過去の記憶を呼び覚ますAIラジオ「RADIO TIME MACHINE」が登場! ニチイ学館が介護現場での導入検証を開始

2026-03-08 10:25

医療・介護・保育サービスなどを全国で提供する株式会社ニチイ学館は、介護人材不足の解消や現場負担の軽減につながるテクノロジー活用を検討する研究組織として、「GENBA SMILE Lab(ゲンバ スマイル ラボ)」を設立し、活動を進めています。

その活動の一環として、過去の西暦にダイヤルを合わせると、その年のニュースとヒット曲を紹介するラジオ番組のような音声コンテンツが自動生成されて流れてくる新しいAIラジオ機器「RADIO TIME MACHINE(ラジオタイムマシーン)」を、認知症対応型生活介護(グループホーム)や通所介護(デイサービス)などで導入検証するプロジェクトを2026年3月5日(木)より開始。プロジェクト開始当日の3月5日には、ニチイ学館本社にてメディア発表会が開催され、本プロジェクトの全容や実機デモンストレーションが公開されました。

世代を超えたコミュニケーションの架け橋に。開発の背景と実証実験で見えた「驚きの変化」

発表会の冒頭、株式会社ニチイ学館 GENBA SMILE Lab 所長の松本裕美子氏が登壇し、プロジェクト発足の背景とデバイスの概要について説明を行いました。

ニチイ学館は「お客様・地域社会からダントツに愛され、尊敬されるニチイグループになる」というビジョンのもと、利用者様のウェルビーイング向上につながるサービスを模索しています。一方で、介護現場では「利用者の見守りやコミュニケーションの難しさ」が課題となっていました。特に、世代の離れたスタッフにとって、利用者様との会話のきっかけを掴むことは容易ではなく、人手不足の中でスタッフの負担を軽減しつつ、豊かなコミュニケーションを生み出す環境整備が急務となっていました。そこで着目したのが、生成AIを活用した「RADIO TIME MACHINE」です。

本機は、TBWA HAKUHODOが独自に開発したAIラジオ機器。1950年代から60年代のラジオをモチーフにしたレトロな筐体デザインが特徴で、ダイヤルを回して西暦(1950年〜2025年)を選ぶだけで、その当時の「今日の日付」のラジオ番組風コンテンツが再生されます。

松本氏は、1月下旬から実施された事前実証の結果について、動画を交えながら次のように報告しました。

「実証前にはご両親の名前やかつての勤務先を思い出せなかった利用者様が、ラジオタイムマシーンを通じて20歳頃のニュースや音楽に触れた直後、それらの記憶を鮮明に即答されるなど、ハッと思い出す瞬間が数多く見受けられました」

さらに、機器の使用時と非使用時を比較した解析結果として、以下の3つのポジティブな変化が示されました。


表情解析:過去の思い出に浸ることで、笑顔の値が平均8.7%上昇。中には23.8%上昇した利用者も。

身体活動量解析:身振り手振りが10%増加。相手に内容を説明しようとする動機が高まったことが要因と推察される。

発話速度分析:1分あたりの発話量が10.8語増加。記憶が呼び起こされ、伝える意欲が向上した。

松本氏は「ラジオタイムマシーンは、利用者様の心理的な安定や生活の彩りをもたらすだけでなく、利用者様同士の交流や、介護スタッフとの相互理解を深めるきっかけになります。今後は廉価版の製造も視野に入れ、複数の施設での検証を通じて本格導入を目指したい」と展望を語りました。

あの頃の空気を完全再現。生成AI×独自技術が織りなす「RADIO TIME MACHINE」のメカニズム

続いて、開発元である株式会社TBWA HAKUHODO RADIO TIME MACHINE 開発・事業責任者の鈴木賢史郎氏より、本機の技術的なメカニズムと今後の研究について解説が行われました。

「RADIO TIME MACHINE」から流れる音声は、独自の「ニューストピックリスト」に基づき、生成AIが当時のラジオ番組を模した原稿を作成。それを、開発関係者30名以上の声を元に生成した「AIボイス」が読み上げることで生成されています。当時の話し方や抑揚、テンポを再現することで、懐かしく自然な語り口を実現しているのが特徴です。また、ニュースの合間には当時の流行を反映したヒット曲が流れる構成となっており、毎日自動的に新しいコンテンツが生成されるため、飽きることなく楽しみ続けられます。

鈴木氏は、あえてスマートフォンアプリではなく、物理的なダイヤル操作を伴う筐体にした意図について、「高齢の利用者様が自ら積極的に手を使い、直感的に操作できる体験設計を目指しました。これにより身体機能の向上にも寄与できると考えています」と説明しました。

また、今春より北里大学医療衛生学部と共同研究を開始することも発表されました。

「認知症の周辺症状(BPSD)である『落ち着かない』『怒りっぽい』『意欲が低い』といった行動・心理症状に対し、ラジオタイムマシーンがどのような抑制効果をもたらすかを科学的に検証します。評価尺度を用いた数値化や行動・表情分析を行い、次世代の高齢者ケアにおける新たなツールとしての可能性を提示していきたいと考えています」と、鈴木氏は研究への意気込みを語りました。

介護現場に新たな「楽しみ」と「対話」を

質疑応答では、他の類似サービスとの違いとして「利用者様自身が自由に楽しめる受動的ではない体験」である点や、視覚に頼らないため目の不自由な方でも楽しみやすい点などが挙げられました。また、今後は地域ごとのローカライズ(例:住んでいた地域のニュースを流す)など、パーソナライズの可能性も示唆されました。

テクノロジーの力で過去の記憶を呼び覚まし、高齢者のウェルビーイング向上と介護現場のコミュニケーション活性化を目指す「RADIO TIME MACHINE」。懐かしい音色が、介護の未来に新たな彩りを添えることが期待されます。

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