霧島、2度目の横綱挑戦 八角理事長が重ねる「自身の昇進劇」と稽古の力

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2026-07-11 14:00
霧島、2度目の横綱挑戦 八角理事長が重ねる「自身の昇進劇」と稽古の力

12日初日の大相撲名古屋場所(IGアリーナ)で、大関霧島が2度目の綱とりに挑む。3月の春場所から2場所連続優勝を目指した5月の夏場所は12勝3敗。決定戦まで進みながら本割では勝った若隆景に敗れて、優勝同点だった。浅香山審判部長(元大関魁皇)は、「(次は)レベルの高い優勝。それは絶対」と厳しい条件を示しながらも、今場所が横綱への挑戦場所であることを明言した。30歳の果敢な戦いが始まる。

横綱昇進には、横綱審議委員会(横審)からの推薦を得る必要がある。1950(昭和25)年、当時の東富士、照国、羽黒山の3横綱の途中休場を期に横綱の諸問題を審議するために発足した。内規には昇進条件として「大関で2場所連続優勝か、それに準じる成績」と謳われている。

協会は横綱に値すると思われる力士が出てきた場合に、この横審に昇進を「諮問」する。そこで、推薦の「答申」を得られれば、臨時理事会を開いて正式に昇進を決める。先場所の霧島は4度目の優勝こそ逃したものの、「優勝に準ずる成績」に当てはまっている。

なぜ「高いレベル」を求められるのか? 

そこで名古屋場所だが、今度は単純に「優勝か、それに準ずる成績」ではなく、協会側から「レベルの高い優勝」という条件が付けられた。なぜか。第一の理由は、先場所は大の里と安青錦が全休、豊昇龍と琴桜も途中休場したことを受け、霧島は横綱、大関戦が1番もなかったことだ。加えて敗れた相手はいずれも平幕力士。それなのに優勝を逃して、「さあ横綱挑戦」と言われても、盛り上がりに欠けるのは当然だ。

その横綱、大関陣との直近の対戦をみると、優勝した春場所では豊昇龍には勝ち、対戦成績を12勝13敗と肉薄させた。しかし、2大関には敗れた。対安青錦戦は1勝4敗、琴桜には14勝8敗だ。この場所も休場した大の里とは1月の初場所で対戦したが、敗れた。こちらは過去10戦で一度も勝てずに全敗となっている。

番付編成を預かる浅香山審判部長は夏場所終了時点で、「(来場所は)他の横綱、大関も出てくる。甘くない。厳しいと思うが、誰が相手でも結果を出していかないといけない」と話した。安青錦は名古屋場所では関脇に転落しているが、賜杯争いではライバルになるだろう。彼らを打ち破って優勝出来るか、がポイントになる。

12勝か、14勝か…協会の本音と「場所中の空気」がもたらす可能性

次は、このところの優勝成績の低さがある。昨年の九州場所以降、優勝力士は安青錦の2連覇、霧島、若隆景だが、勝ち星はいずれも12勝。角界では15日制での全勝、もしくは14勝での優勝を「高いレベル」と評している。13勝まではしっかりと評価される。これが12勝になると、レベルが低い感覚。過去4例ある11勝での賜杯は、それ以下となる。霧島の場合は、先場所の評価を挽回するために数字上も高いレベルが欲しいのが協会の本音だろう。

霧島は、最初の大関時代に2度目の優勝を飾った2023年九州場所の13勝が自己最高成績。「高いレベル」と言われる14勝以上には届いたことがない。客観的にみると、状況は厳しいと言わざるを得ない。

だが、実際には12勝か13勝でも優勝を果たせば、新横綱誕生の可能性は高いと思う。11勝では物足りないが、3場所連続12勝以上で優勝、優勝同点、優勝なら、4力士との対戦の有無に関係なく、横審へは諮問をするのではないか。協会は「場所中の空気」で立場を変えることがままある。優勝を逃したとしても、13勝以上の優勝同点、または優勝と1差の優勝次点ならば、同様の議論が起こりうる。

最大の追い風は「稽古熱心な姿勢」 理事長自身の昇進劇と重なる影

追い風なのは、八角理事長(元横綱北勝海)以下、協会上層部が霧島には好印象を持っていることが挙げられる。なぜなら「誰よりも稽古をして、稽古で強くなっている」と見ているからだ。昭和の時代は毎日50番以上土俵に上がる力士がザラにいた。理事長もその一人。当時、所属した九重部屋には優勝31度の大横綱千代の富士がおり、横綱同士の稽古が延々と行われ、最後には幕下以下の力士同様にぶつかり稽古で泥まみれになったものだ。

だが、今は20番取ることはまれになった。下手をすると10番以下で切り上げる。ぶつかりも軽く1、2回転がる程度が多い。そんな関取衆の中で霧島の稽古量は群を抜く。しかも、一昨年夏場所で首のけがで大関から転落したが、その後、回復してからは更にその傾向が強くなった。年齢的にはもう若くはないが、支度部屋でも最近の好成績には「稽古のお陰」と自信をみせる。下半身の安定ぶりを喜ぶ理事長は「稽古をやっている証拠でしょう。それしかない」と目を細めている。

横綱は全力士の目標。それだけに「稽古熱心な姿勢」は角界の理想と言ってよい。実は理事長自身も横綱に昇進する際に12勝で優勝した次の綱とり場所は13勝だった。制したのは全勝の大乃国。優勝に次ぐ成績ではあったが、2差あった。いわゆる優勝次点ではなく、「昇進は難しい」と言われる中で横審を迎えた。結果は「稽古熱心さと人柄」を理由に満場一致で推薦の答申を得た経験がある。

最終盤の粘りと、巡ってきた絶好の好機

小錦以降、外国出身の大関は安青錦まで14人誕生しているが、うちモンゴル出身者では霧島以外の朝青龍、白鵬、日馬富士、鶴竜、照ノ富士、豊昇龍はいずれも横綱に昇進した。本人にはこれも大きな発奮材料の一つだろう。

初の綱とりだった24年初場所は13日目まで2敗で優勝争いに加わった。だが、14日目琴ノ若(現琴桜)、千秋楽は2敗で優勝した照ノ富士に連敗した。3度目の優勝だった春場所も、14日目の安青錦、千秋楽の琴桜と連敗。勝負どころで、もろさも出る。最終盤で粘りを見せられるか、も「綱」への大きな関門となりそうだ。

ライバルの一人、先場所の覇者若隆景は場所前の稽古でけがをして休場になった。絶対的強者が不在の土俵で、霧島はこの好機を生かせるか。

(竹園隆浩/スポーツライター)

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