AIで変わる戦争の記憶継承…ホログラムで「証言を永遠に」 一方で偽画像が歴史“上書き”のリスクも【news23】

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2026-08-12 13:24

戦後81年。記憶の風化が進むなか、新たな取り組みが行われています。「AI」を使って戦争の証言を伝える…。ただ、AIで作られた偽の画像が歴史を“上書き”してしまう危険性もはらんでいます。

【写真で見る】AI生成された“偽画像” 犠牲者を元にした架空の人物の画像も…

AI活用で「証言を永遠に」 AI搭載のホログラムと直接会話も

記者
「ホロコーストの生存者が舞台の上にいますが、本人ではなく、ホログラムの映像が映し出されています」

ドイツ西部にある歴史博物館で、特殊なスクリーンに立体的な映像「ホログラム」として映し出されたエファ・ヴァイルさん。

AIが搭載されていて、直接会話することができます。

エファ・ヴァイルさんは、1942年から3年間にわたってナチス・ドイツによって収容所に入れられ、その後、生還しました。

91歳となり、当時のことを直接証言することが難しくなり、「最新技術で記憶をつなぐ」取り組みが進められています。

この日、博物館には多くの中高生が訪れていました。

学習に訪れたドイツ人
「歴史が繰り返される不安は?」

ホログラムのエファ・ヴァイルさん
「歴史は繰り返されません。今はメディアがあるから。当時はコンピュータもテレビも新聞もありません。だからナチスは邪魔されずに、1年半かけて大量殺りくを準備できた」

エファさんは、200問以上の想定質問に答える様子を3日間かけて収録。AIは、収録したインタビューの中から、最適な答えを導き出しています。

ホログラムのエファ・ヴァイルさん
「人を差別することは恐ろしいことです。寛容であろうとしてください。思いやりを持ち、人間の心を忘れないでください」

開発したドルトムント工科大学 ヨシュア・グロイドツキーさん
「まだ多くの生存者が住み、虐殺行為の多くがドイツで起きた。私たちには、彼らの経験を証言として永遠に伝えていく責任がある」

AI生成の偽画像が拡散 歴史が作り変えられる危険性も指摘

こうした「記憶の継承」にAIが活用される一方、歴史が作り変えられる危険性が指摘されています。

ポーランドにあるアウシュビッツ強制収容所。第二次世界大戦の最中、ナチスによって大量虐殺が行われ、ユダヤ人ら110万人以上が犠牲になりました。

アウシュビッツ強制収容所の中で子どもを抱えて歩く女性の写真。SNS上では「ガス室に続く列から弟を救った」と紹介されています。

アウシュビッツ・ビルケナウ博物館 パヴェル・サヴィツキさん
「残念ながらこれは存在しないもの。ランプの配置が違う。通常は反対側にある。この女性囚人は髪が切られていない。本来は切られているはず。感動話の多くはAI作成です」

アウシュビッツ・ビルケナウ博物館のパヴェル・サヴィツキさんによると、AIが作ったとみられる偽画像は、2025年5月ごろからSNS上で増え始めたといいます。

アウシュビッツ・ビルケナウ博物館 パヴェル・サヴィツキさん
「木造のバラック。約400人の囚人が収容されていた。戦時中のバラック内部の写真は1枚も存在しません」

当時、ナチスは収容所を秘密裏に運営していて、写真の撮影を厳しく制限し、証拠となる解放前の写真はわずかしかありません。

しかし、バラック内部とみられる偽画像も確認されています。

アウシュビッツ・ビルケナウ博物館 パヴェル・サヴィツキさん
「囚人服、ベッド、ランプなどシンボルを結びつけ、フェイク画像を作り出そうとしています」

こうした偽画像はすでに数百枚以上は存在し、日々精巧なものに進化しているといいます。偽画像が蔓延することで、歴史的事実があいまいになることが危惧されているのです。

アウシュビッツ・ビルケナウ博物館 パヴェル・サヴィツキさん
「彼らの目的はお金です。多くの人が閲覧すれば、公開した人が収益を得ることができる。今後、何が真実で、何が嘘かを見分けることができなくなるでしょう」

遺族「吐き気がする」 犠牲者を元に架空の人物を生成か

さらに、犠牲者を冒涜する事態まで起きています。

アウシュビッツ・ビルケナウ博物館 パヴェル・サヴィツキさん
「これが本物の写真です。そして誰かがAIに、彼女の新たな画像を作るよう指示した。これは彼女ではありません」

犠牲者の写真を元に、新たに架空の人物が作られているのです。こうした事態に、犠牲者の遺族らは何を思うのか…

私たちは、写真に写る女性の遺族を訪ねました。

写真に写る女性の遺族 ミシェル・ヴァテルマンさん
「きれいではないが、私が持つ唯一の写真です」

写真の女性はヘレナ・ウォーターマンさん。ミシェル・ヴァテルマンさんの叔母にあたりますが、彼が生まれる前にアウシュビッツに連行され、殺害されました。

偽画像の存在について伝えると…

写真に写る女性の遺族 ミシェル・ヴァテルマンさん
「吐き気がします。これは殺された彼女の唯一の遺品。彼女の記憶をそっとしておいてほしい。尊重し、悪用しないでほしい」

残された家族の多くは、亡くした人の記憶や遺品などはほとんどありません。

ミシェル・ヴァテルマンさんは「つまずきの石」と呼ばれる、名前や亡くなった日などが刻まれたプレートを、ヘレナさんが当時住んでいた家の前に埋めて、生きた証を残そうとしています。

写真に写る女性の遺族 ミシェル・ヴァテルマンさん
「真実は苦痛ですが、語らなければなりません。彼女の写真を見て、起きた出来事を知ることで、その記憶が生き続ける」

記憶の風化が叫ばれる中で次々と生み出されるAI画像の存在。SNS上では規制が難しく、歯止めが利かない状況が続いています。

AIで変わる「戦争の記憶」の継承

小川彩佳キャスター:
戦争の記憶をどう継承していくのかは、日本では大きなテーマになっています。アメリカではどうでしょうか。

ニコラス・エドワーズさん:
日本と違うところは、アメリカはいまも戦争を続けていることです。第二次世界大戦の終戦をもって戦争が終わることなく、その後も数々の戦争を続けてきました。そのような状況で良くも悪くも、多くのアメリカ人は戦争に対する議論に関しては、かなりフランクに行っていると思います。

アメリカでは、戦争を「当たり前にあるもの」と認識している人が多く、そこが日本と違うところなのかなと思います。

藤森祥平キャスター:
AIによって、歴史が書き換えられてしまう可能性があります。実際に、歴史を紹介しているSNSアカウントの中にも、AIで作成された原爆被害の偽画像がありました。

知らない人は偽画像を見て、本物だと信じ込んでしまいますよね。

ニコラス・エドワーズさん:
確実に信じ込んでしまうと思います。このような画像を見て、「フェイクじゃないのかな」と疑わなければいけない状況をAIが作り出していることは、実体験を語り続けている方の思いを踏みにじることだと思います。

過去の事実を知り、同じことを繰り返さないために、ホログラムや画像の展示を行っているはずなのに、このような偽画像が出てくると、一番大切な目標が達成できなくなってしまいます。そのようなことがあってはならないと思います。

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<プロフィール>

ニコラス・エドワーズ
米国出身 34歳 日本の歌に魅せられ17歳で来日
歌手・俳優・モデルとしてマルチに活動

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