過酷な猛暑下で広がる「耳の温暖化」によるリスク 世代別で異なる耳トラブルの実態と予防策

2026-06-22 08:30

NTTソノリティ株式会社は、2026年6月17日(水)に「イヤホン使用と耳の健康に関するラウンドテーブル」を開催しました。気象庁が最高気温40度以上の日の名称を「酷暑日」と新たに定めるなど、日本の夏はより過酷化しています。

そんななか、密閉型イヤホンの長時間使用は、耳の中に熱や汗を閉じ込めてしまい、「高温多湿」状態を作り出します。それが耳の中にカビを繁殖しやすくさせ、かゆみや外耳炎、難聴といった耳トラブルの原因となります。

ラウンドテーブルでは、NTTソノリティによる最新の「夏のイヤホン使用と年代別耳トラブルに関する実態調査」が紹介されたほか、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会認定の専門医である大場俊彦先生が、夏特有の耳トラブルが起こるメカニズムと具体的な予防策について詳しく語りました。

日常化する長時間のイヤホン利用、世代で異なる利用実態とは

はじめに、NTTソノリティ株式会社 マーケティング&クリエイティブ・コミュニケーションG ディレクターの清野裕美氏が登壇し、「夏のイヤホン使用と年代別耳トラブルに関する実態調査」について発表しました。

NTTソノリティが展開する音響ブランド「nwm(ヌーム)」は、没入ではなく“共存(Co-being)”をコンセプトに、耳をふさがないオープンイヤー型イヤホン「耳スピ」シリーズを展開しています。

直近では、聴こえに課題を抱える層へ向けた新ブランド「cocoe(ココエ)」を発表。世界初となる耳を塞がないオープンイヤー型集音器を発売するなど、多様なライフスタイルやニーズに応えるラインナップを拡充しています。

耳を塞がないオープンイヤー型のメリットは、閉塞感が少なく、長時間でも快適に使いやすいことです。

また、安定した装着感に加え、マルチタスクが求められる今の時代においても、周囲の音や人の呼びかけに気づきやすいのが特徴になっています。さらに、耳の穴に入れないため、「衛生的に保ちやすい」という利点もあります。

同社では、2023年から耳の健康に関する啓発活動に継続的に取り組んできました。

実際にGoogleトレンドを見ると、昨年は「耳カビ」という言葉が注目され、特に梅雨の時期から、猛暑が続く9月にかけて大きなピークが見られました。このような実態からも、「夏の耳の健康を守ることの重要性が、社会的にも広く認識されてきたと感じている」と清野氏は述べました。

今年は気象庁が最高気温40度以上の日を「酷暑日」と定義するなど、まさに日本が本格的な「40度時代」を迎えていると言えるのではないでしょうか。

こうした過酷な猛暑下において、新たに懸念されているのが「耳の温暖化」というリスクです。高温下でイヤホンを長時間装着し続けると、耳の内部に熱が籠もって温度と湿度が急上昇し、結果として2つの大きなリスクを引き起こす要因になります。

「1つ目は『菌の増殖』」です。耳の中が高温多湿な状態になることで、カビや細菌が繁殖しやすくなり、外耳炎や耳カビといったトラブルにつながるリスクが高まります。そして2つ目は『不快感の増加』です。蒸れやかゆみ、違和感、疲労感など、耳に継続的な負担がかかる状態を招く可能性があります」(清野氏)

今回行った調査では、耳のトラブルや対策の状況が世代によって異なる可能性があるという仮説に基づき、「Z世代」「働き世代」「ヤングシニア世代」の3つに分けて実施しました。

まずイヤホンの利用実態について世代別で見ると、Z世代では2人に1人が毎日使用しており、1日1時間以上利用する方も半数以上と、長時間使用している実態が見えています。働き世代では、8.7%が5時間以上利用しているとの回答が出ており、仕事で耳を酷使している状況が伺えます。

実際の耳の不快感については、梅雨の時期で56.2%、真夏日・猛暑日になると60%以上と、全体の約6割が「耳の不快感が増す」
と回答。症状としては、4割以上の人が「かゆみ」や「蒸れ」を感じ、次いで「不快な臭い」「痛み」といった不調が続いています。

しかし、多くの人が「耳かきで掃除する」「何もしない」といった自己流の処置にとどまっています。

実際に医療機関を受診した人はわずか9.1%と1割に満たず、多くの人が不快感や初期症状を自覚していながらも、実質的に「放置」してしまっている実態が浮き彫りになりました。

また、今回の調査では、世代ごとに異なる「放置の理由」も見えてきました。

15〜24歳のZ世代については、「若いからそのうち自然に治るだろう」と考え、放置してしまうケースが多く目立ちます。

一方、働き世代ではオンライン会議などで長時間のイヤホン使用を余儀なくされており、耳への負担や不調を抱えやすい環境にあります。実際に不快を感じる割合は72%と3つの世代の中で最も多くなっているのに加え、日々の忙しさから対応が後回しになりがちで、「不調を感じつつも対策を取らない」と回答した人は68.4%に上ります。

50歳から69歳のヤングシニア世代は、長時間利用やリスク行動は比較的少ないものの、症状があっても「何もしない」「知らない」「諦める」という傾向が見られます。かゆみを経験した方が約5割いるにもかかわらず、予防策も特に行わない「かゆいけど諦めている」世代であることが分かりました。

専門医が解説する「耳トラブル」の発生メカニズムと予防策

続いて大場先生が、耳トラブルが起こるメカニズムと具体的な予防策について説明しました。

耳のトラブルの一つとして知られる「耳カビ」。カビは高温多湿の環境で繁殖しやすいため、気温や湿度が上がる夏場は発症リスクが高まります。大場先生は、「実際に発症すると症状が長引きやすく、治療にも時間がかかることを覚えておいていただきたい」と注意を促しました。

外耳炎は、耳の中が傷ついたり、高温多湿な環境で細菌やカビが繁殖したりすることで、かゆみや痛み、閉塞感などの炎症が生じる病気です。特に長時間のイヤホン使用は、耳の内部を高温多湿化させ、細菌やカビが最も好む環境を作り出すため、発症リスクを大きく高めます。

写真は、耳を覆うタイプのヘッドホンを1時間着用すると、耳の内部の温度はおよそ1.8度上がる結果が示されています。

耳の中はストローのような細い構造のため、温度が上がると汗をかきやすくなり、耳の内部の温度上昇が症状の発生頻度を高める要因になると言えるのです。

加えて、「耳かきをやりすぎるのは良くない」と大場先生は述べました。

「耳かきをしていると、最初はかゆくて気持ちいいのですが、やりすぎると外耳道が腫れて塞がり、鼓膜すら見えなくなることもあります。そのような状態になると激痛が走り、ひどい場合は腫れたところにガーゼを入れ、穴を開けるような処置が必要になります。外耳道がひどくなると痛みだけでなく、難聴を引き起こすリスクさえあるのです」(大場先生)

耳かきや綿棒を使う頻度は、年齢が上がるほど多くなる傾向があるそうですが、海外では基本的に綿棒は使用されておらず、「日本特有の文化」だといいます。

そして、外耳炎の次の段階として発症することが多いのが「外耳道真菌症(耳カビ)」です。外耳炎と耳カビは別々の病気ではあるものの、外耳炎をきっかけに耳カビへ進行するケースが少なくないため、「耳のかゆみや違和感を軽視せず、早めに適切なケアを行うことが大切」だと大場先生は話しました。

「耳の中は、何もしなければいきなり炎症になることも、いきなりカビが生えることもありません。基本的には、まず何らかの形で傷をつけて障害を起こし、炎症が起きた後の次のステップとして外耳道真菌症へと進行することがあります。

この真菌症は黒い斑点のようなものが見られ、悪化してくるとヘドロのような状態になってきます」

また外耳炎になると、抗生物質を使うことがありますが、良い菌も悪い菌も全部殺してしまう「菌交代現象」と呼ばれる逆転が起き、より強いバイ菌やカビが生えてきて、収拾がつかなくなってしまうケースもあるとのこと。

「ステロイドは一時的に腫れを抑えるものの、免疫力を低下させるため、カビが繁殖しやすくなります。また、外耳道真菌症を発症した場合、一般的な抗生物質は効果がありません。厄介なのは、薬でカビを抑えようとすると、今度は菌が再び増殖するという悪循環に陥り、最悪のケースでは鼓膜が破れることもあり得ます。一度鼓膜が破れてしまうと、毎日経過を見て自然治癒を待つほかなく、本当に大変ですので、日頃から予防を徹底することが何より大切です」

大場先生は、耳のトラブルにおけるリスクが年齢別で異なる点についても触れました。

Z世代の間では耳にイヤホンをつけることが常態化しており、長時間つけっぱなしで手入れもせず、友人同士で貸し借りするケースも見られます。特にスポンジ型のイヤーピースは菌が増えやすく、湿気がこもりやすいため、清潔に保ちにくいというリスクを抱えています。

また、音楽好きに好まれる密閉型イヤホンですが、仕事の会議などでも長時間使用し続けると耳のトラブルリスクが高まります。この傾向は、特にイヤホンが生活の一部となっているZ世代に多く見られるそうです。

働く世代はテレワークでイヤホンをずっとつけている方が多く、オンライン会議以外にも音楽を聴き続けているという方もいます。一方で、耳の不快感があっても、「忙しいから」という理由からそのままにしてしまうケースが多くなっています。

そしてヤングシニア世代は、皮膚が傷つきやすく、老化によりターンオーバー(肌の回復)が遅くなるため、耳の不調に気づきにくいことが挙げられます。

さらに、地球の温暖化に伴い気温が年々上昇する中で、「耳の温暖化」も進行しています。そのため、イヤホンは1時間使ったら10分休む、メーカーのマニュアルに沿って週1回程度の手入れをする、耳を塞がないオープンイヤー型のイヤホンを選ぶなど、耳の清潔さを保つことを意識することが大事になるのです。

「オープンイヤー型イヤホンは、熱や湿気が籠もりにくく、耳の中のムレを軽減してくれます。また、耳の穴に直接差し込まないので、外耳道を傷つけるリスクもなく、快適に装着することが可能です。実は高齢者の間では、『夏になると耳が不快で補聴器を外してしまう』という方が少なくありません。そうしたなかでも、季節を問わずつけっぱなしにできるオープンイヤー型は、とても良い選択肢だと言えるでしょう」

40度時代を生き抜くための「オープンイヤー型」という選択肢

その後、再び清野氏が登壇し、サーモグラフィーによる温度測定の補足について説明しました。

NTTソノリティが展開するオープンイヤー型イヤホン「nwm DOTS」と従来の密閉型イヤホンでは、明らかな違いが見られました。気温25度の屋外で1時間装着した場合、オープンイヤー型はわずか0.2度の上昇にとどまったのに対し、密閉型は0.9度も上昇。耳の内部温度の変化に、明らかな違いが出るという結果になりました。

また、オープンイヤー型のワイヤレスヘッドホン「nwm ONE」は、1時間の装着で0.6度の上昇が見られるのに対し、密閉型ヘッドホンは同じ条件で 1.8度上昇し、熱がこもることが確認できました。

このように、オープンイヤー型イヤホンは、従来のカナル型や密閉型と比較しても、耳回りが涼しく、熱の上昇を抑えられる効果が期待できます。

清野氏は、「今夏は『夏の新習慣、耳スピ』をテーマに、オープンイヤー型イヤホンという選択肢を啓蒙していきたい」と述べ、会を締めくくりました。

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