「AIで人が浮いても絶対に切らない」明治安田・永島英器社長にきく “安心”はAI、“信頼”は人間がつくる...震災が教えてくれた「数字より大切なこと」

「AI導入でも人は切らない」“安心”はAI、“信頼”は人間がつくる
「AIに代替されたことで人員が浮いたとしても人を切ることは一切考えていない」
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金融のみならず様々な業界でAIによる業務の効率化や人員の削減などが進むなか、明治安田生命の永島英器社長はJNNのインタビューにこう断言しました。
急速に進化するAIと共存しながら人間ならではの仕事の価値をどう生み出していくのか、また、金融政策の正常化による「金利ある世界」への回帰や、中東情勢の緊迫化で激動するマーケットのなかでどう舵取りをするのか、明治安田生命の永島英器社長に聞きました。
イラン情勢の緊迫「グローバリズム後退」の中で守るべきもの
ーーー中東情勢が緊迫化していて、すでに原油の先物価格が急騰するなどの動きがでています。市場への影響をどのようにみていますか?
◆明治安田・永島英器社長
原油の値段がどのぐらい上がるのかということと、紛争がどのぐらい長期化するのかという2点が非常に気になります。日本のインフレ圧力が高まるような事態になれば金融に関しても引き締めの声が高まるかもしれません。
ーーー混迷する世界情勢の中で、企業のトップとして何を感じていますか?
◆明治安田・永島英器社長
人が人を殺すような世の中がまだ続いていることにやはり悲しい思いにとらわれますし、何とか未来世代のために平和な時代を残していきたいと思います。
同時に思うことは、仮にグローバリズムの後退は仕方ないとしても、次に守らなきゃいけないのは民主主義だと思います。ポピュリズムや格差分断の中で民主主義を守らなきゃいけないと強く思っていますし、そのためにできることをやっていきたい。
我々ができることとして、家庭でも職場でもない「サードプレイス」はとても大事だと思います。その中においては、主義主張や貧富の差、生まれ育ちに関係なくリアルに人が交流できる。そこに緩やかな絆があることはとても大事で、これがやはり民主主義の基盤だし、生命保険会社の事業の基盤でもあります。
生命保険も「自分のお金で誰かが救われているんだったらそれでいいや」と思えるぐらいの緩やかな絆がないと、相互扶助は成り立ちません。我々が絆を紡いでいくことは、生命保険会社の事業基盤を守ることと同時に、民主主義の基盤を守ることに繋がる。そんなふうに思っています。
今後1年で「日銀利上げ2回、アメリカ利下げ2回」日米金利差は縮小し円高へ
ーーー今年に入って国内金利が激しく動く場面がありました。特に年限の長い超長期の金利は急騰する場面もありました。この背景についてどうみていますか?
◆明治安田・永島英器社長
金融は経済の血液みたいなものなのでうまく循環しないといけません。
マイナス金利で停滞した時期もありましたが、長い目で見ると、正常化の中にあるだろうと思いますので、あまり短期的な動きに一喜一憂しないことは大事だと思います。
直近でいうと、様々な地政学リスクや政治の動きで変動が大きくなっていることも事実ですが、お客様からお預かりする保険契約も10年、20年と長い契約なので大局的な見地に立って長期的な目線で運用しております。
ーーーこの先の金利と為替についてはどういう見通しをお持ちでしょうか。
◆明治安田・永島英器社長
不確定要素は多いですが日本の政策金利に関して言うと、これから1年ぐらいで2回程度利上げがあるのかなと思っています。一方アメリカは今後1年の間に2回ぐらい利下げがあるかなと思っていますので基本的には日米の金利差が縮小する。この「日米の金利差が縮小する」という要素だけ見ればやはり円高圧力には一定程度なるでしょう。
AIで浮いた人員は「切らない」人間力で信頼を紡ぐ
ーーーAIの導入による業務の効率化や、それに伴う人員の再配置についてはどう考えていますか?
◆明治安田・永島英器社長
特徴的な取り組みのひとつは、3万7000人の営業職員がAIが搭載されたスマホを持っていて、お客様と面談をしたときの気づきを入力しておくとAIが営業職員に対して色々な示唆をしてくれて、営業職員がお客様とより豊かな材料をもとに向き合える仕組みを進めています。
「AIに任せる仕事」「人間がやる仕事」「人間とAIが協力して一緒にやる仕事」はそれぞれ峻別して効率化を進めていきますが、大事に思っているのは、AIに代替されたことによって人が浮いたとしても、それによって「人を切る」とか「採用を抑制する」とかそういうことは一切考えていないということです。メンバーシップ型雇用なのでその余力を持って他の仕事にチャレンジしていただくということです。
明治安田の大きな価値だと思っている「安心」と「信頼」のうち、「安心」はAIやアルゴリズムを使ってリスクを削ぎ落とすことでつくることができます。一方、「信頼」は対面で目と目を合わせて、”あなたに任せるから委ねる”という身体的感覚をともなう人間的な感情だと私は思っています。それは営業職員が一対一で対面でお客様と紡ぐ信頼だと思うので明治安田はAIやデジタルを使って安心をつくり、人間力でお客様からの信頼を紡ぐ。このことを大事にしていきたいと思っています。
私も毎日AIを使っていますが、記憶力などが衰える代わりに、より人間らしい感情や共感能力が高まるような実感があります。洞窟の魚が視力を失う一方、聴力や水の波動を感じる力は伸びるように、人間もAIを使いながら変化・進化していくことは十分できるんじゃないかと思います。
震災が教えてくれた「数字より大切なこと」不祥事の反省踏まえ「パーパス・ドリブン」に
ーーー保険業界では昨年来不適切な情報の持ち出しのほか、顧客からの金銭詐取などの不祥事が相次ぎました。このことへの受け止めと、明治安田生命としての今後の対策について教えてください。
◆明治安田・永島英器社長
当社においても営業職員による不適正な金銭の取り扱いがあり、また情報の不正な持ち出しもあり本当に重く受け止めております。いずれにしても教育やコンプライアンスの徹底が不十分だったと思っております。
私はKPIとか数字ドリブンから、パーパス・ドリブンに変わることが一番大事だと思います。数字があるから仕事をする会社ではなくて、パーパス=生きる意味や働く意味に基づいて仕事をする会社に変わらなきゃいけない。
原点の一つは東日本大震災にもあります。
当時、当社の営業職員は被災して自分の家もぐちゃぐちゃなのに、自分のお客さんを避難所から避難所へ探し回って、最後の1件まで保険金や給付金の請求手続きを手伝いました。
上司の指示とか職務定義書に何が書いてあるかなどとは関係なく、自分の使命感やお客様から託された信頼に応えたいという思いだけでした。
そんなこともあって、私はいつもメンバーシップ型雇用にこだわります、ジョブ型にしたくない。メンバーシップで長期的な時間軸で働いてもらって、自分の生きる意味や会社のパーパスから突き動かされる熱い思いでお客様と接するその本質が一番大事だと思っています。
(※本インタビューは3月4日に実施しました)
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◆略歴
永島 英器(ながしま・ひでき)
1986年 3月 東京大学 法学部卒
1986年 4月 入社
2010年 4月 明治安田生命保険相互会社 静岡支社長
2013年 4月 企画部長
2015年 4月 執行役 企画部長
2016年 4月 執行役員 人事部長
2017年 4月 常務執行役
2021年 7月 取締役 代表執行役社長 グループCEO