AIが切り拓く“聴こえ”の新しい可能性、Starkey Japan「Omega AI」発表イベント開催

2026-03-08 08:00
AIが切り拓く“聴こえ”の新しい可能性、Starkey Japan「Omega AI」発表イベント開催

私たちは普段、音に囲まれて生活している。家族や友人との会話、街のざわめき、仕事の場で交わされる言葉。そうした音のひとつひとつが、日常の安心や楽しさを支えている。しかし、年齢や環境によって「聴こえ」が変化することは決して珍しいことではない。近年は、補聴器の役割も単なる音の増幅装置から、より快適なコミュニケーションを支えるテクノロジーへと進化しつつある。その中心にあるのが、AI技術である。

こうした中、補聴器ブランドとして知られるスターキージャパンは、AI技術を搭載した新しい補聴器「OMEGA AI(オメガ エーアイ)」の魅力を紹介するイベント「Starkey Japan Omega AI Tokyo Day」を開催した。会場となったのは東京・芝浦のBLUE FRONT SHIBAURA TOWER S。イベントでは、最新のAI補聴器の技術や開発の背景が紹介されるとともに、実際に製品を体験できるプログラムも用意され、来場者が次世代の“聴こえ”を体感する場となった。

イベント開幕! スターキーが掲げる「Hear Better, Live Better」

イベントは、スターキージャパン代表取締役社長の髙井浩希氏による挨拶からスタートした。スターキーは「Hear Better, Live Better(より良い聴こえ、より良い生活)」という理念を掲げ、長年にわたり聴覚テクノロジーの進化に取り組んできた企業である。

髙井氏は、これまで培ってきた技術やアイデアを今回のデバイスに凝縮していることを説明し、来場者に向けて「スターキーの挑戦に対してワクワクした気持ちを持っていただけたら幸いです。」と語った。AIをはじめとするテクノロジーが生活を大きく変える中で、聴こえの世界にも新しい可能性が広がっている。今回のイベントは、そうした取り組みの集大成ともいえる場として位置づけられているのである。

グローバル企業としてのスターキーの取り組み

続いて登壇したのは、米国スターキー本社のPresident and CEOであるBrandon Sawalich氏である。スターキーは米国ミネソタ州に本社を置き、世界20カ所以上の製造拠点と800カ所以上の流通・販売拠点を持つグローバル企業である。

Sawalich氏は、約60年にわたり革新と顧客サービスを積み重ねてきた企業としての歩みを振り返りながら、スターキーが「補聴器メーカー」から「聴覚テクノロジーカンパニー」へと進化してきたことを強調した。非上場企業である強みを活かし、長期的な視点で技術開発やパートナーシップへの投資を続けてきたことが、現在の成長を支えているという。また、日本市場についても重要なパートナーであると述べ、今回東京で新製品を紹介できることへの期待を語った。世界的な聴覚テクノロジー企業としての姿勢が、改めて示された瞬間であった。

新AI補聴器「OMEGA AI」を支える革新的プロセッサー

イベントでは、新製品の中核となる技術についても詳しく紹介された。説明を行ったのはスターキーのCTO兼Engineering担当Executive Vice PresidentであるAchin Bhowmik氏である。OMEGA AIには、新たに「G3ジェネAIニューロ・プロセッサー」と呼ばれる半導体が搭載されている。このプロセッサーの特徴は、3つのAIモデルが同時に動作するディープニューラルネットワーク処理システムである。

1つ目は、DNN(ディープニューラルネットワーク)による音声強化技術である。騒音の多い環境でも会話を聞き取りやすくするため、音声と雑音を分析し、SN比を最大13デシベル改善するという。

2つ目は、DNNを活用した指向性システムである。周囲の音環境に応じて、最適な方向の音を選択することで、聞きたい声をより明確に捉えることができる。

そして3つ目が、DNNによる空間認識機能である。周囲の音を分析し、どの方向から会話が始まっても瞬時に音声を検出することが可能となる。こうした技術により、360度の音環境の中でも自然な聞き取りを実現する仕組みが整えられているのである。

補聴器の体験価値を広げる新機能

さらにイベントでは、スターキーのChief Hearing Health OfficerであるDave Fabry氏が登壇し、補聴器の品質向上に向けた取り組みについて紹介した。中でも注目されたのが、最新Bluetooth規格「Auracast」に対応した機能である。これにより、公共施設やイベント会場などで音声を直接補聴器へ届けることが可能となる。スマートフォンやさまざまなデバイスとの連携も広がり、補聴器の活用シーンは今後さらに広がることが期待されている。ユーザーの声を踏まえながら、より快適で自然な聴こえを目指して改良を重ねてきたスターキーの取り組みが紹介され、会場では補聴器の未来に対する期待が高まっていた。

体験会で伝えられたOMEGA AIの魅力

イベント後半には、来場者が実際にOMEGA AIを体験できるプログラムも用意された。実機を通じて音の変化を体感できる機会となり、参加者は最新のAI補聴器がもたらす聴こえの違いを確かめていた。

会場では技術説明だけでなく、製品の使い心地や機能について直接確認できる場が設けられ、終始活発な交流が行われていた。AIと聴覚テクノロジーの融合が、実際の生活の中でどのように役立つのかを具体的に感じられるイベントとなったのである。

開催概要
名称:Starkey Japan Omega AI Tokyo Day
会場:BLUE FRONT SHIBAURA TOWER S(港区芝浦1-1-1)
登壇者:髙井浩希(スターキージャパン株式会社 代表取締役社長)
Brandon Sawalich(Starkey President and CEO)/ Achin Bhowmik(Chief Technology Officer and Executive Vice President of Engineering)/ Dave Fabry(Chief Hearing Health Officer)

AI技術の進化は、私たちの生活をさまざまな形で変えつつある。その波は、聴覚の世界にも確実に広がっている。補聴器は単に音を大きくする装置ではなく、環境を理解し、ユーザーが本当に聞きたい音を選び出す“スマートデバイス”へと進化しているのである。

今回紹介されたOMEGA AIは、その象徴ともいえる存在である。AIと半導体技術の融合によって、補聴器の可能性はさらに広がりつつある。

人と人との会話、周囲の音、日常のささやかな瞬間。そうした音をより自然に、より快適に届けるための技術は、これからも進化を続けていくだろう。聴こえの未来は、今まさに新しい段階へと歩み始めているのである。

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