住宅リフォーム「価格だけで選べない」時代の到来――進む“シンナー不足”と業界の新たな課題

2026-06-30 17:30

建築資材の価格上昇や供給不安が続くなか、住宅リフォーム業界でも見えにくい変化が起きている。その一つが、外壁塗装や屋根リフォームに欠かせない塗装用シンナーの供給不安である。

一般消費者にはなじみが薄い資材だが、施工工程や品質管理に影響を及ぼす可能性があるという。
こうした状況を現場はどう受け止めているのか。関東・甲信越エリアで外装リフォーム事業を展開する株式会社SALEの代表取締役・芳野佑介氏に話を聞いた。資材不足が広がる時代に、住宅リフォームの品質はどう守られるのだろうか。

なぜ塗装業界で「シンナー不足」が問題になるのか

住宅リフォーム市場では近年、資材価格の上昇が続いている。一般財団法人建設物価調査会が公表する建設資材価格動向によると、塗料を含む建設関連資材は原材料価格やエネルギーコストの上昇を背景に価格改定が続いている。また、物流業界の人手不足や輸送コスト増加も供給面に影響を与えており、国土交通省も建設業界における資材調達リスクへの対応を課題として挙げている。こうした環境変化は住宅リフォーム市場にも影響を及ぼしている。

そのなかで、塗装業界が直面している課題の一つが塗装用シンナーの供給不安である。同社によると、実際の現場でもここ1〜2年、塗料や副資材、シンナー類の価格上昇や納期遅延を実感する場面が増えているという。 芳野氏は「メーカーによっては発注してもすぐに入荷しないケースや、納期が見通せないケースもある」と話す。 住宅リフォームは工事日程が事前に決まっていることが多く、資材不足は工程全体に影響を及ぼしかねない。 ただし、資材不足は一企業の努力だけで解決できる問題ではない。原材料調達や物流網などサプライチェーン全体の課題であり、今後も不確実性が続く可能性がある。

品質を左右する「見えない資材」の役割

シンナーは一般消費者にとって馴染みの薄い存在である。しかし塗装現場では、塗料の希釈や粘度調整、施工機材の洗浄などに使用される重要な資材とされる。

芳野氏によると、気温や湿度など施工環境に応じて塗料を適切な状態に調整するためにも欠かせないという。

「シンナーは単なる溶剤ではなく、塗料本来の性能を引き出す役割を担っています」と説明。

塗装工事は完成直後の見た目だけでは品質を判断しづらい。塗料の密着性や耐久性などは、施工後数年を経て差が現れる場合もある。

そのため、資材不足を理由に代替材料を安易に使用したり、コスト削減を優先したりすると、本来想定されている性能が十分発揮されない可能性があるという。もっとも、すべての代替品が品質低下につながるわけではない。重要なのは材料特性を理解したうえで採用を判断し、施工品質を検証する体制にあるようだ。


価格競争から品質競争へ――変わる消費者意識

外壁塗装市場ではかつて、価格が業者選定の大きな判断材料になりやすかった。

しかし近年は、インターネットやSNSの普及により、消費者自身が塗料の種類や施工方法について情報収集できる環境が整っている。

芳野氏は「価格だけでなく、なぜその金額になるのか、どの材料を使用するのかを説明できる会社が求められるようになっている」と話す。実際、同社には「材料不足で品質が落ちることはないのか」「今後さらに値上がりするのか」といった相談が増えているという。

住宅塗装は100万円を超えるケースもあり、住宅所有者にとって大きな投資である。だからこそ施工内容や使用材料の透明性を求める声が高まっている。

一方で、消費者が施工品質を事前に見極めることは依然として容易ではない。価格や保証内容だけでなく、施工管理体制や説明責任まで含めて評価する視点が必要になっている。

住宅メンテナンス市場は転換点を迎えるか

株式会社SALEでは、供給不安を前提に早期の資材確保や複数メーカーとの取引によるリスク分散を進めている。

同社は特定メーカーへの依存を避けながらも、品質検証を経た材料のみを採用する方針を取っているという。芳野氏は「代替できれば何でも良いという考え方ではなく、品質維持を前提とした現場運営が重要になる」と話す。

住宅の長寿命化が求められるなか、外壁や屋根のメンテナンス需要は今後も一定数存在するとみられる。一方で、建設資材価格や人件費の上昇は続いており、住宅リフォーム市場を取り巻く環境は厳しさを増している。

ただし、資材不足や価格高騰は業界全体の問題であり、一社だけで解決できるものではない。今後は施工品質をどのように維持し、消費者へ説明していくかが、住宅リフォーム市場全体の信頼性を左右する論点になりそうだ。

【取材協力】
株式会社SALE
代表取締役 芳野佑介氏
https://sale-takumi.com/



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