九州工業大学が挑む超小型衛星「VERTECS」 宇宙の歴史を探る大学の挑戦

2026-05-29 08:00

宇宙開発というと、どうしてもNASAやJAXAなどによる大規模な宇宙プロジェクトを思い浮かべる人も多いかもしれません。ですが今、大学から宇宙へ挑む研究が少しずつ広がっています。

そのひとつとして注目を集めているのが、九州工業大学らが開発を進める超小型衛星「VERTECS(バーテックス)」です。約10cm×20cm×30cmというコンパクトな機体に、宇宙の歴史を探るための観測技術が詰め込まれているといいます。

今回、九州工業大学では、このVERTECSのお披露目会を開催。クリーンルーム内で衛星本体も公開され、大学発の宇宙研究がいよいよ宇宙へ向かおうとしている空気感が伝わる内容となっていました。

“宇宙の始まり”や“星が生まれてきた歴史”を、小さな衛星で探ろうとする挑戦。そこには最先端技術だけでなく、「宇宙をもっと知りたい」という純粋なロマンも感じられます。今回は、そんなVERTECSプロジェクトの概要や、お披露目会の様子について紹介します。

九州工業大学が挑む「VERTECS」プロジェクトとは

九州工業大学が開発を進めている「VERTECS(バーテックス)」は、“超小型衛星”という形で宇宙の謎に挑もうとしているプロジェクトです。
VERTECSは、約10cm×20cm×30cmというコンパクトなサイズの衛星です。手荷物ほどのサイズ感でありながら、その内部には宇宙を観測するための技術が詰め込まれています。

この衛星が目指しているのは、「宇宙背景放射」と呼ばれる光の観測です。少し難しく聞こえますが、簡単に言えば“宇宙に残り続けている昔の光”を調べる研究になります。
宇宙には、星や銀河が生まれる過程で放たれてきた光が存在しているとされており、それらを観測することで、「宇宙がどのように現在の姿になったのか」を探る手がかりになると考えられています。
つまりVERTECSは、単なる小型衛星ではなく、“宇宙の歴史を読み解くための挑戦”でもあるのです。

今回のプロジェクトは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が進める「JAXA-SMASH」という取り組みの中で採択され、開発が進められてきました。大学による超小型衛星開発を後押しするプロジェクトのひとつであり、研究機関や企業と連携しながら宇宙利用を広げていくことも目的のひとつとなっています。

近年は、衛星技術の小型化によって、以前よりも多くの大学や研究機関が宇宙開発へ参加しやすくなってきています。そんな流れの中で誕生したVERTECSは、「大学から宇宙へ挑戦する時代」を象徴する存在のようにも感じられます。

また、“可視光”を使って宇宙背景放射を観測するという点も、このプロジェクトの特徴のひとつです。私たちが普段目にしている光に近い波長を利用しながら、宇宙初期から現在までに放たれてきた光を観測することで、星や銀河がどのように形成されてきたのか、その歴史を解明しようとしています。 宇宙研究というと、どうしても遠い世界の話に感じてしまいがちです。しかし今回のプロジェクトには、“小さな衛星でも宇宙へ挑戦できる”という時代の変化や、研究者たちの夢、そして未来への可能性が詰まっているように感じられました。

VERTECSプロジェクト参画機関

【JAXA-SMASH参画機関】

  • 九州工業大学
  • JAXA宇宙科学研究所(ISAS)
  • 関西学院大学
  • 東京都市大学
  • 金沢大学
  • 東京科学大学
  • 福井大学
  • 株式会社コシナ
  • セーレン株式会社
  • 株式会社イメージ・テック

【国際共同研究機関】

  • 國立清華大学
  • 國立中興大学

お披露目会で公開された“未来へ向かう衛星”

2026年5月14日、九州工業大学 戸畑キャンパスでは、超小型衛星「VERTECS」のお披露目会が開催されました。会場ではプロジェクト概要の説明に加え、クリーンルーム内で衛星本体も公開され、宇宙開発が少しずつ現実として進んでいることを感じさせる場となっていました。

当日は、革新的宇宙利用実証センターの北村健太郎センター長による挨拶に続き、大学院工学研究院 宇宙システム工学研究系の佐野圭助教がプロジェクトについて説明。研究内容だけでなく、VERTECSが目指している挑戦についても紹介されました。
特に印象的なのは、“大学発の衛星プロジェクト”でありながら、実際に宇宙へ向けた打上げ段階まで進んでいる点です。

宇宙開発というと、一般の人からするとどこか遠い存在に感じられることも少なくありません。しかし今回公開された写真からは、研究者たちが実際に手を動かしながら開発を進めてきた空気感や、「本当に宇宙へ送り出す」という現実味も伝わってきます。
また、公開されたVERTECS本体は、想像以上にコンパクトなサイズ感です。それでも内部には観測機器や制御システムなど、宇宙空間で運用するための技術が凝縮されています。限られたサイズの中に多くの技術が詰め込まれていることを考えると、超小型衛星開発の奥深さも感じられます。

今回のお披露目会では、クリーンルーム内の様子も公開されました。クリーンルームは、人工衛星のような精密機器を扱うために、空気中の微細なホコリなどを極力抑えた特別な空間です。宇宙へ送り出す衛星だからこそ、わずかな異物混入も避ける必要があり、こうした環境の中で慎重に作業が進められています。
普段なかなか目にすることのない研究現場が公開されたことで、“宇宙研究の裏側”を少し身近に感じた人もいたのではないでしょうか。

さらに今回のプロジェクトには、単なる研究開発にとどまらない魅力もあります。宇宙開発という大きなテーマに、大学や研究者たちが挑戦し続けていること自体が、多くの学生や子どもたちにとって夢や憧れにつながる存在になっているようにも感じられます。 「宇宙は特別な人だけのものではない」――。VERTECSのようなプロジェクトには、そんなメッセージも込められているのかもしれません。

H3ロケットで宇宙へ VERTECSが挑む“次のステージ”

北村 健太郎 センター長

VERTECSは、完成して終わりではありません。今後は衛星の引き渡しを経て、2026年6月10日に予定されているH3ロケット6号機によって打ち上げられる予定となっています。

つまり、九州工業大学で進められてきた研究や開発が、いよいよ本当に宇宙へ送り出されようとしているのです。
今回使用されるH3ロケットは、日本の新たな主力ロケットとして期待されている存在です。これからの日本の宇宙輸送を担うロケットとして注目されており、人工衛星や探査機などを宇宙へ運ぶ役割を担っています。

そのロケットに、大学による超小型衛星が搭載されるという点にも、大きな意味があるように感じられます。
かつて宇宙開発は、一部の国家機関や巨大プロジェクトだけが関わる特別な世界というイメージが強くありました。しかし現在は、衛星技術の進化や小型化によって、大学や研究機関による挑戦も広がり始めています。VERTECSも、そんな時代の変化を象徴する存在のひとつと言えるのかもしれません。

また、超小型衛星には、大型衛星とは異なる魅力もあります。開発期間やコストを抑えながら、新しい技術や研究テーマへ挑戦しやすい点です。そのため、若手研究者や学生たちが実践的な宇宙開発へ関わる機会も増えています。

そして6月10日の打上げは、VERTECSにとって“ゴール”ではなく、本当のスタートでもあります。宇宙空間での観測が始まることで、これから新たな研究成果や発見につながっていく可能性も期待されています。
小さな衛星が宇宙へ向かう姿の先には、日本の宇宙研究の未来や、次世代の研究者たちの夢も広がっているのかもしれません。

宇宙研究は、一部の特別な人だけのものではない

佐野 圭 助教

VERTECSプロジェクトの魅力は、宇宙観測そのものだけではありません。大学という教育の現場で、実際に人工衛星開発へ挑戦できる点にも、大きな意味があります。

学生たちにとって、“自分たちの関わった研究が本当に宇宙へ行く”という経験は、特別なものではないでしょうか。実際に人工衛星の開発や運用に触れられる環境は、次世代の研究者や技術者を育てる貴重な機会にもつながっていそうです。

また、こうした取り組みは、宇宙を身近に感じるきっかけにもなります。ニュースでロケット打上げを見るだけではなく、「大学でこんな研究が行われている」「日本の学生や研究者が宇宙へ挑戦している」と知ることで、宇宙開発への見え方が少し変わる人もいるかもしれません。

特にVERTECSのような超小型衛星プロジェクトには、“限られた環境の中でも挑戦を形にしていく面白さ”があります。限られたサイズの中へ観測機器や制御技術を詰め込み、宇宙空間でミッションを行う。その発想や技術力からは、日本のものづくりらしさも感じられます。

そして今回のVERTECSプロジェクトからは、「宇宙をもっと知りたい」という純粋な探究心も伝わってきます。宇宙の歴史や星の成り立ちといった壮大なテーマへ、大学から挑戦し続けていること自体に、ロマンを感じる人も多いのではないでしょうか。

大学から始まる宇宙への挑戦は、まだ始まったばかりです。これからVERTECSがどのような観測を行い、どんな成果につながっていくのか。打上げ後の展開にも期待が高まります。

小さな衛星に込められた、大きな挑戦

VERTECSプロジェクトからは、“大学から宇宙へ挑戦する時代”が少しずつ広がっていることが伝わってきます。

このプロジェクトに込められているのは、単なる技術だけではありません。宇宙の歴史を知りたいという研究者たちの想いや、日本の宇宙研究を次の世代へつなげていこうとする挑戦も詰まっています。
また、大学発のプロジェクトだからこそ感じられる魅力もあります。学生や若手研究者たちが実際に宇宙開発へ関わり、自分たちが携わった衛星が宇宙へ向かっていく――。そんな経験は、多くの人にとって未来への大きな原動力になっていきそうです。

宇宙には、まだ解明されていない謎が数多く残されています。だからこそ、人は何度でも宇宙を目指し、新しい挑戦を続けていくのかもしれません。
VERTECSがこれから宇宙空間でどのような観測を行い、どんな成果へつながっていくのか。H3ロケットによる打上げと、その先に広がる未来にも期待が高まります。


国立大学法人九州工業大学 概要

1909年創立の国立大学法人九州工業大学は、福岡県北九州市を中心に教育・研究活動を行う理工系大学です。工学や情報工学、生命体工学など幅広い分野で研究を進めており、近年は宇宙システム分野にも力を入れています。
超小型衛星開発や宇宙関連研究など、次世代の宇宙人材育成にも取り組んでいます。

公式サイト:https://www.kyutech.ac.jp/

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