アジア大会選考基準をクリア 佐藤早也伽がレース終盤で執念を見せることができた理由とは?【名古屋ウィメンズマラソン】

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2026-03-10 12:00
アジア大会選考基準をクリア 佐藤早也伽がレース終盤で執念を見せることができた理由とは?【名古屋ウィメンズマラソン】

佐藤早也伽(31、積水化学)が昨年に続いて名古屋ウィメンズマラソン(バンテリンドームナゴヤ発着)で2位(2時間21分56秒)に入った。レース終盤では優勝したS.チェプキルイ(35、ケニア)と壮絶なデッドヒートを展開。2秒差の2位ではあったが、MGCシリーズ2025-26のシリーズチャンピオンを決め、本人が辞退しない限り今年9月開催の名古屋アジア大会代表にも選ばれる。だが佐藤は大会前の取材では、国際大会などを強く目指す気持ちがないことを明かしていた。代表を目指さない選手が、世界トップ選手を相手にこれほどの戦いができたのはなぜなのか。

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“粘り”が特徴の佐藤に“勝ち”への執念

40kmからチェプキルイと佐藤の壮絶なデッドヒートが続いていた。佐藤が前に出たシーンもあったし、振り切られそうになっても踏ん張った。勝つことはできなかったが、外国勢に敗れた中では名古屋ウィメンズマラソン史上最小差の戦いをやってのけた。

昨年は35km付近からチェプキルイに先行され、付いて行くことができなかったが、2時間20分59秒と2年半ぶりに自己記録を更新した。今回は強風のため記録的には厳しかったが、35kmを過ぎてもチェプキルイとA.デスタ(22、エチオピア)、2時間17分台の自己記録を持つ2選手に加世田梨花(27、ダイハツ)とともに戦いを挑み続けた。

加世田は39km過ぎに、デスタも40km手前で後れたが、佐藤は前回100m以上の差を付けられた相手に一歩も引かなかった。フィニッシュ直後の場内インタビューでは、「もしかしたら勝てるかな、という思いがありました。勝ちたい気持ちがありました」と感極まった声で話した。佐藤の特徴は苦しくなってからも粘る走りだが、今大会の佐藤には粘り以上の何かが感じられた。積水化学の野口英盛監督はレース翌日に、佐藤の走りを次のように振り返った。

「粘っても離されることはあって、それが昨年の走りだったと思うんです。チェプキルイ選手が『速かった』と言っていましたから、その時点で自己記録を目指すことしかできなかったのでしょう。今年は30~35kmはペースが上がりましたが、40kmまでは向かい風があってペースが上がりませんでした。徐々に残り距離が少なくなって、勝ちたい気持ちが強くなっていった気がします」

ラスト2.195kmをチェプキルイが6分56秒、佐藤は6分58秒で走りきった。日本選手が6分台を出したのは初めて、という指摘も出ている。5kmに換算すると15分52秒。終盤でこのスピードが出せたことは佐藤の成長を物語っている。

クイーンズ駅伝でも見せていた執念の走り

今回と近い走りを挙げるとすれば、23年のクイーンズ駅伝3区(10.6km)の走りだろう。廣中璃梨佳(25、JP日本郵政グループ)の猛烈な追い上げにトップを譲り、2~3m離されることもあった。だが必死の形相で廣中に付くと、中継所まで0.4km付近でスパートして3秒先着した。チームメイトの新谷仁美(38、積水化学)は当時「佐藤さんは並ばれてスイッチが入った」と同僚の走りから感じていた。今回の佐藤も、残り距離が減って行く中でスイッチが入った。

野口監督は「執念だったと思う」と話す。「粘るだけでなく、負けたくない気持ちが勝っていました。駅伝では、離されたら次の走者の負担になってしまう。マラソンでは、日本人トップは佐藤も経験していますが、勝つことは簡単なことではありません。前半はそこまで強く思っていなかったのでしょうが、残り距離が減ってくるに従って、相当意識したと思います。相手が2時間17分台を持っていて、頭の中では強いとわかっていると思うんです。それでも勝ちたい気持ちがわき上がってきて、あれだけの走りができました。僕は成長したな、と思いました」。

今回の結果で佐藤は9月開催のアジア大会代表選考基準を満たし、来年10月開催のMGC(マラソン・グランドチャンピオンシップ。ロサンゼルス五輪代表3枠のうち1人、ないしは2人が決定)の出場権も得た。

代表を目標としない佐藤独特の向上心

だが佐藤は、今後の国際大会出場については「まだ考えていません。これからじっくり考えたい」と言い、野口監督も大会当日はそのことは話し合わなかった。佐藤も国際大会での活躍を目標としたことはあった。昨年の名古屋ウィメンズマラソン後には、東京2025世界陸上の目標を次のように話していた。

「ブダペスト世界陸上(23年。20位)で世界との差を感じたので、もっと世界と戦える強い選手になりたいと思いました。前回できなかった8位入賞を目標に、先頭集団で勝負できる練習を積んで挑みたいです」

佐藤は以前から、「過去の自分を超えること」を目標としてきた。東京世界陸上も、ブダペストの20位から13位に順位が上がり、「前回よりも成長している」ことは自身でも評価できた。今回の名古屋ウィメンズマラソンでは、アジア大会代表を取ろうとは考えていなかったが、「自己新を目指して頑張りたい」と大会前の取材で強調した。野口監督が佐藤の心理状態を代弁する。

「東京世界陸上が13番で、世界とはまだ差があることをわかったと思いますが、頑張ればもっと行ける“課題感”みたいなものも感じていたんだと思います。冬のマラソンはどうする? と確認したら、名古屋で自己記録を目指して走りたいと言ってきたので、そこでまた頑張る決心をしたのでしょう。MGCやロサンゼルス五輪が進む先にあるとは理解していても、1個1個クリアして、もう少し頑張ったらそこまで行けると見えてきたら、また頑張っていくタイプです」

大きな大会を意識しなくても、佐藤は目の前の目標に向かって全力で取り組むことができる。名古屋に向けた練習では、「12月まで脚が痛く練習が上手くいかないところもあった」(野口監督)が、1月は走行距離が月間で1000kmを超えていた。「最後の方では40km走や、30km変化走で1年前を上回るタイムでも走りました。今回の名古屋の走りを見ると、本人の中ではすごい信念を持って、世界陸上後の数か月を取り組んできたんだと思います」。

その結果、佐藤自身も成長を感じられる走りができた。「マラソンで勝ちたいな、という思いで走れたことは、自分にとっても良い経験です。風が強い中でも前半でしっかり力を貯めて、後半勝負ができました。自信になりましたし、これからの競技につながると思えたレースになります」。

野口監督はすでに、今年のアジア大会を目指すのか、あるいは2時間20分を切る自己記録を目指すのか、という2つの道をイメージしている。佐藤自身が決断する時も、遠くないのではないか。

(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)

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