「私を見て、かーちゃんだよ」目覚めなかった息子 飲酒・信号無視・120キロでひき逃げされ死亡 危険運転致死での起訴求め遺族が署名提出 さいたま地検川越支部

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2026-03-25 12:11

飲酒運転で赤信号を無視、120キロではねて男性を死なせたとされるひき逃げ事件。さいたま地検川越支部は「危険運転致死」ではなく、「過失運転致死」の罪で運転していた男を起訴しました。「あれが過失だなんて」。遺族は署名を集め地検に提出しました。

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いつもの道を通って、自宅へ…。

去年12月22日午前0時すぎ、仲間との忘年会の帰り道。しかし、25歳の森口和樹さんは、両親や2人の兄が待つ大好きな家に帰ることはできませんでした。

母・美智代さんは、警察から「和樹さんが交通事故にあった」と聞き、病院に電話をかけます。

「今しがたまで蘇生試みましたって。だけど、どうしても戻らないので、今しがた中断しましたって言われました。聞いた時、それは何を言ってるか分かってましたけど、やっぱり信じられないので、と言うか信じたくないので、黙っていました。そうしたら先生が『お亡くなりになってますから』っておっしゃったので『わかりました』と」

家族みんなで病院に向かい、ベッドに横たわる和樹さんと対面しました。

「台の上に、なんか眠ってるような顔で横たわってました。私はもう何回も和樹の目をあかんべーするみたいに何回も目を開けて、和樹の瞳に私の顔が映るように。私の顔を見てほしい。何回もかあちゃんだよって言ったけど、もう本当に反応しなかった…」

「ほぼ即死だっただろう」。医師にそう言われたそうです。

現場には、2センチ四方の骨のかけらが落ちていたといいます。それだけの衝撃だったのです。

その夜、何があったのでしょう。

路地を抜けて国道に出た和樹さん。信号の押しボタンを押します。車用の信号が黄色、赤と変わり、手前の車線に停止した車もありました。そして、歩行者用の信号が青に。和樹さんが渡り始めます。そのときでした。中央寄りの車線を、猛スピードで走ってきた車にはねられました。

近所の人が事故の音を聞いていました。

「当時はなんか鈍い音がした。『ドスン』って」
「普通の車の事故だったら『ガシャン』と聞こえる。『グワン』と鈍い音が。大きな音だったんです」

警察や目撃者によると、ブレーキ痕はなく、制限速度を60キロオーバーするおよそ120キロで衝突。和樹さんは3、40メートル前方に飛ばされ、車はそのまま走り去りました。信号無視をして、ひき逃げ…。

それから2時間半後、4キロ離れた同じ国道沿いで、前方が破損した車が見つかりました。運転していた男からはアルコールが。

阪元昊被告。酒気帯び運転やひき逃げ、そして最長20年の拘禁刑に問われる危険運転致死の疑いで警察に逮捕されました。

阪元被告は「事故を起こして逃げたことは間違いないが、信号については覚えていない」と供述しました。

ところがその後、美智代さんの元に意外な情報が入ります。検察が危険運転ではなく、刑罰が比較的軽い過失運転致死の罪で起訴したという知らせでした。

「あれが危険じゃない…、危険運転って言われないって言うんだったら、何が危険運転なんですかと本当に聞きたい」

危険運転に問える条件としては、▼車を制御するのが困難なスピード、▼赤信号をことさらに無視、▼アルコールで正常な運転が困難などが設けられています。

今回は、いずれにもあたらないと検察が判断したとみられます。

あいまいともとれる危険運転の条件については見直しが進んでいて、今後、法改正が行われる見込みです。一般道で制限速度を50キロオーバー、呼気に0.5%のアルコールなど、ある数値を超えると危険運転が適用される見通しです。

和樹さんの事故当時、この改正法が施行されていれば、危険運転で起訴されたかもしれない。美智代さんにはそんな思いも…

「悔しくないと言ったら嘘になりますね」

美智代さんら遺族は、危険運転致死での起訴を求めて4万7000筆余りの署名を集め、きょう、さいたま地検川越支部に提出しました。

「私たちができないことをされているお仕事の方々が、きちんと向き合ってくれることを願っています。ちゃんと対応してくれることを信じてます」

信号をしっかり守っていたのに事故に遭ってしまった和樹さん。なぜ赤信号で渡ってはいけないのか?和樹さんら兄弟が幼い頃、美智代さんはこう言って聞かせたそうです。

「ルールを破ると、誰かが傷ついてしまうからなんだよ」と。

「もし、お前が飛び出して轢かれちゃったら、轢いた人は多分お前を轢いたってことをずっと背負っていくんだと思って言ったことがあります。だから、赤だから駄目とかそういうことじゃなくてって、お互いを守るために守ってほしいと」

「お互いを守る」。美智代さんがかけた言葉はちゃんと届いていました。和樹さんら兄弟が、大人になっても、辛抱強く信号を待つ姿を美智代さんは何度も目撃していました。近所の人から「信号しっかり待ってたよ、偉いね」と報告されることもあったといいます。

和樹さんは、車の免許を取ろうとしませんでした。

「運転していると、ほぼ毎日救急車にあいますよね。私が車でよける様子を同乗していた和樹が見ていて、俺、運転は向かないから免許とらないって、救急車の邪魔をしちゃうんじゃないか、心配だからって」

美智代さんが好きな和樹さんの写真があります。2人で初日の出を見に散歩に出たときの写真。

「和樹と私2人っきりだし、やっぱりね、付き合ってくれる息子なんてそうそういないじゃないですか。うん。嬉しいというか」

穏やかで優しかった和樹さんの死を惜しみ、遺族をいたわる手紙が、署名とともにたくさん届きました。美智代さんは言います。

「今まで通り自分の歩き方で、自分の身の丈でコツコツと地道に一歩一歩行ったと思うんですよ。それで本人が幸せだったら十分なわけなので、邪魔してほしくなかったなっていうのは思います。私達にできることを最後まで精いっぱいしてあげたいなって」

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