インド出身者が800人以上暮らす横浜・霧が丘。世代・国籍関係なく立ち寄れる団地カフェのいま

1979年に大規模な宅地開発が始まった横浜市緑区の霧が丘地区。開発から40年以上が経ち、地域の少子高齢化が進む一方、廃校になった小学校の校舎にインド系の国際学校が入ったこともあり、800人を超えるインド出身者が暮らしています。
言葉や文化を超えてつながる
その霧が丘地区の中心は分譲と賃貸、2000戸以上の「霧が丘グリーンタウン」ですが、5階建て集合住宅の1階にある商店街の中に3年前、団地のカフェ「ぷらっとkiricafe(キリカフェ)」がオープンしました。
「ぷらっとkiricafe」ではカフェメニューの他、日替わりでランチがあり、月曜日はカレーなどスパイスを効かせたメニューです。主にシニア世代のボランティアスタッフが、近くに住むフィリピン出身の川口グロリアさん、インド出身で霧が丘に暮らすラミヤ・ラジャセカンさんと一緒に作っています。
厨房の中をのぞくと、スタッフの間では日本語と英語が入り混じって飛び交い、笑い声も絶えません。
もうひとつの家「kiricafe」
来日して4年、日本語はまだ上手く話せないラミヤさんに話を聞くと「キリカフェはとてもフレンドリーな場所で、日本語を覚えるのも楽しみです。最初、東京に暮らしていた時は友達ができませんでしたが、ここ霧が丘では友達ができました。キリカフェはもうひとつの家のようなものです」と話します。
キリカフェではこの他、外国籍の人向けの日本語教室や、インド出身の女性が先生を務め、小学生たちに教える英会話教室も開かれています。
世代を超えた交流も
金曜日の午後はシニア世代向けの介護予防活動が行われています。取材で訪れた日は雨が降ったりやんだりで、学校帰りの小学生たちが雨宿りでキリカフェに立ち寄り、介護予防の脳トレが開かれている横で、ゲーム機で遊んでいました。
脳トレではちょうど「ランドセルはオランダ語が起源」というクイズの答え合わせをしていたので、キリカフェを運営するNPO法人「霧が丘ぷらっとほーむ」の共同代表・根岸あすみさんがその問題を小学生たちにも出しました。「フランス!」「アメリカ!」といろんな答えが飛び交う中、シニア世代が「オランダ!」と正解を教えていました。
キリカフェではこの他、シニア向けの食事会や健康麻雀にヨガ教室、歌声喫茶のような「うたごれのれん」などが定期的に開かれています。中には参加者でもありカフェ運営を手伝っている人もいて、介護予防活動の参加者の一人の女性は「朝夕、カフェの清掃のボランティアをしています。今メンバーが8人ぐらいいるんですけど、3年間変わらず、ずっとやってるんです」と話します。
もう一人の女性は「家にいたんじゃ誰とも会わない。色々こういうところに出向かないと、人には会えないですから、来ています。ここにはここの違う仲間がいるんです」と話していました。
また「うたごえのれん」で盛り上がっていた一人の男性は「ここは最高ですよ。仲間がいっぱい増えるし、暇な時はぷらっと立ち寄れるから」と話し、もう一人の男性は「この場所に来れば何かがあるということで、世代を問わず、幼稚園ぐらいから、70、80、90までが集える場所ですよ」と話してくれました。
ママ友から始まった助け合いの輪
NPO法人「霧が丘ぷらっとほーむ」の共同代表、根岸あすみさんと武藏幸恵さんは元々、保育園のママ友同士で知り合い、助け合いの中から子育て世代の支援、交流の活動を始めました。
そこにシニア世代の団体、外国籍の住民との交流団体が一緒になり、2022年にNPO法人が生まれ、2023年1月、「ぷらっとkiricafe」を始めたんです。キリカフェでは英会話教室のほか、乳幼児のいる親子の居場所や、放課後に学べる場として学習支援活動などが開かれています。
雨宿りがてらで立ち寄った一人の小学6年の男の子は「ご飯がおいしそうだから好きです。みんなが優しくて、みんなで賑わってみんなで楽しいところなので、なんかネバーランドみたいです」と話していました。
共同代表の武藏さんは「3年たって少しずつ、子供から、あるいは外国の方から、『困ったので助けてください』とか、子供たちが『のど乾いちゃった。お水飲みたい」って言って寄ってくれたりっていう形で、日常の中で、困った時に行く場所があるという風になってきました』と話します。
キリカフェが描く「多文化共生」の未来
「ぷらっとkiricafe」で生まれたつながりから、地域の中に小さなつながりの輪がたくさん生まれ、最終的には「霧が丘」という地域全体が、困った時は助け合える、住みよい街になることを目指し、約60人の住民のボランティアと共に運営されています。
武藏さんは「最近、インドネシアの出身者も増えてきました。シニア世代、子育て世代も、届けたい先にまだ実際に届いていない支援もある」と話す一方で、「中学生、高校生が立ち寄れる企画を考えて、若い人の発想、力を活動に取り入れたい」とも話していました。
(TBSラジオ「人権TODAY」担当: 崎山敏也記者)