教師の学びを未来へつなぐ SALASUSUが描く公教育の新たな可能性

2026-06-12 08:00

教育を変えるために必要なものは何でしょうか。
新しい校舎や教材、ICT機器の導入など、さまざまな答えが思い浮かびますが、その中心にいるのは子どもたちと日々向き合う教師たちです。どれほど優れた仕組みがあっても、教室の中で生まれる学びや気づきは、教師一人ひとりの工夫や挑戦によって支えられています。

一方で、現場で積み重ねられた経験や知見は、個人の中だけに留まってしまうことも少なくありません。良い授業の工夫や子どもたちとの向き合い方が、学校や地域を越えて共有されれば、より多くの子どもたちの学びにつながる可能性があります。

そんな教師たちの学びに着目し、公教育の質向上に取り組んでいるのがNPO法人SALASUSUです。カンボジアを拠点に活動する同団体は、教師育成や公教育改革を通じて学びの循環づくりに取り組んでいます。

今回は、SALASUSUが取り組む教師育成や公教育改革への挑戦、そして教師の学びを未来へつなぐ新たな取り組みについて紹介します。

カンボジアで公教育改革に挑むSALASUSUとは

教育について考えるとき、子どもたちへの支援に注目が集まることは少なくありません。しかし、子どもたちの学びを支えているのは、日々教室に立つ教師たちです。

NPO法人SALASUSUは、そんな教師たちの成長に寄り添いながら、公教育の質向上を目指して活動している団体です。福岡県北九州市に拠点を置きながら、主な活動の場をカンボジアに広げ、教育現場の課題解決に取り組んでいます。

SALASUSUが掲げるビジョンは、「Enjoy your life journey ― 誰もが人生の旅を楽しめる社会へ」です。その実現に向けて、質の高い学びをすべての子どもたちへ届けることを目指し、公教育の現場でさまざまな挑戦を続けています。特徴的なのは、学校を建てたり教材を配布したりするだけではなく、教師そのものの成長に焦点を当てていることです。

子どもたちが学び続けられる教室をつくるためには、教師自身も学び続けられる環境が必要です。SALASUSUでは、日本で培われてきた授業研究の考え方も活用しながら、教師同士が学び合い、より良い授業づくりを目指せる仕組みづくりを進めています。カンボジアでは、「誰も取り残されない教室」を目指したラボ・スクールの運営も行っており、すべての生徒が45分間学び続けられる質の高い授業の実現に向けて、教師たちが実践と研究を重ねています。

教育の成果はすぐに数字として表れるものばかりではありません。しかし、一人の教師の成長が教室を変え、その教室が子どもたちの未来を変えていくことがあります。SALASUSUは、そんな教育の可能性を信じながら、カンボジアの現場で教師たちと共に歩み続けています。単なる教育支援にとどまらず、公教育そのものをより良くしていくための挑戦を続けています。

教師の実践知を社会の財産へ ― SALASUSUが目指す学びの循環

良い授業は、決して偶然生まれるものではありません。子どもたちの反応を見ながら教え方を工夫したり、うまくいかなかった部分を振り返ったりと、教師たちは日々試行錯誤を重ねています。そうした積み重ねの中から、それぞれの教室に合った学びの形が少しずつ育まれていきます。

しかし、その経験や気づきは教師個人の中に留まりやすいという課題もあります。ある先生が見つけた効果的な授業方法や、生徒との関わり方の工夫が共有されなければ、その価値は限られた範囲でしか活かされません。異動や退職などによって、せっかくの知見が受け継がれないケースもあるでしょう。

SALASUSUが大切にしているのは、そうした現場で生まれる学びを一人の教師の経験だけで終わらせないことです。教師同士が授業について話し合い、実践を共有しながら学び合うことで、より良い教育を育てていくことを目指しています。

教育支援というと、学校の建設数や就学率など、数字で表しやすい成果に目が向きがちです。もちろんそれらも重要ですが、実際の教室では数字だけでは見えない変化が数多く起きています。教師同士の対話から新しい授業のアイデアが生まれたり、生徒の反応をきっかけに授業の進め方が変わったりすることもあります。

そうした小さな挑戦が積み重なることで、教室の雰囲気が変わり、学校全体の空気が変わっていくことがあります。一人の教師の変化が周囲の教師へと広がり、その先で多くの子どもたちの学びにつながっていくのです。

SALASUSUは、教師の学びを評価するためではなく、より良い教育を共につくるために可視化しようとしています。どのような実践が教師の成長につながるのか、どのような学び合いが現場を変えていくのかを丁寧に見つめ続けることで、公教育そのものを前進させようとしているのです。

教育の現場には、数字では測れない価値があります。そして、その価値を支えているのは、子どもたちと向き合い続ける教師たちの学びです。SALASUSUの取り組みは、その学びを未来へつなぎ、次の世代の教育へと受け継いでいく挑戦でもあります。

「見えない成長」を見える形に ― 助成金採択で進む新たな挑戦

こうした取り組みをさらに前進させるため、SALASUSUはこのたび、公益財団法人Soilと株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が共同で実施する助成プログラム「Soil×MUFG 第2回」に採択されました。

このプログラムには、子育て支援や文化保全、教育、地域課題など、さまざまな社会課題に取り組む270団体が応募し、その中から10団体が採択されています。SALASUSUの取り組みも、その一つとして評価されました。

今回の採択で注目したいのは、単に活動資金が得られたということではありません。教師の学びをより多くの現場へ広げるための新たな仕組みづくりが、本格的に進められる点にあります。

その中心となるのが、教師育成の実践知を蓄積・可視化するWebアプリケーションです。教育現場では日々さまざまな学びが生まれていますが、それらを整理し、共有し、次の実践へつなげることは簡単ではありません。そこで、教師たちの経験や工夫を記録しながら活用できる環境づくりが進められています。

また、教師の専門性向上に関するデータの収集や分析にも取り組む予定です。どのような学びや対話が教師の成長につながるのかを継続的に見つめることで、より効果的な教師育成の仕組みづくりが期待されています。

さらに、公立学校との連携拡大や現地教育者との協働体制強化も進められる予定です。特定の学校だけでなく、より多くの教育現場へ取り組みを広げていくための基盤づくりが進められていきます。

教育の現場では、子どもたちの成長は比較的目に見えやすい一方で、教師自身の成長や学びの過程は見えにくいものです。しかし、教師が学び続けることで授業が変わり、その変化が子どもたちへと伝わっていきます。

今回の採択は、そうした「見えない成長」に光を当てる取り組みを後押しするものとして期待されています。教師たちが積み重ねてきた経験や知見を未来へ残していくための挑戦は、これからさらに大きな広がりを見せていきそうです。

教師の学びが未来の教室を変える ― カンボジアから広がる可能性

教育は、一つの取り組みがすぐに社会全体を変えるものではありません。だからこそ、現場で積み重ねられる小さな変化には大きな意味があります。

SALASUSUが取り組んでいる教師育成も同様です。一人の教師が学び、新しい授業に挑戦する。その実践が別の教師へ共有され、学校全体へ広がっていく。そして、その変化が子どもたちの学びや成長へとつながっていく。教育改革とは、そうした地道な積み重ねの先にあるものなのかもしれません。

今回の助成金を活用しながら、SALASUSUは教師育成の実践知を蓄積する仕組みづくりだけでなく、公立学校との連携拡大やカンボジア国内でのモデル展開に向けた準備も進めていきます。これまで培ってきた経験や知見をより多くの教育現場へ届けることで、教師同士が学び合える環境づくりを後押ししていく考えです。

また、SALASUSUはこれまでも理論と実践を結びつけながら、公教育改革のモデルづくりに取り組んできました。その挑戦は特定の地域だけにとどまるものではなく、将来的にはアジア、そして世界へと広がる可能性を持っています。

私たちは教育について考えるとき、どうしても子どもたちに目を向けがちです。しかし、その学びを支える教師たちもまた、学び続ける存在です。教師が成長できる環境があれば、教室は変わり、子どもたちの未来にも新たな可能性が生まれます。

教師の学びを一人の経験で終わらせず、社会全体の財産として残していく――。SALASUSUが目指しているのは、そんな学びの循環を育てることなのではないでしょうか。

カンボジアの教育現場から始まった挑戦は、今後さらに多くの教師や子どもたちへと広がっていきそうです。

教師の学びが、未来の教育を支えていく

教育を支えるのは、教室で子どもたちと向き合う教師たちです。そして、その教師たち自身が学び続けられる環境をつくることもまた、より良い教育には欠かせません。

NPO法人SALASUSUは、カンボジアを拠点に教師育成や公教育改革に取り組みながら、教師同士が学び合い、その知見を次の世代へ受け継いでいく仕組みづくりを進めています。

今回の「Soil×MUFG 第2回」採択をきっかけに、教師の学びを可視化するWebアプリケーションの活用や、公立学校との連携強化など、新たな挑戦も本格化していく予定です。

目に見える成果だけではなく、現場で生まれる小さな学びや変化を大切にしながら、公教育の未来を育てていくSALASUSUの取り組みに今後も注目が集まりそうです。


特定非営利活動法人SALASUSU 概要

NPO法人SALASUSUは、「Enjoy your life journey ― 誰もが人生の旅を楽しめる社会へ」をビジョンに掲げ、主にカンボジアで教師育成や公教育改革に取り組む認定NPO法人です。授業研究を中心とした教師教育やラボ・スクールの運営を通じて、すべての子どもたちに質の高い学びを届けることを目指しています。教育・国際協力・ソーシャルデザインの分野で活動を展開し、より良い社会の実現に向けた挑戦を続けています。

公式サイト:https://salasusu.com/

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