アイ・グリッド、自治体との初の取り組みの再エネ循環供給「堺モデル」 GXシティを実現し、再エネの地産地消を目指す

2026-03-05 07:30

2050年のカーボンニュートラル実現に向け、施設の屋根を活用した太陽光発電所で再生可能エネルギー(以下、再エネ)を最大限に活用する仕組みを構築してきた株式会社アイ・グリッド・ソリューションズは、2026年2月26日に「再エネ循環供給モデル・プレス発表会」を開催しました。

大阪府堺市との取り組み概要や、「堺モデル」の具体的な内容や仕組みについて発表がなされました。

再エネを軸に街のレジリエンスを高める「GXシティ」構想

冒頭では、アイ・グリッド・ソリューションズ 代表取締役社長 秋田智一氏が登壇。

同社は「グリーンエネルギーがめぐる世界の実現」というビジョンを掲げ、再エネを経済合理性を持って分散集約で地域循環利用していくことを目指しています。しかし、企業の産業基盤である電気などのエネルギーコストはどうしても高くなってしまいます。また、再エネの大規模な発電設備の開発に伴う自然環境の破壊や地域住民とのトラブルなどが問題視されています。

こうした課題に対し、分散型で地域循環を高めながら利用できる再エネを増やしていく取り組みを行っていると秋田氏は説明しました。

日本では2012年以降に太陽光発電が急速に拡大してきましたが、いくつかの課題を抱えています。

従来の過疎地域に大規模な発電所を建設し、そこで作った電気を長距離送電線で都市部に届ける仕組みを、そのまま太陽光発電などの再エネへ転換させようとすると、過疎地域に大規模な太陽光発電所を集中的に設置する形になります。しかし、太陽光発電は単位面積あたりの発電効率が火力発電や原子力発電に比べて大幅に低いため、同じ電力量を得るためには、より広大な土地が必要になります。そのため、過疎地域に大きな適地が必要になり、メガソーラーが増えてきたわけですが、適地と言われるものが少なくなるなかで、強引な開発も顕在化するようになってきたのです。

また、「その地域で作られた再エネがどこで使われているか分からない」という問題も抱え、景観の悪化や自然環境、地域との共生という観点でもトラブルの原因になっているといいます。

そんななか、太陽光はフリーエネルギーで基本的にどこでも作ることができるため、作り方次第で都市部の中で再エネを作って自給率を上げることが可能です。秋田氏は、「屋根や駐車場などをうまく活用することで、自然への負荷を少なく太陽光発電を開発できる」と述べました。

「私たちは屋根や駐車場を活用した『分散型太陽光発電』の開発を進めており、全国で1300施設以上、開発容量として331MWという状況になっています。屋根面積の全面を使って発電した電気を、地域の中でシェアする仕組みを作ることで、屋根の面積を無駄なく有効活用しつつ、生まれてくる電気を地域の人たちが使える状態にし、都市部の再エネ自給率を上げていくことを目指しています」(秋田氏)

屋根の全面に太陽光発電設備を置くことで、その場では使い切れない余剰電力が生まれるというのは、今までのような開発用地を必要としないということ。

秋田氏によると、屋根の有効活用を見込んでいる流通や物流施設だけでも、120億kWhの余剰があり、原発の出力ベースでいうと1基分ぐらいになるそうです。これが新たな土地の造成なしで作ることができると考えると、非常に大きなポテンシャルを秘めていると言えるでしょう。

また、再エネは燃料を使っていないので、エネルギー価格の高騰に左右されず、さらには安定的に使えるという安全保障の観点があります。つまり、再エネを地域の自治体や企業と共同運用していくことで、新たな雇用創出につなげていくことも期待できるわけです。

「分散型で地域の中で地産地消できる枠組みをうまく作ることで、その街自体のレジリエンスや魅力を向上させていく取り組みが『GXシティ』という構想です。これは再エネ・脱炭素であれば何でもいいということではなく、その地域の方たちにとってメリットがしっかり見える形で作っていくことがポイントになります。

都市部であれば、太陽光発電のメガソーラーに合った適地は多くないため、自然を傷つけない形で再エネを増やしていき、エネルギーレジリエンスの高い街づくりを目指すことが重要です」

大阪府堺市との取り組みは、自治体におけるGXシティプロジェクト第1号

続いて、株式会社アイ・グリッド・ソリューションズ 執行役員 DX推進部長の岩崎哲氏が登壇し、「堺モデル」の概要について説明しました。

堺モデルについては、堺市長からも「都市型の地産地消を推進していくうえで、自治体にとってロールモデルになっていくもので、先進的な取り組みになる」という期待のコメントが寄せられるなど、社会的に意義深いプロジェクトになっています。

堺市は地域の脱炭素を推進するなかで、エネルギーコストの上昇から再エネプランを導入するのが難しく、かつメガソーラーなどの適地がないという課題がありました。最近は、公共施設の屋根を使って、太陽光パネルを初期投資ゼロで設置して自家消費していく「PPAモデル」に取り組む自治体も増えていますが、「屋根が狭い、防水工事が必要など、公共施設には構造的な問題があり、コスト効率的に進みづらいという問題がある」と岩崎氏は指摘しました。

こうしたなか、堺モデルのポイントは、コストを抑えて太陽光を設置できるような民間施設や公共施設と連携し、地域全体の脱炭素・GXを進めていくこと。そして、屋根で作った太陽光の再エネ余剰電力をAIで集約循環させていき、公共施設に対して循環供給していくという仕組みになっています。

堺市への再エネ供給は2月1日から始まっていて、自治体初の取り組みとして第一歩を踏み出したと言えるのではないでしょうか。

「民間施設というのは、堺市内の色々な事業者を公募し、補助金の活用もしながら太陽光を安く設置し、その余剰電力を活用していくことで、庁舎へ再エネを供給していく持続的な仕組みなのが特徴となっています。

さらに地域の色々な事業者とも連携し、地域の雇用も生み出しながら取り組んでいきたいと考えています」(岩崎氏)

図は、アイ・グリッド・ソリューションズのAIプラットフォーム「R.E.A.L.」を使って発電地の発電状況や電気の利用状況をリアルタイムにモニタリングしている様子です。

AIによる発電予測や需要予測を行い、多拠点の電力データを一元管理し、需給バランスを取りながら地域の中で再エネを循環させていくという技術的なアプローチも大きな特徴のひとつ。

この堺モデルに採択された企業は2026年1月時点で11社、15施設になり、今後は再エネの地産地消を地域全体で広げていくために活動の輪を広げていくそうです。

「余剰電力の地域循環を目指すうえで、地域住民や企業、銀行、金融機関、大学などとも連携をしながら、地域の活力に繋げていく。そして、“脱炭素ドミノ”として他の地域自治体にも展開をしていきながら、GXシティの取り組みをさらに広げていきたいと思っています」

堺市から始まるこの新しい循環が、全国の街へと波及していく未来。そんな「GXシティ」が当たり前になる日も、そう遠くないのかもしれません。

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