核抑止は「フィクション」?“なぜ相手は攻撃しないと信じられる?”湯崎前広島知事 INF全廃条約・米ソが核軍縮に歩み寄ってから30年 進まぬ核廃絶 【サンデーモーニング・風を読む】

核兵器のない世界を願う一方で、聞こえてくるのは、「相手からの攻撃を抑止するためには核兵器が必要だ」という主張です。「核抑止論」について考えます。
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被爆から81年…「一日も早い核兵器廃絶を」
ウクライナ・キーウでは、ロシア軍による弾道ミサイルが。ガザやレバノンでは、イスラエルによる激しい攻撃が。世界各地でいまだ戦火が絶えない中、8月6日、広島は被爆から81年目となる原爆の日を迎えました。
こども代表 河野和希さん
「私たちが笑い合っている時にも、尊い命が失われている現状があります」
過去最多、121の国と地域などから5万人が参列する中、広島市の松井市長は…
広島市 松井一実 市長
「世界の為政者のみなさん。市民社会は一日も早い核兵器廃絶を願っています。いったい、いつまで失望させ続けるのですか」
戦争を続ける為政者からは…
プーチン大統領(2024年5月)
「ロシアの戦略核部隊は、常に戦闘準備態勢にある。誰であれ我々を脅かすことは許されない」
トランプ大統領(2026年4月)
「彼ら(イラン)が本来あるべき場所、石器時代へと引き戻すつもりだ」
トランプ氏はSNSでも「ひとつの文明全体が死に絶えようとしている」と、核兵器使用を想起させるような投稿まで行っています。
これまで、核兵器を持つことで敵に攻撃を思いとどまらせ、戦争を抑止するという「核抑止」という考え方は常々語られ、現実的であるといった意見も、しばしば聞かれてきました。
核で脅せば攻撃してこない「核抑止」はフィクション?
2023年、広島選出の岸田総理が議長を務めたG7広島サミット。発表された「広島ビジョン」で核兵器は「防衛目的のために役割を果たし、侵略を抑止」と「核抑止論」を肯定する表現が盛り込まれ、被爆者らを失望させました。
2023年、平和記念式典の場で、当時の広島県知事、湯崎英彦さんは…
広島県 湯崎英彦 知事(2023年)
「万が一、核抑止が破綻した場合、地球上の全ての命に対し責任を負えるのですか」
そして、2025年は…
広島県 湯崎英彦 知事(2025年)
「核抑止がますます重要だと声高に叫ぶ人たちがいます。しかし、本当にそうなのでしょうか。抑止とは、あくまで頭の中で構成された概念、または心理、つまりフィクションであり、万有引力の法則のような普遍の物理的真理ではない」
「核抑止はフィクション」、つまり非現実的だと語った真意は何か、湯崎前広島県知事に改めて尋ねました。
湯崎英彦 前広島県知事
「歴史的にみても、多くの自信過剰なリーダーが戦争を仕掛けて、非常に大きな被害を被ってしまうということはずっと起きている。むしろ非合理的なリーダーは結構出てくる。そういう中で、核抑止が常に機能するという考え自体が、現実的じゃない」
実は、かつては米ソのリーダーによる合理的判断によって、ある程度「核抑止」が機能したと思える時代がありました。
冷戦期、核戦力が均衡していた米ソは、互いの首都に届く長距離核ミサイルを保持。それによって、ひとたび使えば、破滅的な結果を招く核の使用を、双方に思いとどまらせます。
その一方で、開発競争が続いていた中距離核ミサイルについては削減交渉を進め、1987年、中距離核戦力全廃条約を締結。
1988年には、ソ連の核ミサイルが廃棄される様子が見られ、条約締結によって、両国で核兵器の廃棄が実際行われたのです。
広がる核の不安…「非合理的な判断は繰り返されている」
米ソが核軍縮に歩み寄った時から30年。
トランプ大統領(2018年10月)
「条約を終わらせ、離脱する」
トランプ大統領は中国が条約に入っていないことなどを理由に、一方的に中距離核戦力全廃条約からの離脱を表明。さらに、米ロ両国の間で残っていた唯一の核軍縮条約である新戦略兵器削減条約も、2026年2月に失効しました。
そして現在、両国は局地戦などを想定し、「使える核」ともいわれる小型化した「戦術核」の開発を進めています。
核の不安が世界に広がる中、「核抑止はフィクション」だと語る湯崎前広島県知事。アメリカによる核抑止なしで、中国やロシアなどと、どう向き合えばいいのでしょうか。
湯崎英彦 前広島県知事
「核抑止ということを強調していくと、エスカレーションもさらに進んでいく。日本が核抑止を強化するというのは、緊張を高める方向に行く。日本をより危険に晒していくだけ。だからこそ、そこに乗らないことがまず第一。対話の糸口というのも常に見つけていく」
核でおどせば、相手も攻撃してこないという「核抑止」。これは現実的だ、という意見に対して湯崎前広島県知事は…
湯崎英彦 前広島県知事
「人間は非合理的な判断をするということは繰り返し起きている。そういう中で、核抑止の世界だけは人間が合理的に判断をするという世界がまだ残っていて、なんで“相手は攻撃しない”ということだけは信じられるんですか」
核抑止は本当に現実的といえるのでしょうか。