡み合うことが多く、単純な「耳の感染症」として扱うだけでは治療が不十分になる場合があります。今回の報告では、耳の洗浄や抗菌薬、さらには外科手術による病変除去を行っても改善が乏しく、根本的な要因に目を向ける必要がありました。

耳の疾患と全身の免疫の関わりは近年さらに注目されており、アレルギー性皮膚炎の犬において中耳炎の発症率が高いことも知られています。つまり、繰り返す中耳炎は「体質の問題」「免疫バランスの問題」が背景になっていることがあり、その場合は耳の感染と炎症に対する治療だけでは改善しにくいのです。

手術後も改善しなかった犬の中耳炎に「免疫療法」が奏功した理由

幸せそうな表情で正面を見る立ち耳の犬

報告では、慢性中耳炎の犬に対して外科手術が行われましたが、術後も耳の腫れや排膿が続く状態でした。通常、手術によって炎症は改善に向かうはずです。しかし、この犬では術後も炎症が再発し、細菌培養検査でも明らかな病原菌が見つからない状態が続いたため、単なる感染ではない可能性が検討されました。

そこで獣医師は、この犬に環境アレルゲンに対する過敏症(いわゆるアレルギー)があるかどうかを評価し、アレルギー検査に基づいて調整した「減感作療法(アレルゲン特異的免疫療法)」を導入しました。結果として、耳の腫れは数週間のうちに改善し、排膿も大幅に減少し、症例は長期にわたって落ち着いた経過を示しました。

免疫療法は、アレルギー反応の根本となる免疫の過剰反応をゆっくりと抑えていく治療法です。薬のように症状を一時的に抑えるのではなく、「体質そのものを変えていく」ことを目的としている点が特徴です。

この症例が改善した背景には、耳の炎症が単なる感染ではなく、アレルギー体質によって慢性化し、中耳という耳の深い場所にまで影響が広がっていたことが挙げられます。免疫療法により免疫の暴走が抑制されたことで、炎症の悪循環が断ち切られ、術後も続いていた耳の症状が改善したと考えられます。

難治性の中耳炎と向き合うために、飼い主が知っておきたいこと

飼い主と一緒に耳の診察を受ける犬

この報告が示すように、難治性の中耳炎では「耳を治す」こと以上に「耳を悪化させる体質と向き合う」ことが重要です。抗生物質や洗浄では改善しない、手術をしても症状がぶり返す、そのようなケースでは免疫の乱れやアレルギーが根本原因になっている可能性があります。

飼い主として大切なのは、再発を繰り返す耳の炎症そのものだけでなく、その背景にある全身的な問題を獣医師と一緒に評価していく姿勢です。体質の把握には時間がかかる場合がありますが、免疫療法は症状の軽減だけでなく「再発しにくい身体づくり」に貢献する治療であり、長期的なQOL向上につながります。

また、免疫療法は即効性は高くありませんが、副作用が少なく、数ヶ月〜数年単位で体質を改善する持続的な効果が期待できます。手術や薬だけでは限界を感じた場合でも、選択肢を広げることで改善の道が見えてくることがあります。

まとめ

片方の耳だけ立っている犬

繰り返す中耳炎は、耳だけの問題ではなく全身の免疫や体質が深く関わっていることがあります。手術後も改善しなかった症例に免疫療法が奏功した報告は、難治性中耳炎に対して新しい光を与えるものです。薬でも手術でも治りにくい耳のトラブルに悩む場合、免疫療法という選択肢を獣医師と相談しながら検討してみてください。

(参考文献:Vet Med Sci. 2025 Mar;11(2):e70253.)

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