フィジカルAI革命 ものづくり大国の復権なるか 日中ヒューマノイド最前線 ジェンスン・フアンCEO「次の産業革命は日本」【news23】

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2026-07-22 22:14

今月、東京で開かれたイベントです。AIを搭載した人型ロボットは「フィジカルAI」とも呼ばれています。

【写真で見る】約15年前に誕生 アニメキャラクターを披露するロボット

中国企業が世界市場を席巻するなか、いま、日本企業も巻き返しに向け、動き始めています。

「次の産業革命は日本で起きる」エヌビディアCEOが来日

都内のゲームセンターで人々はスマホを掲げ、その人が現れるのを心待ちにしていました。

この日、ゲーム大手セガのイベントに招かれたのは、アメリカ半導体大手「エヌビディア」のCEOジェンスン・フアン氏です。時価総額約800兆円。「エヌビディア」はAIブームを牽引する存在で、フアン氏の発言は、株式市場を大きく動かすほどの影響力を持ちます。

先週来日したフアン氏。15日の夜に姿を現したのは、東京・神田の飲食店です。

酒を片手にフアン氏の周りを囲む人たちは、半導体大手のキオクシアや東京エレクトロンなど、日本の名だたる企業のトップらです。

そして16日、出席したのは日本政府が主催する国産AIの開発に向けたイベントでした。

エヌビディア ジェンスン・フアンCEO
「日本初の国家AIインフラのためのシステムを提供できることを光栄に思う」

フアン氏の来日の目的は、日本政府や大手企業と協力し日本独自のAI技術の開発を進めることです。

エヌビディア ジェンスン・フアンCEO
「メイド・イン・ジャパンは、最高品質、最高精度を意味します」
「フィジカルAIの時代が来た。次の産業革命は日本で起きる」

「フィジカルAI」とは、AIを“頭脳”、ロボットを“身体”として組み合わせ、現実世界で自らが判断し動く技術です。

その象徴が人の姿をした「ヒューマノイド」です。

世界市場を席巻する日本独自のヒューマノイドの開発は可能なのか。日本のフィジカルAIの現在地を追いました。

中国がフィジカルAI市場を席巻 奪われた“主役”の座 

7月、都内で開かれたヒューマノイドの技術を競うイベントです。

参加者
「人の道具を使ってロボットが除雪するところに着目しました」

会場を埋めたのは、中国メーカー製のヒューマノイドです。

ロボット開発の分野で世界トップシェアを誇る会社「ユニツリー」。世界に先駆けて量産化し、日本でも病院や空港で導入に向けた実証が始まっています。

急成長を支えたのは、中国政府による強力なバックアップです。

Unitreeグローバル事業責任者 王宇清さん
「ロボットを開発する企業と使う企業を政府がマッチングさせて、具体的な方向性を示したことが急速な発展につながった」

政策や資金面などで政府からの後押しをうける中国企業は2025年、いまやヒューマノイドの世界出荷台数の約80%を占めています。

ロボット開発において主役を中国に奪われている日本ですが、かつてこの分野で世界をリードしていた時代もありました。

かつて世界をリードした日本のヒューマノイド なぜ日本は開発が遅れたのか

約15年前、早稲田大学の研究室で表情豊かにアニメのキャラクターのモノマネを披露するロボットが生まれました。

さらに、「肺」で空気を送り込み、柔らかい唇や舌を動かして人間のようにサックスを演奏するロボットも生まれました。

ヒューマノイド研究の草分け的な存在である、早稲田大学の高西淳夫研究室では、様々な研究を続けてきました。

早稲田大学 高西淳夫教授
「人型のロボットを作ることで、人そのものをロボット工学的な視点から解明しようと」

約半世紀前、世界で初めての一歩がここ「早稲田大学ヒューマノイド研究所」で踏み出されました。そして2005年、30年の時を経てまるで人間のような滑らかな動きになりました。

それなのに、なぜ日本はヒューマノイドの開発で遅れをとったのでしょうか。

早稲田大学 高西淳夫教授
「(転機の)ひとつはAIが数年前から出てきたこと」
「(日本は)一歩二歩足りなくて、実用には至らなかったという歴史があったのではないか」

技術はあったものの、本格的な実用化に結び付けられなかった日本。その間に世界の状況が一変しました。

巨額を投じ、AI開発に積極的に乗り出したアメリカや中国。そのAI技術を搭載したことで、飛躍的にヒューマノイドの進化につながったのです。

人の代わりとなって動くヒューマノイドは成長産業です。大手調査会社の予測では、今後約10年で9倍以上の巨大市場に膨れ上がるとされます。

かつて世界をリードした日本。その復権をかけた挑戦が始まっています。

巻き返しの鍵を握る「純国産」 政府も支援

埼玉県の創業3年のスタートアップ企業。倉庫を改造した拠点で開発されているのは「純国産」のロボットです。

Highlanders 増岡宏哉社長
「ほぼ全て埼玉県のこの工場から車で30分ぐらいの距離のところで作っていただいている部品」

この若い力に大手が声を掛けました。三菱自動車は7月、開発で手を組み国内勢で先陣を切って量産に乗り出しました。

まずは工場での導入を目指し、エンジンの組み立てなど細かな作業で活用の可能性を探ります。

Highlanders 増岡宏哉社長
「日本のもの作りの技術が中国に対してまさっている部分は確実にあると思う。最初の一歩である。美しい一歩ではなくて泥臭い、それでも勇気が必要な一歩だと思う」

フィジカルAIの開発をめぐっては、ソフトバンクやソニーなど日本の大手44社が設立した新会社に今後、政府は約1兆円を支援する計画です。

エヌビディア ジェンスン・フアンCEO
「日本は長年、精密で大規模なものづくりを得意としてきた。AIとその技術を融合することで、知識を備えた製造や次世代ロボットが実現できます。日本は有利な立場にあります」

人手不足や熟練技術者の減少など日本が抱える課題は、フィジカルAIが最も必要とされる現場でもあります。

はたして日本は巻き返せるのでしょうか。

“総額370兆円超”の「フィジカルAI」も含む新たな官民投資とは…?

小川彩佳キャスター:
世界的な半導体企業「エヌビディア」のCEOであるフアン氏が来日し、日本企業(富士通、川崎重工業、ファナック、安川電機)との提携を発表しました。

フアン氏は「フィジカルAIによる次の産業革命はメイドインジャパンで生まれるだろう」と話していました。

真山仁さん:
日本のロボット技術はもともと世界的に評価されており、十分なポテンシャルはあると思います。ただ、総合力で見るとまだ足りない部分も多く、まずは“国産”にこだわりすぎないことが重要です。

一方で、海外企業のトップが来日した際の発言には、当然彼らのビジネスとしての“営業トーク”も含まれています。ですから、手放しで舞い上がるのではなく、冷静に交渉し、したたかに向き合っていく必要があります。

藤森祥平キャスター:
政府が21日に「新たな成長戦略」を決定しました。17の戦略分野に対し、2040年度までに「総額370兆円超」を官民で投資する計画が盛り込まれています。

【17の戦略分野に「総額370兆円超」の官民投資】
(1)AI・半導体
(2)デジタル・サイバー
(3)情報通信
(4)量子
(5)防衛産業
(6)航空・宇宙
(7)海洋
(8)造船
(9)重要鉱物など
(10)バイオ
(11)創薬・先端医療
(12)エネルギー安全保障
(13)核融合発電
(14)国土強靱化
(15)港湾
(16)フードテック
(17)コンテンツ

“AI・半導体”の分野に「フィジカルAI」も含まれていくということです。

真山仁さん:
こういう分野に目を向けること自体は良いのですが、現状は先端技術の可能性がありそうなものを、ざっくりと羅列しただけに過ぎません。アメリカや中国は、すでに結果を出している特定の企業に焦点を当てて支援を行っています。

しかし日本のやり方では、単なる“ばらまき”に終わってしまう恐れがあります。 だからこそ、経済産業省は自ら研究の現場へ足を運び、そこで何が行われているのかを正確に把握すべきです。“370兆円”という数字を掲げるのは簡単ですので、もっと繊細でなくてはいけないと思います。

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<プロフィール>
真山仁さん
小説家 2004年「ハゲタカ」でデビュー
新著にロッキード事件をもとにした「ここにいるよ」

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