卓越した能力で、多くの登山家を登頂制覇に導いた「山岳ガイド」猫 スイス

2026-07-03 06:00

80年代末、スイスアルプスで「山岳ガイド」として有名な猫がいました。この猫は多くの登山家たちと一緒に高山を制覇し、ときに雪崩を予知して人々を救うことさえあったのです。

山登りが大好きな子猫

長毛種の子猫

画像はイメージです

1988年8月7日、アルプスのカンデルシュテーク近郊にあるホテルで、かわいい子猫が生まれました。ここで飼われていた元野良猫のTomassaが産んだ長毛種の猫です。有名なアルペンスキーヤーのアルベルト・トンバにちなんで、Tombaと名づけられました。

歩けるようになるとすぐに、Tombaは丘や尾根を駆けまわりました。やがてシュピッテルマッテ、シュヴァルツグレートリ、ガッリホルンといった山々を登るようになり、ゲンミ峠を越え、ゲンミヴァントの岩壁を軽々と下りていきました。ホテルの経営者Peter Stollerさんは心配して何度も連れ戻そうとしましたが、Tombaは風雨をものともせずに出かけてしまうのでした。

生後10ヵ月のとき、Tombaは3人の登山者を標高3453メートルのリンダーホルンの山頂まで案内し、ずっと同行しました。これを聞いたPeterさんは、「Tombaは真の登山家で、自力で家まで帰ってくることができる」と確信したのです。

そしてその数日後、Tombaは標高3699メートルのバルムホルンの山頂まで登山グループと一緒に登頂を果たしたのです。この偉業には人々も驚きました。

登山客を案内して山頂へ

ベンチで休む猫

画像はイメージです

以来Tombaは何度も人間たちと登山を繰り返し、天候がよければホテルに戻ることさえめずらしくなりました。氷河の端で次の「登山客」を待ち続けていたからです。

ホテルに登山客が泊まると、Tombaはうれしそうに彼らのリュックサックの匂いを嗅いでいました。そしてどの人間と一緒に登山をするかを決め、翌朝早くにさっそく登山ルートを案内して同行したのです。あるグループを山頂まで導いたあと、途中で出会った別のグループを案内して再度登山することもありました。山頂では、お客さんからソーセージとチーズのご褒美を受け取るのも楽しみだったようです。お腹がいっぱいになると、グルーミングをして景色を堪能し、そしてうれしそうに下山する姿も見られました。

あるとき若い夫婦を案内して道を歩いていたTombaは、突然立ち止まって大きな岩の陰に隠れてしまいました。2人は好奇心に駆られて猫の後を追ってきました。ちょうどそのとき、それまで登っていた道を、轟音とともに雪崩が横切っていったのです。Tombaのお陰で、この夫婦は命拾いをしました。

海外でも報道され、有名に

スイスアルプスでの登山風景

画像はイメージです

この猫の名声はスイスの国境をはるかに越えて広まり、多くの注目を集めました。日本の登山年鑑は写真付きの見開きページを割いてTombaの特集を組み、南アフリカの週刊誌もこの猫の活躍を報道しました。

ニューヨークでも有名になったほか、ヨーロッパの多くの新聞が報道し、話題を呼びました。スイスのテレビ局は撮影のためホテルを訪れ、印象的な映像とともに興味深いレポートを放送しました。

「過去に活躍した有名な登山ガイドたちの魂が、猫の姿になってよみがえった」と考える人もいたほどです。

4年以上も「登山家」として活躍したTombaですが、1993年1月27日に猫免疫不全ウイルス感染症のため息を引き取りました。短い生涯を大好きな「登山」に注いだTombaは、多くの登山家たちにとって忘れられない存在となりました。

出典:Cats' Adventures & Travels 17

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