三井情報 ローカル5G と Wi‑Fi ひとつのSIM認証で共通化させるメリットやコストを無線技術士に聞く ローカル5GとWi‑Fiの認証統合がもたらす新たな無線運用のかたち 多数端末を管理する環境にも対応

2026-07-17 19:27

企業・団体や産業現場で利用する無線アクセス手段は、ローカル5G、Wi-Fi、携帯電話キャリア網(LTE/5G)とさまざまな“波”が混在する。

また、複数の無線ネットワークが併存する環境では、認証方式や運用がネットワーク種別ごとに異なり、管理の煩雑化が今も課題。

さらに、携帯電話キャリアネットワークでは、SIM 認証が標準である一方、企業が運用する Wi-Fi では、証明書やパスワードによる認証が主流で、継続的な管理負荷やセキュリティ上の懸念も生じている。

―――こうした状況を踏まえ、SIM認証を企業Wi-Fiにも適用することで、セキュリティ強化と運用負荷低減の両立を図るアプローチへの関心が高まっている。

SIM認証 で Wi-Fiクライアント認証するというソリューション

三井物産グループの三井情報(本社:東京都港区南青山)は、これまでおもに通信キャリアのネットワークで利用されてきた SIM(Subscriber Identity Module:加入者識別モジュール)による認証方式を用いて、企業が運用する Wi-Fiネットワークへと適用領域を広げる実証実験に成功した。

三井情報は今回の実証実験の結果を踏まえ、コスト・運用負荷の低減とセキュリティの強化を両立し、ローカル5G と Wi‑Fi を組み合わせた次世代無線通信環境の普及を推進していく。

iOS Android Windows で正常動作を確認

三井情報は、ローカル5G と Wi-Fi を同一の SIM認証による仕組みに着目し、認証基盤の一元化とシームレスなネットワーク利用の実現に向けて、XACK(本社:東京都千代田区)と共同で SIM認証 による Wi-Fiクライアント認証の技術検証に取り組んできた。

今回、三井情報が ローカル5G を導入・運用している顧客に提供中の SIMカードを用いて、XACK が開発した EAP-AKA/AKA’対応 RADIUS サーバーと組み合わせ、Wi-Fiネットワーク上における SIM認証の動作を確認。

三井情報のラボ環境で検証し、複数の OS および端末種別(iOS、Android、Windows)で正常に動作することを確認できた。

この ローカル5G と Wi‑Fi で SIM認証の共通化が実現すると、次の5つのメリットを生む。

1 認証方式の統一

セルラー・Wi-Fiを問わず同一のSIM/EAP-AKA方式で認証でき、ネットワーク種別ごとに異なる認証基盤を構築・運用する必要がなくなる。

2 コストの低減

Wi-Fi と ローカル5G を用途に応じて併用することで、既存の Wi-Fi 環境を活かしながら必要な領域のみ ローカル5G を導入でき、無線ネットワーク全体のコスト低減が期待できる。

3 運用負荷の軽減

ユーザーごとの認証情報の管理が SIM情報に集約されるため、証明書の発行・更新・失効管理やパスワードの定期変更といった、従来方式で必要とされる継続的な運用負荷を軽減できる。

4 セキュリティの強化

秘密鍵を SIMカードのセキュアエレメントに格納するため、EAP-TLS/PEAP と比較して鍵の漏洩・窃取リスクを本質的に低減できる。

5 ユーザー体験の向上

SIMカードが挿入されていれば証明書のインストールもパスワード入力も不要で自動認証が完了するため、利用者がネットワーク接続を意識する必要がなくなる。

SIM認証を活用した認証統合の実用化へ
顧客の無線通信環境 高度化を支援

三井情報は、本技術検証の結果を踏まえ、SIM認証を活用した認証統合の実用化に向けた取り組みを推し進める。

Wi-Fi における SIM認証は、ローカル5G とのハイブリッド無線環境にとどまらず、証明書運用の負荷軽減を求める法人オフィスや、多数端末の管理が課題となる教育機関、画面操作が難しい IoTデバイスへの認証手段など、幅広い無線利用シーンでの活用が見込まれる。

三井情報は、こうした多様なユースケースの検討・提案を積極的に進め、顧客の無線通信環境 高度化を支援していく。

なぜ SIM 認証の共通化が必要なのか
Wi-Fi とローカル 5G を併用した場合のコスト感
想定ターゲットと導入メリット

そこで今回、三井情報 デジタルインフラ第一技術本部 東日本第二技術部 第三技術室 リーダー菅野修平 第一級陸上無線技術士に、「なぜ SIM 認証の共通化が必要なのか」「Wi-Fi とローカル 5G を併用した場合のコスト感」「想定ターゲットと導入メリット」などについて聞いた。

まずは、ローカル 5G と Wi-Fi を組み合わせた次世代無線通信環境が必要な理由について、三井情報 菅野リーダーはこう教えてくれた。

ローカル 5G と Wi-Fi を組み合わせる
それが現実的かつ有効な解決策

企業や産業現場においては、無線ネットワークに対する要求が高度化する一方で、現実的な制約も存在しています。

まず、多くの現場では Wi-Fi が広く利用されており、端末の豊富さや導入のしやすさといった理由から、可能であれば Wi-Fi で完結させたいというニーズがあります。

しかし一方で、

・電波干渉の影響を受けやすく、通信品質が不安定になる

・低遅延や高い信頼性が求められる制御用途には適さない

といった課題もあり、すべての用途を Wi-Fi だけでカバーすることが難しいケースが増えています。

これに対してローカル 5G は、

・無線リソース制御による安定した通信

・低遅延・高信頼通信の実現

といった特長を持ち、ロボット制御や遠隔操作などの用途に適しています。

しかしながら、ローカル 5G を全面的に導入する場合には、

・初期投資や運用コストが相対的に高い

・用途によっては必要以上の性能となる可能性がある

といったコスト面での課題も存在します。

このように、「Wi-Fi だけでは要件を満たせない領域がある一方で、ローカル 5G に全面的に置き換えるのは現実的ではない」というのが多くの企業が直面している課題です。

そのため、用途や要件に応じて

・高信頼・低遅延が求められる領域にはローカル 5G

・一般的なデータ通信には Wi-Fi

を使い分けることで、性能とコストのバランスを最適化する、すなわち「ローカル 5G と Wi-Fi を組み合わせる」というアプローチが、現実的かつ有効な解決策として求められています。

なぜ SIM 認証の共通化が必要なのか

ローカル 5G と Wi-Fi を併用する際、ネットワークごとに異なる認証方式を運用することは、

・ユーザーの利便性低下

・運用管理の複雑化

といった課題につながります。

現状、Wi-Fi では証明書やパスワード認証が主流であり、

・証明書の発行・更新・失効管理

・パスワード管理

などの継続的な運用負荷が発生しています。

また、認証方式を取り巻く環境も変化しており、証明書管理や従来方式の見直しが求められています。

こうした背景の中で、SIM 認証を Wi-Fi にも拡張することで、以下のメリットが得られます。

◆ 認証方式の統一:ローカル 5G と Wi-Fi を同一の SIM/EAP-AKA で認証可能

◆ コスト低減:Wi-Fi を活かしつつ、必要な領域のみローカル 5G を導入できる

◆ 運用負荷軽減:認証情報を SIM に集約し、証明書管理やパスワード運用を削減

◆ セキュリティ強化:秘密鍵を SIM に格納することで漏洩リスクを低減

◆ ユーザー体験向上:パスワード入力不要で自動接続

このように、SIM 認証の共通化は、利便性・セキュリティ・運用性を同時に改善できる手段と考えています。

Wi-Fi とローカル 5G を併用した場合のコスト感

一般的に、ローカル 5G は

• 基地局やコア設備の導入

• 免許取得

などが必要となり、Wi-Fi よりも初期投資が大きくなる傾向があります。

一方で本取り組みでは、Wi-Fi とローカル 5G を用途に応じて併用することにより、

• 全面ローカル 5G 化を避ける

• 既存 Wi-Fi 資産を活用する

ことで、無線ネットワーク全体としてのコスト低減が期待できます。

そのため、考え方としては「ローカル 5G で置き換える」のではなく、必要な箇所に限定して導入することで全体最適を図るというアプローチになります。

導入企業側のメリット

◆ 認証基盤の統一による運用負荷の軽減

◆ 証明書管理やパスワード運用の削減

◆ セキュリティ強化(SIM ベースの鍵管理)

◆ Wi-Fi と 5G の最適配置によるコスト最適化

利用する社員側のメリット

◆ パスワード入力不要でシームレスに接続

◆ ネットワーク種別を意識しない利用体験

◆ 安定かつ高品質な通信環境の利用

特にユーザー体験の面では、「ネットワークを選ばない」環境が実現できることが大きな価値です。

今後の展開 ローンチ・事業化

現在は、ローカル 5G の既存ユーザーを中心に、トライアル的な提案を進めています。

一方で、本取り組みはローカル 5G 導入を前提とするものに限定せず、

• モバイル対応端末の増加

• 認証方式見直しニーズの高まり

といった背景を踏まえ、

SIM による認証を Wi-Fi にも適用する仕組みとして、より広い範囲での活用を検討しています。

今後は、

• ローカル 5G との連携

• Wi-Fi 単体環境での活用

の両軸で展開し、企業の無線利用の高度化に貢献していきます。

想定ターゲット

三井情報としては、まず以下のような業種・領域をターゲットとしています。

◆ 製造業(工場・プラント)

◆ インフラ(電力・エネルギー)

◆ 物流・建設など広域・移動体が関わる現場

これらの領域は、

◆ 高信頼・低遅延通信のニーズ

◆ ローカル 5G 導入実績

があるため、親和性が高いと考えています。

また、ニュースリリースでも示した通り、

◆ オフィス

◆ 教育機関

◆ IoT デバイス用途

など、多数端末を管理する環境にも適用可能です。

また、企業規模は中堅~大企業(多数端末・多拠点管理)、DX 投資を進めている企業を中心に導入しやすいと想定しています。

(三井情報 デジタルインフラ第一技術本部 東日本第二技術部 第三技術室 リーダー菅野修平 第一級陸上無線技術士)

◆三井情報(MKI)
https://www.mki.co.jp/

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