日本パラ・パワーリフティング連盟が届けた「応援の力」 福島の小学校で未来へつながる特別授業
「応援には、本当に人を動かす力があるのだろうか。」
そんな問いをテーマにした特別授業が、福島市立荒井小学校で行われました。講師を務めたのは、東京2020パラリンピック日本代表であり、日本パラ・パワーリフティング界をけん引する光瀬智洋選手です。子どもたちは実際に競技を体験し、自分が挑戦すること、友達を応援すること、そしてパラリンピアンを応援することを通じて、「応援の力」と「応援される力」の両方を学びました。
授業のクライマックスでは、子どもたちの大きな声援を受けた光瀬選手が154kgのバーベルに挑戦。体育館中が見守るなか、見事に成功を収める場面もありました。その瞬間、子どもたちは応援が誰かの背中を押す力になることを、目の前で実感したことでしょう。
今回の交流授業は、スポーツの楽しさを伝えるだけでなく、地域とのつながりや未来を担う子どもたちへの思いが込められた取り組みでもあります。本記事では、授業が開催された背景や当日の様子、日本パラ・パワーリフティング連盟が大切にしている思いについて紹介します。
福島とのご縁を未来へつなぐ 交流授業に込められた思い

今回の交流授業は、単発の学校イベントとして企画されたものではありません。その背景には、日本パラ・パワーリフティング連盟と福島市が長年にわたって築いてきた大切なつながりがあります。
そのご縁のきっかけとなったのは、かつて福島市を拠点に活動していたパラ・パワーリフティング選手の存在でした。競技の普及に力を注ぎながら、強化合宿の誘致や学校での交流授業、体験会の開催などに取り組み、多くの人へパラスポーツの魅力を伝えてきました。
昨年、その選手が逝去されたことにより、福島で続いてきた強化合宿はいったん途絶えることとなりました。しかし、「このご縁を未来へつないでいきたい」という選手やスタッフの思いから、今年あらためて福島での開催が実現しました。今回の強化合宿には、その選手とともに活動してきた選手に加え、福島での体験会をきっかけに競技を始めた育成選手も参加しています。
こうした背景があるからこそ、今回の交流授業は競技体験にとどまらない意味を持っています。子どもたちとパラリンピアンが直接触れ合い、スポーツの楽しさや応援し合うことの大切さを学ぶ機会となりました。競技力向上を目指す強化活動だけでなく、地域や学校との交流を通じて人と人とのつながりを育むことも、日本パラ・パワーリフティング連盟が大切にしている取り組みの一つです。
子どもたち全員が挑戦 応援の力を体感した交流授業

今回の交流授業では、子どもたちが話を聞くだけではなく、全員がパラ・パワーリフティングを体験できるプログラムが用意されました。授業のテーマは「応援には本当に力があるのか」。自分自身が挑戦すること、友達を応援すること、そして日本代表選手を応援することという3つの体験を通じて、「応援の力」を実感できる内容となりました。
パラ・パワーリフティングは、ベンチプレス競技をもとにしたパラスポーツです。競技中は一人の選手がステージに立ち、その挑戦を会場全体で見守るため、応援が一人の選手へ自然と集まることも競技の大きな魅力です。今回の授業でも、その特徴を生かし、子どもたち自身が「応援が人の力になるのか」を体験しながら学べる内容が組まれました。

子どもたちは順番にベンチへ挑戦し、友達が挑戦する場面では「がんばれ!」「あと少し!」と自然に声援を送り合います。競技を経験したことがない子どもたちも、お互いを励ましながら取り組むことで、挑戦する楽しさだけでなく、誰かを応援することの大切さにも触れる機会となりました。

また、4年生と6年生の各クラスでは、事前学習として「応援とは何か」を考え、オリジナルの応援コールを準備。当日は体育館いっぱいに元気な声が響き渡り、子どもたちが力を合わせて日本代表・光瀬智洋選手へエールを送る時間へとつながっていきました。
子どもたちの応援が154kgへの挑戦を後押しした瞬間

授業の終盤には、子どもたちが事前に考えてきたオリジナル応援コールを、光瀬智洋選手へ届ける時間が設けられました。
これまで友達同士で送り合っていた声援は、この瞬間、一人のパラリンピアンへ向けられます。子どもたちの応援を受けながら、光瀬選手は70kg、100kg、140kgと次々に重量を上げ、最後に154kgへ挑戦しました。この重量は、自身が持つ日本記録158kgの約98%にあたり、直前3日間の強化合宿でも一度も成功していなかった重さだったといいます。
挑戦を前に光瀬選手は、「失敗が怖いから挑戦しないのではなく、挑戦することが大切。だから、この挑戦をみんなの応援で後押ししてほしい。」と子どもたちへ呼びかけました。その言葉に応えるように体育館いっぱいへ大きな声援が響き渡り、光瀬選手は154kgのバーベルを見事持ち上げることに成功します。

挑戦を終えた光瀬選手は、「みんな、ありがとう!みんなの応援のおかげで154kgが上がりました。パラ・パワーリフティングは、応援してくれる人がいて初めて完成するスポーツなんです。」と、子どもたちへ感謝の言葉を伝えました。
授業のテーマは「応援には本当に力があるのか」。その答えは、教室で学ぶのではなく、一人のアスリートが挑戦する姿と、それを支えた子どもたちの応援によって示されました。応援する人と挑戦する人、その両方がいて初めて生まれる力を、子どもたちは忘れられない形で体感したことでしょう。
応援の力がくれた勇気 子どもたちの心に残った一日

交流授業を終えた子どもたちからは、「光瀬選手の挑戦を見て、本当に応援には力があるんだと思いました。」という感想が寄せられました。
自分自身が競技を体験し、友達を応援し、最後にはパラリンピアンの挑戦を全力で応援する。その一つひとつの経験を通して、「応援」は誰かの挑戦を支える力になることを実感した様子がうかがえます。
また、授業を見守った先生からも、「子どもたちと一緒に大きな声で応援し、光瀬選手が154kgを持ち上げた瞬間をともに喜ぶことができ、本当に元気をもらいました。」との声が寄せられました。
授業を終えた光瀬選手も、「最初は緊張していた子どもたちが、最後には『楽しかった!』と笑顔で帰っていく姿がとても印象的でした。」と振り返ります。さらに、自身も子どもたちから多くのことを学び、154kgへの挑戦も子どもたちの応援が大きな力になったと語りました。
最後には、自身の経験を交えながら、「できないかもしれないと思って挑戦をやめるのではなく、今日みたいに少しだけ一歩踏み出してみてください。応援は、その一歩を踏み出す勇気になります。」とメッセージを送り、「今日帰ったら、お父さん、お母さん、お友達、誰でもいいので一人だけ応援してみてください。」と子どもたちへ呼びかけました。
今回の交流授業で子どもたちが持ち帰ったのは、競技の楽しさだけではありません。誰かを応援すること、そして応援されることで勇気をもらえること。その大切さを実感した経験は、これからの日常の中でも子どもたちの背中をそっと押してくれるのではないでしょうか。
応援の力を未来へつなぐ 日本パラ・パワーリフティング連盟の挑戦

今回の交流授業は、パラ・パワーリフティングという競技を知ってもらうだけではなく、「応援」が人の挑戦を支える力になることを子どもたちへ届ける機会となりました。
日本パラ・パワーリフティング連盟は、強化合宿による競技力向上だけでなく、学校との交流授業や地域との連携を通じて、パラスポーツの普及や共生社会の実現にも取り組んでいます。
スポーツを通して人と人とのつながりを育み、次の世代へ思いをつないでいく――今回の福島での交流授業も、その取り組みを象徴する一日となりました。今後もこうした活動が全国へ広がり、多くの子どもたちへ「応援の力」が届けられることに期待したいところです。
日本パラ・パワーリフティング連盟 概要
日本パラ・パワーリフティング連盟は、パラ・パワーリフティング競技の普及・発展と競技力向上を目的に活動する団体です。国内大会の開催や日本代表の強化・育成をはじめ、パラリンピックなど国際大会への選手派遣、体験会や学校での交流授業などを通じて、競技の魅力を広く発信しています。
また、地域との連携や教育活動にも力を入れ、スポーツを通じた共生社会の実現を目指した取り組みを続けています。
公式サイト:https://jppf.jp/index