「ルールだけは公平に」韓国W杯敗退で国民の怒りが過熱する理由、“超格差競争社会”が許せない「高麗大学カルテル」の不透明さ【Nスタ解説】

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2026-07-02 20:09

サッカーワールドカップで敗退した韓国の代表に国民の怒りが爆発。監督にも批判が集まっています。なぜ、ここまで過熱しているのでしょうか。韓国が抱える「怒りの本質」とは?

【写真を見る】韓国代表監督「入店禁止」の張り紙やニセのAI動画も

「無能な人」韓国大統領 代表監督を痛烈批判

出水麻衣キャスター:
サッカーワールドカップでグループリーグ敗退となった韓国代表ですが、韓国国内では怒りが広がっています。

・ソウル市内では…
洪明甫(ホン・ミョンボ)監督の『入店禁止』を掲げる店も

・メディアの社説
韓国 日刊スポーツ
「行き着く先は監督のリーダーシップ不足という問題」

・李在明(イ・ジェミョン)大統領のSNS
「組織と人事の失敗によるもの」
「無能な人を指揮官に選べば結果は明らかだ」

国民の怒りが広がっていますが、現地の状況はいかがでしょうか。

TBS報道局 外信部 中道秀宜 ソウル支局長:
国のトップである韓国の大統領が、代表監督個人に対して、「無能な人」と強い言葉を使って公然と批判したのには驚きました。ただ、国民の声を代弁しているという声も一部ではあります。

韓国は、2002年のワールドカップでベスト4まで行きました。韓国の人にとっては、「国の誇り」。つまり韓国の人たちは、代表チームに対して特別な思いを持っているのです。

今回も大きな期待を持っていたのにも関わらず、惨憺たる結果になってしまったことに対して、多くの国民が「裏切られた」という思いを持っているのだと感じました。

出水キャスター:
大統領の発言には、どのような背景があると思いますか。

TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
李在明大統領は、元々は左派系の人です。しかし、大統領になったことで、現実路線になり、日本ともうまくやっていくようになりました。

支持率もそれなりに高かったのですが、物価高や格差などで、支持率が少しずつ下がり始めています。

そういった状況で今回のことが起きたので、ポピュリズムの本性が出てきてしまったということなのではないでしょうか。

韓国でも、「いくらなんでも言い過ぎだろう」という反響もあるようです。

批判相次ぐ背景に監督選出方法への不信感

出水キャスター:
行き過ぎた批判につながっている理由として、「チームの状況」もあったようです。

今回の韓国代表は、ソン・フンミン選手(ロサンゼルスFC)や、キム・ミンジェ選手(FCバイエルン・ミュンヘン)といった、海外のチームでプレーをしている、非常に有能な選手たちを擁した、スター揃いの「黄金世代」と言われているようなチームだったので、国民の皆さんの期待も高かったようです。

その、チームの指揮を執ったのが、洪明甫(ホン・ミョンボ)監督です。

過去にも、2014年のワールドカップブラジル大会で監督を務めたのですが、この時の結果は、グループリーグ最下位で敗退しています。

韓国では、「なぜ、すでに実力が検証された人が、再び国の代表監督になれるのか」という強い疑念がありました 。

ホン監督が、再び代表監督に登用されたことに、韓国国民の怒りが噴出したと捉えていいのでしょうか。

TBS報道局 外信部 中道秀宜 ソウル支局長:
この監督が選ばれたプロセスの不透明さこそが、怒りの本質なのです。

韓国サッカー協会のトップの鄭夢奎(チョン・モンギュ)会長と、ホン監督は、ともに名門・高麗大学の先輩後輩です。

つまり、代表監督は“コネ”で選ばれたのではないかという見立てがあるのです。現地メディアは、これを「高麗大学カルテル」などと激しく批判しています。

実際、ホン監督が就任した2024年にもこの論争が大問題になり、国会で国政監査が行われました。その結果、選考ルールや、手続きが事実上、“形骸化”していたという結論が出ています。

公明正大な競争ではなく、幹部たちの密室で選ばれた派閥人事、つまり“コネ”だったのではないかという不信感が、2024年から韓国でずっとくすぶっていたのです。

それが今回のワールドカップで惨敗となったことで、韓国国民の怒りが一気に大爆発したということです。

過熱する批判 背景に「競争社会」

井上貴博キャスター:
韓国サッカー協会には、税金が投入されているため、疑惑があったら追及をするというのはわかります。

ただそれは、協会や組織にメスを入れるべきであり、監督個人の吊るし上げというのはあまりに行き過ぎではないかと思います。

バッシングが過熱してしまう、韓国特有の公正さを強く求める背景には何があるのでしょうか。

TBS報道局 外信部 中道秀宜 ソウル支局長:
韓国は日本以上に、“超”がつくほどの格差競争社会です。

子どもたちは、幼いころから財閥系の大企業や、一握りの成功枠に入るために、毎日夜遅くまで猛勉強をする過酷な受験戦争を生き抜いています。

しかし、現状は極めて深刻な就職難で、名門大学を出ても、何年も就職活動を続けなければならない若者が増えています。

血の滲むような努力を強いられる社会だからこそ、「全員、スタートラインやルールだけは公平でなければいけない」という考え方が強く、公正さという部分に関しては、韓国の人たちは人一倍敏感なのです。

出水キャスター:
実際に、警察も動き出していて、職権乱用などの容疑でサッカー協会の幹部らが捜査されることになっています。

政府としては「特別監査」を行うということで、これからどのように展開していくかに注目が集まっています。

ただ、行き過ぎてしまうと、国際サッカー連盟(FIFA)から「政治介入が過ぎる」と言われてしまいます。

ルールの中でどのように、きちんと膿を出していくのかが問われているのかもしれません。

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<プロフィール>
中道秀宜
TBS報道局 外信部 ソウル支局長
大統領選挙や過酷な超競争社会など取材

星浩さん
TBSスペシャルコメンテーター
1955年生まれ 福島県出身
政治記者歴30年

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