戦禍を逃れて「安全なキャンパス」へ!  約1600匹の保護猫たちが暮らす大学構内 レバノン

2026-03-23 06:00

レバノンにある大学構内には、数多くの保護猫たちが生活しています。多くは戦禍で飼えなくなり捨てられた猫たちです。避妊手術や大学職員の世話を受け、キャンパス内の広大な庭園で新しい生活を送っています。

1600匹が暮らすキャンパス

多くの猫たち

画像はイメージです

レバノンにある「ベイルート・アメリカン大学」には、約1万人の学生がいます。 1866年に宣教師学校として設立された同学は、ベイルートの中心部に広大な土地を所有し、地中海まで広がる広大な庭園が自慢です。

同時にこの大学は、かなりユニークな存在です。というのも、このキャンパスには保護された猫たち1600匹ほどが暮らしているのですから。

大学での猫の保護活動は、1980年代のレバノン内戦中に、ハムラ地区中心部にある同学のキャンパスに戦闘から逃れてきた猫たちが避難してきたことから始まりました。やがてこの活動は、近年の戦争で捨てられた猫たちを保護するプログラムへと発展しました。

「内戦中は大学周辺を含め、いたる所で深刻な市街戦が繰り広げられていました。そのため猫たちはこの大学に大挙して押し寄せたのです。きっと自分たちにとって安全な場所だと考えたのでしょうね。そのまま猫は大学に住み着きました」と話すのは、同学職員のHenry Matthewsさんです。

猫たちには避妊手術を実施

キャンパスにいる猫

画像はイメージです

ベイルートはこれまで多くの戦争を経験してきました。現在も依然として攻撃は続き、人々は家を追われて経済的に困窮し、多くのペットが捨てられました。

「自宅を失い、多くの人が飼い猫を捨てています」というのは、猫を収容するクリニックを経営しているRana Bou Khalil獣医師です。

彼によると、「同学で猫を世話してくれる」と信じた人々が、猫をキャンパスに放つようになりました。このためRanaさんはこの2年間で1000匹もの猫の避妊・去勢手術を行ったのです。

1年ほど前に800匹程度だった保護猫は、現在1200匹から1600匹ほどに増えていると考えられています。でも正確な数はだれにもわかりません。

大学構内に設置されたケージには、子猫たちが収容されています。ほかに高齢猫のケージもあります。ほとんどは元飼い猫だったようで、純血種も含まれています。ペルシャ猫のような長くなめらかな毛並みの猫もいれば、折れ耳のスコティッシュフォールドもいます。

管理人は毎日1時間かけて、広大なキャンパスの庭園のあちこちにドライキャットフードの入った鉢を置いて回ります。クリニックでは猫の里親探しを試みていますが、多くの動物が捨てられている現状ではなかなかうまくいきません。

弱い存在にこそ、やさしく接して

餌を食べる子猫たち

画像はイメージです

猫の世話にかかる経費は寄付金などで賄われており、「学生生活の予算には影響がない」と大学側は話しています。

「地域社会との連携は本学の設立当初からの使命です。大学で猫を飼育することも、その一環なのです。重要なのは、学生や地域社会に他人へのやさしさを教えることです。とくに自分よりも弱い存在、無力な存在にやさしくすることが求められます」と話すHenryさんです。

これほど多くの猫がいると、いくら広大でも、キャンパスが猫であふれると思うかもしれません。でも猫と学生とは、お互いに愛情を注ぎながらうまくやっているようです。

庭園の葉の間から顔を出している猫や、自分の毛色と同じ窓枠に座っている猫、花壇に横たわっている猫など、まるで宝探しをするように「猫探し」が楽しめます。

なかにはサンドイッチをひとくち分けてもらおうと、学生に近づいてくる猫もいます。屋外のテーブルに載って「撫でて」と催促したり、寮の部屋や教室に忍び込んだり授業中に椅子に載ってくる「乱暴者」もいます。

ストレスをやわらげてくれる猫たち

パソコンを使うイスラム教徒の若い女性

画像はイメージです

猫が教室や寮に入ることは禁止されています。でも学生が追い出すのではなく、大学の職員に連絡してやさしく退去させる規則になっています。

学生たちは、授業への対応や家を離れての生活からくるストレスに加え、戦争の脅威にもさらされています。

同学でコンピューターサイエンスを学ぶLayla Shahrurさんは、空爆が続くレバノン南部出身です。彼女はにとって、ストレスを感じたときに心を落ち着かせてくれるのは、猫たちだといいます。

「みんながストレスや恐怖を感じています。そんなときは外に出て猫たちを撫でると、心がやすらぎます」と彼女。

大学の門に刻まれたことばは「命を繋ごう。そしてその命を豊かなものにしよう」(Let them have life and have it more abundantly)。これは人間にとっても、猫たちにとっても、真実であることは間違いありませんね。

出典:In Beirut, Lebanon's cats of war find peace on university campus

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