【京丹波町×一橋大学】学生たちが描いた “帰りたくなる町” の風景とは

2026-05-19 08:00

最近は、観光地を巡るだけではなく、「また行きたくなる場所」や「もう一度会いたくなる人」がいる地域に惹かれる人も増えているように感じます。

京都府京丹波町で公開された観光動画「帰りたくなるまち ー京丹波町ー」は、そんな“人と地域の距離感”をテーマにした作品です。制作を担当したのは、一橋大学の学生たち。実際に京丹波町へ何度も足を運び、地域の人たちと関わりながら、自分たちが感じた空気感や時間の流れを一本の映像に落とし込んでいます。

印象的なのは、ただ観光スポットや名産品を紹介する動画ではないということです。映像の中で描かれているのは、「この町でどんな時間を過ごしたのか」「なぜもう一度訪れたくなるのか」という感情の部分。どこか懐かしさを感じる風景や、人との自然な距離感が重なり、“帰りたくなる”というタイトルの意味が少しずつ伝わってきます。

行政・大学・地域が一緒になって作り上げた今回のプロジェクトは、これからの観光のあり方を考える上でも興味深い取り組みと言えそうです。

なぜ今「帰りたくなる町」が必要だったのか

観光地の動画というと、絶景やグルメ、人気スポットをテンポよく紹介するイメージを持つ人も多いかもしれません。ですが、京丹波町が今回目指したのは、そうした“観光地紹介”だけではない新しい地域との関わり方でした。

京丹波町ではこれまで、「観光で一度訪れて終わり」ではなく、その後も地域とゆるやかにつながり続けてくれる人を増やす取り組みを進めています。近年は「関係人口」という言葉も広がっていますが、単に移住者を増やすだけではなく、「また行きたい」「あの人たちに会いたい」と思ってくれる存在を地域の中に増やしていこうという考え方です。

その背景には、観光客の流れが一部の人気スポットに集中しやすいという課題もありました。せっかく町全体に豊かな自然や食、人の魅力があるにも関わらず、限られた場所だけを巡って帰ってしまうケースも少なくなかったそうです。

確かに最近は、“有名な場所を効率よく回る旅”よりも、その土地ならではの空気や人との出会いを求める人も増えているように感じます。SNSで見た景色をなぞるだけではなく、「そこでどんな時間を過ごしたか」が旅の印象として残る時代になってきているのかもしれません。

そうした中で京丹波町が注目したのが、都市部の大学生たちの視点でした。
2023年から一橋大学と共同でタウンプロモーションに関する調査研究を進めてきた京丹波町は、学生たちが地域へ実際に入り込み、人と関わりながら魅力を見つけていく形を大切にしてきました。今回の動画制作も、その流れの中で生まれたプロジェクトです。

ただ外から「地域をPRする」のではなく、地域の中で過ごし、感じたことを言葉や映像にしていく。そこには、従来の観光プロモーションとは少し違う温度感があります。
実際に今回の動画タイトルにもなっている「帰りたくなるまち」という言葉には、“観光地としてまた来たい”という意味だけではなく、“どこか懐かしく感じる場所”として心に残る感覚も込められているように感じます。

町を消費するのではなく、町との関係を少しずつ育てていく。そんな考え方が、今回のプロジェクト全体に流れている印象です。

東京の大学生が京丹波町で感じた“人のあたたかさ”

今回の動画制作で中心となったのは、一橋大学商学部データデザインプログラム(DDP)4期生による「京丹波ムービーチーム」です。

学生たちは、シナリオづくりから映像表現までを自分たちで担当。京丹波町役場やNPO法人京丹波イノベーションラボと連携しながら、現地でのフィールドワークやインタビューを重ね、作品を形にしていきました。
興味深いのは、“観光地を紹介するための取材”というよりも、実際に地域の中へ入り込み、人や風景と関わりながら制作が進められている点です。

学生コメントの中でも印象的だったのが、「有名な観光スポットを巡るだけでは出会えない人々のあたたかさや、懐かしさを感じる空気感」という言葉でした。
旅行というと、つい「どこへ行くか」に意識が向きがちですが、本当に記憶に残るのは、その土地でどんな人と出会い、どんな時間を過ごしたかだったりします。 京丹波町での体験を通じて、学生たちも“観光とは場所を見ることだけではない”と感じたそうです。

実際、今回のプロジェクトでは、地域の人たちとの距離感がかなり大切にされていたように感じます。何度も現地へ足を運び、その土地の空気を知り、会話を重ねる中で見えてきたものを、映像や物語に落とし込んでいったとのこと。
だからこそ、単なる「学生が作った観光動画」というより、“学生自身が地域との関係を築いていく過程”そのものが、このプロジェクトの魅力になっているのかもしれません。

また、東京で暮らす大学生だからこそ感じた“新鮮さ”も、今回の映像には大きく影響しているようです。
京丹波町には、派手なテーマパークがあるわけではありません。ですが、自然の中を流れるゆったりした時間や、人との距離が近いコミュニケーション、地元食材の豊かさなど、都市部ではなかなか得にくい感覚があります。

学生たちが感じた「なんだか落ち着く」「また来たくなる」という感覚は、今の時代、多くの人の心に響く感覚なのかもしれません。

タイトルに込められた「帰りたくなるまち」という言葉には、“故郷のような場所にまた戻りたくなる気持ち”と、“京丹波町での体験を通して、自分の日常へ前向きに戻っていく再出発”という2つの意味が込められているそうです。

単なる地域紹介ではなく、人の感情や記憶に寄り添うようなテーマになっているところに、今回のプロジェクトの特徴が表れているように感じます。

「帰りたくなるまち」はどんな動画?

【一橋大学×京丹波町】京丹波町観光プロモーション動画「帰りたくなるまち ー京丹波町ー」

今回公開された動画「帰りたくなるまち ー京丹波町ー」は、一般的な観光PR映像とは少し雰囲気が異なります。映像の中心にあるのは、“観光地を巡る楽しさ”というよりも、「この町でどんな時間を過ごしたのか」という感情の部分です。

動画では、喧嘩をしていた親子が、それぞれのきっかけで京丹波町を訪れ、地域での体験を通じて少しずつ距離を縮めていく姿が描かれています。
派手な演出で盛り上げるというより、自然の風景や町の空気感、人との触れ合いの中で、ゆっくりと気持ちが変化していく構成になっているのが印象的です。

また、実写映像にアニメーションを組み合わせている点も今回の特徴のひとつ。リアルな景色の中に物語性を加えることで、“ただ景色を見る動画”ではなく、“感情を追いかける作品”として仕上げられています。

最近は、観光動画も短くテンポの速いものが増えていますが、今回の作品は少し違います。
「この場所には、どんな空気が流れているんだろう」
「ここで過ごす時間って、どんな感じなんだろう」
そんなことを自然と考えたくなるような、余白のある映像になっています。
特に印象的なのは、“何か特別なイベントが起きるわけではない”ところかもしれません。

誰かと話をしたり、景色を眺めたり、美味しいものを食べたり。そうした何気ない時間の積み重ねが、「また戻ってきたい」という感情につながっていく様子が丁寧に描かれています。
京丹波町が今回の動画で伝えたかったのも、まさにそうした“地域との関わり方”なのではないでしょうか。
「どこに行ったか」だけではなく、「そこでどんな気持ちになったか」が残る旅。
そんな価値観が、この動画全体から伝わってくるように感じます。

また、学生たちが実際に地域へ足を運びながら制作しているからこそ、映像の中にも“作られた観光感”が強く出すぎていないのも印象的です。 有名スポットを並べるだけではなく、人との距離感や、町に流れる穏やかな時間まで含めて表現しようとしているところに、この作品らしさがあります。

学生・先生・町長が語った“地域との関係”

一橋大学商学部4年生 宮下莉子さん 中澤莉子さん 山口純佳さん

今回のプロジェクトでは、学生・大学・行政、それぞれの立場からコメントが寄せられていました。

その中でも特に印象的だったのが、「地域との関係性」に対する考え方です。
学生代表コメントでは、京丹波町での体験を通じて、「観光とは単に場所を訪れることではなく、人や地域との関係の中で生まれるもの」だと感じたと語られていました。
実際、今回の動画制作では、学生たちが何度も現地へ足を運び、地域の人たちと交流しながら制作を進めていったそうです。

その過程で感じた“人のあたたかさ”や“懐かしさを感じる空気感”が、映像にも反映されているのかもしれません。
また、タイトルの「帰りたくなるまち」には、“京丹波町へまた戻りたくなる気持ち”だけではなく、“日常へ前向きに戻っていく再出発”という意味も込められているとのこと。

一橋大学の鷲田祐一教授も、「京丹波町がまるでふるさとのように感じられるストーリーになった」とコメントしています。

さらに京丹波町の畠中町長は、今回の動画について、「どこへ行くか」ではなく、「どのような時間を過ごすか」という視点から地域との関わり方を表現した取り組みだと語っています。

学生たちが地域の中で感じた空気や時間の流れを通じて、京丹波町の新しい魅力が形になったプロジェクトと言えそうです。

「また来たい」で終わらない町へ

観光というと、「有名な場所へ行く」「写真を撮る」「美味しいものを食べる」といったイメージを持つ人も多いかもしれません。
ですが今回の「帰りたくなるまち ー京丹波町ー」は、それだけではない、“地域と人との関係”に目を向けた作品でした。
学生たちが実際に町へ足を運び、人と出会い、地域の空気に触れる中で感じたことを映像にしているからこそ、単なる観光PR動画にはない温度感が生まれているように感じます。

また、京丹波町側も、「一度来てもらうこと」だけではなく、「また関わりたくなる地域」を目指している点が印象的でした。
どこへ行くかより、誰と過ごしたか。
何を見たかより、どんな気持ちになったか。
そんな価値観が少しずつ広がっている今だからこそ、今回のプロジェクトに共感する人も多いのではないでしょうか。

今後は、町内観光施設での上映なども予定されているとのこと。今回の動画をきっかけに、京丹波町という地域に新しく興味を持つ人が増えていきそうです。


京都府京丹波町 概要

京丹波町 は、京都府中央部の丹波高原エリアに位置する自然豊かな町です。町の約8割を森林が占め、昼夜の寒暖差や丹波霧など、農作物が美味しく育つ環境に恵まれています。京丹波栗や黒豆、丹波松茸など“丹波ブランド”の特産品でも知られ、豊かな食文化を支える地域としても注目されています。

公式サイト:https://www.town.kyotamba.kyoto.jp/

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