あなたは今、投資をしていますか?~TBSの専門家が分析「データからみえる今日の世相」~【調査情報デジタル】

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2026-05-23 09:00
あなたは今、投資をしていますか?~TBSの専門家が分析「データからみえる今日の世相」~【調査情報デジタル】

先日、非常な株高についてのニュースがありました。今年(2026年)の5月13日、「日経平均株価は6万3272円11銭で取引を終え、終値ベースで初めて6万3000円台に乗せた」(2026年5月14日朝日新聞)とのこと。

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日経平均株価が「初めて3万円台に到達したのは1980年代のバブル期」(2023年5月18日朝日新聞デジタル)。89年12月29日の3万8915円87銭(終値、以下同様)という記録はその後34年間破られず。

日本の景気が伝説的によかった80年代のバブル期でも3万円台だった株価。それが24年(2月22日、3万9098円68銭)に更新されると、その年のうちに4万円台、翌25年に5万円台と、あれよあれよと大台を突破。

筆者はバブル期に学生で、株価の動向を気にした記憶はほとんどありませんが、世の中の浮かれた気分や高揚感は印象にあり。それに比べて昨今は、世界中で戦争や紛争が絶えず、石油も手に入りにくくて物価も高く、毎日気詰まりな感じ。

でも、株価がバブル期をはるかに超えたなら、株を持っている人はさぞかし潤っていることだろうと想像。世の中も「株を持っていたらなあ」とか「株を持ちたいなあ」とかいった気持ちが強まっているのでは?

やや下世話な話ながら、一体、今、誰がどうやって潤おうとしているのか。そこが知りたくて、今回は、株券や投資信託などの資産についての意識や人々の行動の動向をデータで探ってみます。

今ほしいのは「有事の金」、そして株

当コラムでよく取り上げるTBS生活DATAライブラリ定例全国調査(注1)では、仕事や人間関係、娯楽など、日常身辺の様々な事柄から、現在関心を持っているものを複数選ぶ質問を長期にわたって実施。そのなかの「預貯金・収入・利殖」という選択肢(以下「利殖など」)に注目して、お金を貯めたり増やすことへの関心を追いかけました。

と、その前に1つご注意。この「日常身辺の関心事」、ふつうにいくつでもあてはまるものを選んでもらうと、あれもこれも選ばれて「何でも関心あり」になりがち。そこで、回答にメリハリをつけるために「3つまで選択可」(three Answersの略で「3A」)とすることもあります。

TBS生活DATAライブラリ定例全国調査では基本は3Aながら、「いくつでも選択可」(multiple Answersの略で「MA」)の時期もありました。次の折れ線グラフに示した96年以降の結果では、数字の出方がまったく違うことが一目瞭然(注2)。併せて、2004年以降、MAで調べている「あなたがほしいと思うもの」のなかから、各種の金融資産などの選択率推移も示してみました。

「利殖など」は、MAだった00年~04年の選択率から、当時ならふつうに尋ねれば3人に1人くらいが関心ありと答える話題と考えられます。これを3Aに絞ると、MA直前の90年代後半に1割ほどだったのが、05年以降は2割に上昇。これが19年に急増して、現在は3割弱で推移。

2019年は、老後の生活資金不足という「老後2000万円問題」が取り沙汰され(注3)、それまで8%の消費税率が10%に上がった年。人々が収入の不足や支出の増加を、そして「利殖など」を強く意識した年といえます。

では、人々はどうやって資産を形成したいと思っているのか。

実際に保有できるかどうかはともかく、最も「ほしい」と思われているのは11年から選択肢に加わった「金・プラチナ」で、22年に急上昇。

22年は、ロシアのウクライナ侵攻が始まり、その影響で原油や天然ガス、穀物などのエネルギー・資源価格が高騰して、世界的なインフレが進行。加えて日米の金利差を背景に猛烈な円安も進行(年初の115円付近から、一時151円台まで下落)。そこで、いわゆる「有事の金」意識がドンドン高まっていく様が、如実にグラフに現れている模様。

金・プラチナの次に人気なのが、23年から急上昇の「株・株券」。

23年は、翌24年1月に新NISA(少額投資非課税制度)開始を控えた年で、「低金利の預貯金だと物価上昇で実質目減りしてしまうため、積極的な資産増加を考えるべき」という投資機運が高まったのかも。

そうした機運は「投資信託」や「外貨預金」の選好も押し上げた模様ながら、株ほどのメジャーな人気はない感じ。この期に及んで数字がほとんど変わらない「国債・地方債」は視野にも入っていなさそう。

投資信託の所有に伸び

一方、「ほしいもの」ではなく、回答者の世帯で「所有しているもの」に目を転じると、また違った動きが見えてきました。

家電など様々な商品の所有をMAで回答する「世帯所有」質問では、金融資産の選択肢はそれまで「株券・社債などの有価証券」だけだったのが、04年以降「株・株券」「投資信託」「国債・地方債」に三分割。その推移を「利殖など」への関心と並べたのが次の折れ線グラフです。

選択肢が1つだった90年代後半~00年代前半は、「有価証券」の所有率が2割弱でやや減少傾向。この流れを汲んだか、04年以降の「株・株券」は18年前後に1割程度まで下がったものの、近年若干持ち直し気味。先のグラフで示した「ほしさ」の高さに比べ、実際の株・株券保有は限られている様子。株取引はハイリスク・ハイリターンで、手を出しがたい印象もあるからでしょうか。

一方、昨今伸びている「投資信託」は「ほしい」割合と所有率の推移がほぼ一緒。プロに運用を任せる投資信託は、リスクとリターンが株よりマイルドで、ほしい人・世帯が所有している、ということなのかも。

「国債・地方債」も「ほしい」割合と所有率の推移がほぼ一緒ながら、投資信託と違って数字の伸びは見られず。

男性ミドルの旺盛な投資意欲

先ほどの折れ線グラフで、近年は株・株券や投資信託の世帯所有が増加傾向にあり、国債・地方債は低調なことが示されました。そうした金融資産を所有しているのは、どんな属性の回答者世帯なのか。時間的な変化も見るために、04年と25年で性年代別の集計結果を比較してみたのが以下の棒グラフです。

基本的に投資はお金に余裕がある人がやることで、若年層よりも資金がありがちな年配層が金融資産も所有しがち。

そうしたイメージに合うのが「株・株券」で、男女とも上の年代ほど所有率が高い傾向が見てとれます。さらに、男性20~50代では25年の所有率が04年を上回っており、昨今の投資気運が現れている様子。

一方、女性40~60代では25年の株・株券所有率が04年より下がっていますが、その分、投資信託が伸びている感じ。

投資信託の伸びは男性30~50代でいっそう顕著で、04年は3~4%だったものが25年には10pt以上増加。旺盛な投資意欲がうかがえます。

他方、国債・地方債はここでも低調で、04年に女性50~60代などで1割前後だった所有率が、25年には激しく目減りする有様。投資の選択肢として、国債・地方債はあまり魅力的に思われていない印象です。

でも、株・投資信託は持っていない人がほとんど

最後に、やっぱり「投資はお金に余裕がある人がやること」なのかを確かめたく、世帯月収ランク別に株券と投資信託の所有状況を集計。

 結果の帯グラフを見ると、全体では17%の株券・投資信託所有率(どちらか一方または両方所有の合計)は、世帯月収ランクが上がるほど増加。月収60万円超の高ランク層では実に31%に達する一方、世帯月収を回答しなかった層では13%と、大きな差が開いています(注4)。お金のある層のほうが投資をしているのは確かなことのよう。

世界中で戦争や紛争が絶えず、石油も手に入りにくくて物価も高い。手持ちの資産も、積極的に増やすことを考えないと、ただ持っているだけでは目減りするばかり。これは誰でも思うこと。

最高値更新中の株ならリスクを取って大儲け、手堅くいくなら投資信託。出来れば現物資産の「有事の金」もほしい。これも誰でも願うこと。

しかし、実際に株券や投資信託を所有しているのは全体の2割弱、世帯収入高ランク層でも3割。元手とやる気が揃うと投資が始まる気がしますが、今のところ、両方揃っているのはまだ少数の模様(注5)。

振り返れば、1980年代後半のバブル期も投資への関心が高かったと思いますが、その動機は純粋に「儲けたいから」だった気がします。昨今は「そうしないと生活が苦しくなるから」という要因が加わっていて、世間にはバブル期のような浮かれた気分など皆無。生活が思うに任せない昨今の日本の状況は、ギャンブルのような投資ではなく、地に足の着いた投資による蓄財が根付く土壌になるのかも!?

注1:TBS生活DATAライブラリ定例全国調査は、TBSテレビをキー局とするテレビの全国ネットワークJNN系列が、1970年代から毎年実施している大規模ライフスタイル調査です。同じ回答者にメディア行動や価値観、個人材・世帯財の購入などを総合的に調査するシングルソースデータです。1999年までは5月と10月の年2回、2000年以降は11月の年1回実施されています。対象者は13歳~69歳男女ですが、資産の話を扱う今回は20歳~69歳で集計しています。

注2:同じ質問・選択肢でも、選択可能な回答数によって結果が大きく異なることについて、本コラムで以前取り上げました(調査情報デジタル、2024年7月20日公開)。

注3:2019年6月に、金融庁・金融審議会「市場ワーキンググループ」が公表した報告書「高齢社会における資産形成・管理」に、高齢無職の夫婦世帯は老後30年間の生活資金が2,000万円程度不足するという試算が掲載されました。「このことから老後2000万円問題が話題になり、多くの人が自身の老後に向けた資産形成や生活設計を見直すきっかけ」となったそうです(ウィキペディア)。

注4:それぞれの帯グラフで、「株券・投資信託の両方所有」「株券のみ所有」「投資信託のみ所有」「所有なし」の集計結果を小数第一位で四捨五入した数値を表示しています。そのため、合計が100%にならない場合があります。また、本文中の「どちらか一方または両方所有」の合計は、元の集計結果を合計した後で小数第一位を四捨五入しており、グラフに表示された数値の合計とは一致しない場合があります。

注5:ここでは話を簡単にするために株・株券や投資信託の所有だけに注目しています。もちろん投資は、株・株券や投資信託だけでなく、保険や外国為替なども含めた金融商品や、「有事の金」に土地・不動産など現物の取引などでも行われています。

引用・参考文献
●江利川滋「データからみえる今日の世相~「いくつでも、お答えください」にどう答えるか」(調査情報デジタル、2024年7月20日公開)
●金融庁 金融審議会「市場ワーキンググループ」報告書の公表について
●「老後2000万円問題」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』2025年2月25日(火) 05:52 UTC

〈執筆者略歴〉
江利川 滋(えりかわ・しげる)
1968年生。1996年TBS入社。
視聴率データ分析や生活者調査に長く従事。テレビ営業も経験しつつ、現在は法務・コンプライアンス方面を主務に、マーケティング&データ戦略局も兼務。

【調査情報デジタル】
1958年創刊のTBSの情報誌「調査情報」を引き継いだデジタル版のWebマガジン(TBSメディア総研発行)。テレビ、メディア等に関する多彩な論考と情報を掲載。原則、毎週土曜日午前中に2本程度の記事を公開・配信している。

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