都心で急拡大、野菜直売所「わくわく広場」が儲かる秘密。スーパーと「真逆」のビジネスの仕組みとは

東京の都心で、採れたて野菜の直売所が次々にオープンしています。その名は「わくわく広場」。新鮮で安いと話題ですが、興味深いのはその中身です。欠品しても構わない、値段は生産者が自由に決める、スーパーの常識と真逆のことをしているのに、業績は右肩上がりで成長を続けています。この不思議な直売所は、いったいどんな仕組みで儲かっているのか。その核心について、リサーチャーのcomugiが解説します。
(TBS Podcast『コムギコ:資本主義をハックしろ!!』2026年7月20日配信『イオン、メルカリ、わくわく広場:「マーケットプレイス」こそ最強ビジネスである #コムギコ #86』より)
今年だけで都心に11店舗。急拡大する直売所
わくわく広場を手掛けるのは、タカヨシホールディングスという会社です。今年だけで都心に11店舗をオープンし、急拡大しています。既存の店舗を含めても、日本橋のコレド室町、麻布十番、桜新町、新宿の東京オペラシティ、池袋のサンシャインシティ。並べてみると、いずれも都心の一等地ばかりです。
産直のお店といえば、道の駅のような郊外のイメージがありました。ところが1号店が2001年に千葉県八街市(やちまたし)で生まれたわくわく広場は、いまや全国におよそ200店舗。1年間に売れた商品は268億円分以上にのぼり、いまも成長を続けています。
畑から遠いはずの都心で、どうして産直のお店がこんなに人気なのか。安さや新鮮さに目が行きがちですが、本当に興味深いのは、その裏側にあるビジネスの仕組みです。
スーパーとは「真逆」の商売
わくわく広場の仕組みは、普通のスーパーとちょうど真逆になっています。
スーパーは自分でお金を出して商品を仕入れます。つまり売れ残りのリスクを自分で抱える商売です。だから欠品しないように品揃えを整え、売れ残りそうなら値引きし、最後は廃棄のコストも自分で払います。
ところがわくわく広場では、棚に並んでいる商品は、あくまで生産者のものです。売れ残りのリスクを負っているのは生産者の側で、運営会社のタカヨシは「売り場」を提供して、売れた金額の25%を手数料として受け取ります。仕入れをしないので、売れ残りのリスクも、廃棄のコストも抱えません。
だからこそ「欠品OK」が成り立ちます。品切れは店の失敗ではなく、それだけ売れた証拠。この前提の違いが、スーパーとの決定的な分かれ目になっています。
生産者が値段を決めると、何が起きるのか
値段を生産者自身が決めることにも、仕組みとしての意味があります。
せっかく持ってきたんだから、値下げしてでも売り切りたい。生産者にはそういう力学が自然と働きます。夕方の直売所で、ときに半額になるような気前のいい値引きに出会えるのは、この力学のあらわれです。値下げするかどうかの判断も、値下げ分の負担も生産者側の話で、運営側は売れた分の手数料を受け取るだけです。
その結果、生産者は廃棄を減らせて、消費者は安く買えて、お店はにぎわいます。それでも売れ残った分は、地域の子ども食堂などに寄付される仕組みまで整えられています。誰かが無理をして安さをつくっているのではなく、リスクの置き場所を変えることで、全員が得をする流れを設計しているわけです。
なぜ生産者は、手数料25%でも集まるのか
売れた金額の25%という手数料は、数字だけ見れば決して安くありません。それでも登録した生産者は、全国で3万5000人を超えています。
理由のひとつは身軽さです。生産者が自分で都心に店を構えようとすれば、家賃も人件費も内装も、大きな投資と売れ残りの覚悟が必要になります。わくわく広場なら、商品を持ち込むだけで、都心の一等地の売り場と、そこに集まるお客さんを使えます。納品も値付けも自分のペースで決められます。
もうひとつの理由が、データです。わくわく広場には生産者専用のWebポータルがあり、自分の商品がどの店で、いつ、いくつ、いくらで売れたかを、スマホやパソコンからほぼリアルタイムに確認できます。データは15分おきに更新されるので、畑にいながら売れ行きがわかります。農家が自前で販売データを集める仕組みを持つのは簡単ではありません。そこを運営側がまとめて肩代わりしているわけです。実際、店舗ごとの客層の違いを分析して、「この店ならこれが売れる」と予測しながら、出す商品や作る作物を変えている生産者もいるそうです。都心の店にはこのお弁当、郊外の店にはこの野菜、という具合です。
つまり25%は、単なる販売手数料ではなく、「都心で商売する権利」と「販売データ」がセットになった利用料と考えると腑に落ちます。売り場を持たない生産者と、新鮮なものを求める都心の消費者。その両者をつなぐ場所に、ちゃんと値段がついているのです。
会長の言う「実店舗のAmazon」の意味
タカヨシホールディングスの創業者でもある会長は、「我々は欠品OK。いいものは午前中になくなる。売り切れごめん」と語り、自分たちのことを、仕入れて売るお店ではなく「実店舗のAmazon」のような存在だと表現しています。
これは言い得て妙です。Amazonのサイトで買い物をすると、実は多くの商品はAmazon自身ではなく、出店している無数の販売者から買っています。Amazonは売り手と買い手が出会う「場」を提供して、取引のたびに手数料を受け取る。こうした商売の形を「マーケットプレイス」と呼びます。わくわく広場は、それを野菜の直売所というリアル店舗でやっているわけです。
しかも、在庫を持たないスタイルは、この会社の原点でもあります。タカヨシの創業は1970年。最初の商売は、事務機器のカタログ販売でした。半世紀前から一貫して、「モノを抱えずに、売り手と買い手をつなぐ」商売を続けてきた会社なのです。
「場」を貸す商売は、なぜ強いのか
マーケットプレイスの強さは、循環にあります。生産者が集まるほど品揃えが充実し、品揃えが充実するほどお客さんが増える。お客さんが増えれば、また新しい生産者が集まってくる。参加者が参加者を呼ぶこの循環が回りはじめると、場そのものの魅力が雪だるま式に増えていきます。
そして運営側は、在庫のリスクを抱えることなく、取引が起こるたびに確実に手数料を受け取っていく。考えてみれば、出品者から販売手数料を受け取るメルカリも、構造はこれと同じです。扱うものが野菜でも中古品でも、「売り手と買い手が出会う場をつくる商売」は、資本主義のなかで繰り返し勝ち残ってきました。
都心の直売所で野菜が安く買える。その気持ちよさの裏には、リスクの置き場所を組み替えた、とても洗練されたビジネスの設計があります。次にわくわく広場の前を通りかかったら、棚の野菜だけでなく、その後ろにある「場」の仕組みまで、少しだけ想像してみてください。
<コムギコ:資本主義をハックしろ!!>
毎日ニュースを100本を読むビジネス系VTuberのリサーチャーであるコムギ(comugi)が、日々の経済にまつわるニュースを解説するビデオポッドキャスト。本記事は2026年7月20日配信『イオン、メルカリ、わくわく広場:「マーケットプレイス」こそ最強ビジネスである #コムギコ #86』から抜粋してまとめたものです。