イラン情勢は“石油戦争”の様相…日本で最大規模の“石油備蓄放出”始まる トランプ氏は“艦船派遣”を求める…高市総理「何ができるか検討中」【news23】

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2026-03-17 15:43
イラン情勢は“石油戦争”の様相…日本で最大規模の“石油備蓄放出”始まる トランプ氏は“艦船派遣”を求める…高市総理「何ができるか検討中」【news23】

衝突が続くイラン情勢は収束の兆しが見えず、事態は“石油戦争”の様相を呈し始めています。こうした中、政府は過去最大規模となる「石油備蓄の放出」を始めました。価格の高騰を抑え込むことはできるのでしょうか。

【CGを見る】自衛隊派遣 なぜ「法的に難しい」?

「これからの1週間さらに攻撃」イラン1300人超が死亡

「卒業生、入場」

子ども達の学校がある街は、今、戦火に包まれています。イランではなく、都内で行われた、テヘラン日本人学校の修了証書授与式。一部の教師は今もイランに残ったまま。オンラインで教え子たちを見守りました。

卒業生
「例えばヒジャブをつけるとかそういう宗教的なものや、文化の違いが特に身についたかなと。イランにもう一度行って、より詳しくなりたいです」

イランに戻れるのは、いつでしょうか。その“問い”には、まだ大人たちも答えられません。

イランへの攻撃が始まって2週間。イラン赤新月社は、これまでに少なくとも1300人以上が死亡したと発表しました。市民が暮らしていた場所も、今はガレキと灰にまみれています。

「ここが軍事施設だなんて、この建物には、神に誓って、軍関係者はいなかった。みんな住宅、これらの建物すべて」

イランを攻撃するアメリカ側にも死者が出ています。13日、イラン側の武装組織の連合体は“アメリカ軍の空中給油機1機を撃墜した”と主張。アメリカ軍は給油機の乗員6人が全員死亡したとしていて、発表されている限り、アメリカ軍の死者は13人になりました。

互いに死者は増えていますが、指導者たちは攻撃を続けるつもりです。トランプ大統領は、イランとの停戦について…

トランプ大統領
「イランは(停戦の)合意を望んでいる。条件がまだ不十分であり、私は合意したくない」

イラン側も戦いを続けると表明しています。

イラン アラグチ外相
「我々は停戦を求めたことや交渉を求めたことは一度もない。『これは勝利のない違法な戦争だ』とトランプ大統領が認めるまで、我々は戦い続ける」

互いに攻撃の正当性を訴え、すでに2週間。アメリカは13日に過去最大の空爆を実施し、これまでに攻撃した標的が1万5000か所を超えたと発表しました。トランプ氏は、さらなる攻撃を宣言しています。

トランプ 大統領
「我々はイランに甚大な被害を与えた。再建に何年もかかるだろうし、これからの1週間でさらに激しい攻撃を加える」

イラン情勢“石油戦争”の様相 UAEに報復表明も

トランプ氏は13日、「イランの宝であるカーグ島の軍事目標を完全に破壊した」とSNSに投稿。カーグ島はペルシャ湾にあり、アメリカメディアはイランの原油の9割がこのカーグ島を経由して輸出されるとしています。

トランプ氏は「石油のインフラは破壊しなかった」としたものの、アメリカ中央軍はカーグ島にある90以上の軍事目標を攻撃したということです。

トランプ大統領
「イランの状況はとても良い。きょうも大きな成果、大きな勝利があった」

イランの当局者は、「アメリカ軍がUAEから攻撃を行った」と主張。一大産油国であるUAEに対し、こう報復を表明しました。

イラン当局者
「イランには、UAEの港湾や桟橋、アメリカ軍の拠点を標的に攻撃する権利がある」

14日、UAE東部の港ではドローン攻撃で火災が発生し、石油積載施設の操業が一部中断されました。イラン側は、イランの石油施設が攻撃されれば「アメリカと関連する中東地域のすべての石油・エネルギー施設を破壊する」と警告。石油を“人質”にした圧力を続けています。

要衝ホルムズ海峡“封鎖”続く 日本 石油備蓄の放出開始

イランが事実上の封鎖を続けているのが、“世界の石油輸送の要衝”ホルムズ海峡です。日本も輸入する原油の7割以上がここを通過しており、その影響は甚大です。

記者
「こちらのガソリンスタンドではレギュラーガソリンが185円と高止まりが続いています」

ガソリンスタンドからは“嘆きの声”が聞こえてきます。

給油客
「前回(来た時)が140円くらいだったので、上がり幅がかなり厳しい。結構、死活問題というか、車使う方はかなり困ると思う」

給油客
「今後、続いちゃったら困りますよね」
「お出かけ控えたくなっちゃうというか」
「これからいい時期なんですけどね」

事態長期化への懸念が広がる中、原油価格の指標となるアメリカのWTI原油先物価格は一時、1バレル=100ドルを再び突破しました。生活に欠かせない原油の供給不足に備えて、政府も動き出しました。

木原稔 官房長官
「民間備蓄石油15日分を放出することとしました」

ホルムズ海峡の“封鎖”で、日本に来るタンカーが今月20日ごろから大幅に減る恐れがあり、政府は16日から石油元売り各社に義務付けている備蓄量を70日分から55日分に引き下げました。国内需要の15日分の石油を市場に放出する構えです。

これに続いて、国家備蓄についても今月下旬に国内需要の1か月分を放出します。石油の備蓄放出はロシアによるウクライナ侵攻で原油が高騰した時以来、4年ぶりのことです。

ただ、現在の備蓄量は全部で254日分。“封鎖”がそれより長引けば事態が深刻化することは避けられません。

物流現場に“燃料費高騰”直撃 「走れば走るほどひっ迫」

燃料を大量に使う物流業界にとってコスト負担の増加は“死活問題”です。トラックの主な燃料となるのは軽油ですが…

ミライノ(運送会社) 橋本憲佳 社長
「(1Lあたりの軽油価格が)1か月で約20円上がっています」

この運送会社では、燃料費が全経費の3割を占めますが、価格の急騰に対して有効な対策を打てていないといいます。

ミライノ(運送会社) 橋本憲佳 社長
「運賃は交渉していかないといけないので、この短期間1か月でこれだけ燃料費が上がってしまうと、交渉してもすぐに上げていただけないのが現状」

年度末の繁忙期と価格高騰が重なったことも、経営を苦しめる一因です。

ミライノ(運送会社) 橋本憲佳 社長
「繁忙期にこそ一番燃料を使うので、走れば走るほど経費は増えていく。その分燃料費が高くなるので、経営はひっ迫していく」

依然として不透明な中東情勢。政府は今週19日出荷分から、レギュラーガソリンの価格が170円を超えた部分については、全額補助する方針です。備蓄の放出と補助金は、私たちの暮らしをどこまで支えられるのでしょうか。

ガソリン価格高騰いつまで 民間備蓄や補助金投入も

小川彩佳キャスター:
イラン情勢が長期化しそうだという中で、星さん、この戦争の形が変わってきていますね。

TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
ミサイル戦争から石油戦争という形で、つまりアメリカとイスラエルはミサイルを使って、イランの指導部を叩いてですね、体制転換を狙っていたんですが、イランが非常に強く抵抗して進まないということで、今度はホルムズ海峡を事実上封鎖して、石油を巡る争いになってきたという展開ですね。

藤森祥平キャスター:
まさにその石油の戦争の長期化、先が見えない中で、原油価格が上がっています。政府としてはこの石油の民間備蓄の放出を16日始めました。そして19日にはガソリンの補助金ですよね。一旦落ち着くんですか、ガソリン価格は?

23ジャーナリスト 片山 薫(経済担当):
価格は、補助をすれば落ち着くと思います。総理は就任前の1年間というのが、大体ガソリン価格は178円程度だったと。それより下げて、平均で170円程度に抑制すると話していて、実際タイムラグがあるので、1~2週間後、再来週ぐらいから170円に収まっていくというのは、これはもう国の補助なので、確実なんです。しかし、ガソリンの補助金というのは、当然、税金から出てるわけです。今、大体これからガソリン価格210円ぐらいまではなるだろうと見られるなかで、1か月4000億円の補助をすることになる。これがもし長期化してしまうと、2兆円を超える財政負担になるのではないかと。

藤森キャスター:
政府はいつまでも続けられませんよね。

23ジャーナリスト 片山 薫:
続けることは現実的には可能なんですけれど、やっぱりちょっと別の問題が出てくるかなと。原油高で補助金が増える。これをずっと続けてしまうと、財政悪化が懸念されます。

そうすると、今度は円安が進んでしまうんではないかと。円安になると、今度、原油高がまた続いてしまって、補助金も増やさなきゃいけない。ある意味、補助金がぐるぐる回って負のスパイラルになってしまうんじゃないかと。

藤森キャスター:
だからもうこれは当面、承知の上でまずやるってことですけど…

星浩さん:
ただ一方で、ガソリンは補助するけれども、プラスチック製品などは補助しないというので、不公平じゃないかという声も既に上がっているんです。

小川キャスター:
そうすると片山さん、身動きが取れないままというわけにはいかないですし、何か手を打つことはできるのかどうか。

23ジャーナリスト 片山 薫:
根本的には、ホルムズ海峡から実際に原油が来ないと、根本的な対策はないんですけれども、少しマインドチェンジした方がいいんじゃないかと。

というのも例えば、先ほどの総理の発言というのは、178円より低くしたいという思いですよね。ある意味メッセージとしては、これまで通り使っていいですよというメッセージになりかねないんですけど、本来であれば、もう節約を始める、省エネを始めるというのが必要じゃないかと思っていて、実際に東南アジアでも、例えば出勤日を減らそうとか、あるいはエアコンの設定温度を少し上げようというような動きがある。

それで今まで通り使っていいですよ、価格も全部補助しますよというのは、逆に危機管理上、長く続かない可能性があるので、ややその辺のマインドチェンジが必要ではないかなと思います。

小川キャスター:
その局面に来ていると。

23ジャーナリスト 片山 薫:
少なくとも、今入ってきてないわけですから、やはり最悪の事態を考えた方がいいのではないかと思います。

小川キャスター:
とにかくイラン情勢が収束しないことには、という今の状況ですけれども。星さん、収束に向けた具体的なシナリオというのは?

星浩さん:
石油戦争になったので、トランプさんからするとガソリンが上がって、アメリカで支持率も下がる。このまま11月の中間選挙になったら、大変なことになるというので、おそらくどこかの段階で打ち止め、ここでもうアメリカが勝利したんだという宣言をするタイミングを狙っていると思うんですが、なかなかそれがうまくいかないので、最近になって、日本を含めヨーロッパなどに船を出せと。それによって石油を守るんだと言い始めてきているんですよね。

藤森キャスター:
トランプ大統領は各国に協力を求めていて、その中に名指しで日本も含まれています。ホルムズ海峡への艦船の派遣についてです。国会でも議論がされていますが、日米首脳会談を今週に控える高市総理、一体どんな結論を出すのでしょうか?

高市総理「何ができるか検討中」

ホルムズ海峡が事実上封鎖されてから約2週間。これまでアメリカは、ホルムズ海峡を守るとして、イラン海軍の艦艇を攻撃するなどしてきましたが、トランプ大統領は15日、他の国にも協力を求めたことを明らかにしました。

トランプ大統領
「他国も共に警備してもらいたい。我々も協力・連携する」

艦船を派遣する協力を求めたのは「7か国程度」。その理由について…

トランプ大統領
「ホルムズ海峡を通るアメリカの原油は1%か2%…中国などは約90%がホルムズ海峡経由だ」

アメリカは石油の輸送をホルムズ海峡にほとんど頼っていないため、輸送に使っている国が船舶の護衛をするべきだと主張。

いくつかの国から前向きな反応があったとする一方、複数の国からは「関与を控えたい」という回答があったとしています。

14日には、SNSで日本などを名指しし、「協力を期待する」としていたトランプ大統領。

今週19日に日米首脳会談をおこなう予定の高市総理は、この要請にどう対応するのでしょうか?

無所属(立憲会派) 広田一 参院議員
「日米首脳会談で、米国側から船舶の護衛活動への参加検討を求められる可能性が高いというふうに想定されますけれども、その場合どのように対応するのでしょうか」

高市総理
「まだ求められておりませんので、仮定のことにはお答えしにくうございます。日本の法律の範囲内でございますけども、どのように日本関係船舶、及びその乗員の命を守っていくか、何ができるかということを検討中でございます」

海の上で人命を守る必要があるなどの場合、自衛隊法に基づき「海上警備行動」を発令できる仕組みになっています。

11日には、ペルシャ湾で停泊中だった商船三井の船が被害を受け、現在も、45隻の日本関係の船舶が湾内に取り残されています。  

こうした船を護衛する「海上警備行動」のために、自衛隊の派遣を検討しているか、問われると…

「(法律上)相手方として、国または国に準ずる組織が想定される場合というのは、派遣ができない、こういうことになっております。非常に法的には難しいということです」

小泉防衛大臣も…

小泉進次郎 防衛大臣
「現時点で自衛隊の派遣、こういったことは考えておりません」

トランプ大統領からの正式な要請はあるのか。

16日夜、茂木外務大臣はアメリカのルビオ国務長官と電話会談をおこないました。政府は日米首脳会談を前に、トランプ大統領の真意をつかみ、検討を急ぐ考えです。

自衛隊派遣が「厳しい」ワケ

藤森キャスター:
日本では戦争が継続している地域に、自衛隊を派遣できるケースは法律上限られています。

「存立危機事態」
日本の存立が脅かされる恐れがある場合、武力行使が可能
「重要影響事態」
放置すれば直接攻撃の恐れがある場合、後方支援が可能

高市総理は今の時点で、自衛隊の派遣は「法律的には難しい」という見解をはっきり示していますね。

星浩さん:
まず「存立危機事態」ですが、アメリカ軍とイラン軍が戦争状態になっても、すぐに日本に存立危機が及ぶわけではありません。石油が来なくなるといっても、備蓄は8か月分ほどありますので、すぐには影響しません。

そして「重要影響事態」については、今はアメリカ軍が足りているので、後方支援の需要は当面ありません。

「海上警備行動」もなかなか難しいというのが現状です。

そもそも安全保障法制については、高市総理が師と仰ぐ安倍元総理が「国際法上、認められない行為を行っている国を支援することはない(2015年5月)」と言っています。

今回のアメリカの先制攻撃は、明らかに国際法違反です。これを支援することはできないという答弁があるので、高市総理は「法律的な評価ができない」と言わざるを得ない状況になっています。

小川キャスター:
とはいえ既に日本は艦船の派遣について名指しをされています。トランプ大統領からは、19日に行われる日米首脳会談で、答えを求められる可能性があるわけですよね。

星浩さん:
日本としては「今の法制上なかなか難しい。これから検討させてください」ということですが、トランプ大統領はおそらく日本の法制のことはほとんど知りません。

そのため、「同盟関係なのに何でできないんだ」ということになり、そこで高市総理が立ち往生してしまう可能性もあります。

16日夜の情報では、高市総理から「できるだけ早く停戦した方がいい。停戦すれば、日本の自衛隊も、例えば機雷の掃海といった業務ができる」といったことを提案する予定だそうですが、果たしてそれでトランプ大統領は納得するのかが問題です。

そして、日本は長くイランと良い関係を維持してきましたが、今回、日本が自衛隊を派遣することになれば、イランとの関係は明らかに遮断されます。高市総理の対応によっては、今まで日本が積み上げてきた外交の資産を崩してしまうということになります。

19日の日米首脳会談は、高市総理にとって大変な正念場になると思います。

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<プロフィール>
星浩さん
TBSスペシャルコメンテーター
政治記者歴30年 福島県出身

片山薫
23ジャーナリスト 経済部筆頭デスク
財務省や経産省・農水省などを担当

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