酷暑日“気温40度”は危険でも…“お風呂40度”は快適のナゾ 専門家語る「皮膚センサー」と「熱伝導率」のメカニズム

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2026-06-19 07:00
酷暑日“気温40度”は危険でも…“お風呂40度”は快適のナゾ 専門家語る「皮膚センサー」と「熱伝導率」のメカニズム

「40度のお風呂は気持ちいいのに、気温40度は暑すぎる…」――夏になると、誰もが一度は思うこのギモン。実はこれ、ちゃんと科学的な理由があるといいます。今回はそのメカニズムを、名古屋大学大学院医学系研究科 総合医学専攻 統合生理学 中村和弘教授に聞きました。

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空気と水では「熱の伝わりやすさ」がそもそも違う

まず、大前提として知っておきたいのが「熱の伝わりやすさ」の違いです。

名古屋大学大学院医学系研究科 総合医学専攻 統合生理学 中村和弘教授
「空気と水とでは熱の伝導率が違います。空気が40度であっても皮膚はすぐには温まっていかず、ゆっくりと皮膚の温度が上がっていきます。一方で、お風呂の40度というのは、水なので熱の伝導率が高いわけです。そうすると皮膚の温度はすぐに40度になります」

熱伝導率、つまり「熱の伝えやすさ」。水は、空気より熱伝導率がずっと高いのです。だから、お湯にザブンと入れば肌の表面は一瞬で40度になり、気温40度の空気の中にいても、肌はゆっくり、じわじわとしか温まりません。

この違い、実は身近なところでも体験できるといいます。

木製のスプーンと銀のスプーン 同じ部屋にあるけれど…

例えば、同じ部屋にある木のスプーンと銀のスプーン。触ってみると、銀の方がずっと冷たく感じますが、これも同じ理屈で、金属は熱を伝えやすいから、触った瞬間に手の熱をサッと奪っていく。だから「冷たい!」と感じる。一方で、木は熱を伝えにくいから、熱の移動がゆっくりで、それほど冷たく感じません。どちらも同じ室温なのに、不思議なことが起こるのは、そういう日常のメカニズムが関係しているのです。

また、こちらも想像しやすいかもしれません。
100度のサウナでは、空気の熱伝導率が低いため、すぐにはヤケドしませんが、100度近いお湯に触れれば、一瞬で大ヤケドを負ってしまいます。これは、空気と水では「熱の伝わりやすさ」が劇的に異なることを物語っています。

皮膚のセンサーが反応するのは「温度そのもの」より「温度の変化」

熱の伝わるスピードが違うのはわかりましたが、それでは「なんで気温40度のほうがツラいの?」という疑問は解決しません。ここでカギを握るのが、私たちの「神経」の働きだといいます。

中村教授
「私たちの皮膚の感覚というのは、冷たさと温かさという温度を測っていますが、特に温度の変化に敏感です。皮膚には『温度受容器』という冷たさと温かさを感じる温度センサーがあります。これらは温度が変わるたびに、脳に電気信号を送るのですが、この信号が多ければ多いほど暑い!と強く感じます。

気温40度の屋外にいると、肌の温度は32~34度くらいからじわじわ上がり続け、温度が上がるたびにセンサーが反応して、『温度が上がっている!』という信号を脳に送り続ける。だから、ずっと暑く感じるわけです」

お風呂の熱さに「慣れる」理由は“情報の継続性”?

では、お風呂はどうでしょうか?入った瞬間は「熱っ!」となりますが、すぐ慣れます。

中村教授
「最初は大きく変化するので『熱い』という情報が脳に伝わりますが、それ以降は、ほぼ変化しないので、脳に継続的に情報が流れません。ですので、熱いということは感じにくくなっていきます」

つまり、お湯に入った直後は肌の温度が急上昇するからセンサーが活発に働き電気信号を送り続けるけれど、いったん40度で安定すると、温度の変化がほぼなくなり、脳への信号が減少する。これが、お風呂の熱さに「慣れる」正体だというわけです。

カギは「熱の伝わりやすさ」と「神経のシグナル」だった!

これらの要素があることによって、「40度」のお風呂と、気温では感じ方が違うことが説明できるといいます。

中村教授
「空気は熱伝導率が低いため、40度の空気中では皮膚の温度が徐々に時間をかけて上昇していくので、その温度変化(上昇)が「暑さの感覚」の電気信号として持続的に脳へ送られるため、暑く感じます。

一方、水の熱伝導率は高いため、40度の水中では皮膚の温度がすぐに40度になり、それ以降は皮膚の温度が安定するため、温度変化が小さく、脳へ送られる「熱さ感覚」の電気信号は空気中に比べて少なくなる。

したがって、40度の空気中では暑く感じるが、40度の水中ではそれほど熱く感じないということになります」

数字の上では同じ「40度」でも、環境の違いによって感じ方が違うことがわかりました。理由がわかると、夏の暑さへのイライラもほんの少しだけ和らぐ……かもしれません。これからやってくる本格的な夏、体のサインを上手にキャッチしながら、元気に乗り切っていきましょう!

==========
<プロフィール>
中村和弘さん

名古屋大学大学院医学系研究科 総合医学専攻 統合生理学 教授 
1997年 京都大学薬学部卒
2002年 京都大学大学院薬学研究科博士後期課程修了
薬学博士
脳の神経回路の研究を通じて生命機能の基本原理を探究する

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