「7秒」で生死分ける戦場 ドローン攻撃を再現…“完全非公開”施設でのAI訓練の実態 日本進出へ開発者の本音

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2026-08-15 06:00
「7秒」で生死分ける戦場 ドローン攻撃を再現…“完全非公開”施設でのAI訓練の実態 日本進出へ開発者の本音

戦場で存在感を増しているドローン。
アメリカでは、すでにAIを使ってドローン攻撃などを再現する訓練が行われています。

【写真で見る】完全非公開 訓練施設に潜入

実際に体験してみると、ドローンの音が聞こえてから攻撃を受けるまで、わずか7秒。
AIによって変わりつつある戦場を、記者が体験しました。

完全非公開 訓練施設に潜入

向かったのはアメリカ、ニューヨーク郊外。治安当局の特殊部隊などが訓練に使っている完全非公開の施設です。
許可を得て「特殊部隊」と書かれた扉をあけると、そこにはモデルルームのような実際の家が再現されていました。
10人ほどの隊員が、ゴーグルを装着して銃のようなものを手に訓練を行っています。

敵はAI 実戦を再現する最新訓練 

「これを着てください」
渡されたのは、爆発や銃撃を受けると振動するベストです。
実弾は出ませんが、実際の銃と同じ重さの銃型コントローラーを持ちます。
ゴーグルを装着すると、実際の空間に、バーチャルで敵が現れます。

今回は、ある国の軍隊と対峙するシミュレーション。敵の動きは、実際の戦場でその国が使う武器や戦略をAIが分析して再現されています。さらに、こちらの動きに応じてAIが敵の攻撃を変化させます。

ゲームのようにただ敵を撃つだけではありません。次に相手が仕掛けてくる攻撃を予測し、瞬時に判断する力が試されるのです。

与えられた時間は7秒 ドローン攻撃のリアル

「訓練!訓練!」
掛け声を合図に訓練が始まります。建物に入るといきなり敵から手榴弾が投げ込まれます。

気づかず進んだ記者の目の前で爆発。ベストが激しく振動し、画面には「Killed」の文字が。実際の訓練ならこれでアウトですが、今回は特別に復活させてもらいます。
奥の部屋に足を進めると…

「ブーーーン」

突然プロペラ音が。音はだんだん大きくなり、近づいて来るようです。慌てて周囲を見渡し振り返った瞬間、目と鼻の先にドローンが。
あわてて対応しようとするも時すでに遅し。爆発し、ベストが震えます。

このシステムを開発した会社によると、実際の戦場ではドローンの音が聞こえてから人に当たるまでの時間はわずか7秒。訓練でもこの7秒を忠実に再現しているといいます。

「誰でもみんな最初はこうだよ。クレイジーだけどこれが今のリアルな戦場なんだ」

そう励まされ訓練を続けさせてもらいます。次々に敵が現れ、ドローンによる攻撃は実に5回。そのうち記者がドローンを見つけられたのはわずか2回。1機も撃ち落とすことができず、訓練を重ねた味方が代わりに撃ち落としてくれました。

訓練を終えると、滝のような汗が流れていました。銃を握っていた手は震え、肩もこわばっています。ゲームのようなものだと思っていた訓練は、想像以上に戦場に近いものでした。

「兵士の命を守りたい」 AI訓練に込めた開発者の思い 

システムを開発したのは、ボストンを拠点にする「Orama Technologies」。CEOのアルテミーさんになぜこの訓練を開発したのか聞きました。

「私たちが目指しているのは、兵士たちが生きて帰還できることです。なぜなら私たちは最前線がどういうものか、身をもって知っているからです」

実は、アメリカ空軍に6年間所属し、戦場での実戦経験もあるアルテミーさん。戦場での詳しい経験については、語ろうとはしませんでした。この会社ではアルテミーさんのように前線経験のある元軍人が多いといいます。そうした経験を持つ元軍人たちが、「攻撃」のためではなく、「兵士の命を守るため」にAIを使おうとしているのです。

「すでに敵国は攻撃にもAIを使っている。けれども私は、攻撃はAIだけではなく人間が介在するべきだと思っています。なので(攻撃ではなく)訓練という形で兵士たちの命を守ることにAIを使いたい」

日本進出へ AI訓練を自衛隊に 

アルテミーさんたちが今目指しているのは、海外、特に日本への進出です。
防衛分野でAIの導入を進める日本は、アメリカの企業にとっても重要な市場になっているといいます。 
さらに、アルテミーさんたちは、日本のAI利用に関する考え方やルールがアメリカと近く、製品を展開しやすいとみています。

今年7月、商談のために日本を訪れたアルテミーさんたちが助言を求めたのは、コンサルティング会社です。

「日本の自衛隊にとってまさにうってつけの製品ですね」

コンサル会社の担当者の反応も上々。詳細は「まだ明かせない」としつつ、すでに日本政府側と交渉も進めているといいます。

AIは「ゲームチェンジャー」 戦場の判断を誰が担う? 

アメリカの防衛関連企業が日本への進出を目指す背景には、AIが戦争そのものを変えようとしている現実があります。

軍事コンサルティング会社「STONEGARDENS ADVISORY」を訪ねると共同創業者のダニエルさんが迎えてくれました。
アメリカ軍や海外への売り込みを目指す企業から、数多くの相談を受けているダニエルさんは、AIは戦争における「ゲームチェンジャー」、革新的な存在だと話します。

「これまで攻撃の計画を立てたり、データの分析にかかっていた数百時間という時間がAIによって数分にまで短縮できます。AIは間違いなくゲームチェンジャーとなっています」

高市総理は、防衛分野でのAI活用を進める方針を示すなど、日本でもAIの導入が進んでいます。では、AIの導入を進める日本は、何を意識すべきなのでしょうか。
ダニエルさんが指摘するのは、AIの決定を誰が判断し、その結果に誰が責任を負うのかという問題です。

「誰が最終的に判断し、間違ったときに誰が責任を取るのか。日本がAIを導入するうえで、ルール作り、責任の所在を明確にすることが重要です 」

AIの責任 日本に突きつけられる問い 

取材を終え帰宅しようと歩いていると、突然、足が止まりました。無意識に上空に視線をやると、近くで警察の記録用のドローンが飛んでいました。
「プロペラ音がする⇒ドローンが飛んでいる⇒逃げなければ」
そんな意識が自分の中に刷り込まれていることに、驚きました。

今の戦場ではこの音をいち早く感知することは自分の命を守ることにつながります。
しかも、戦場で使われるドローンは一機だけではありません。AIを使い、複数のドローンを連携させて運用する動きも出ています。

戦争の形を大きく変えているAI。
その力をどう使うのか、AIが関わる判断で何かが起きたとき、誰が責任を負うのか。
AIの導入を進める日本にも、いま、その問いが突きつけられています。

<プロフィール>
窪小谷菜月 JNNニューヨーク支局特派員
2021年に入社し2024年4月から現職。国連を担当
アメリカに限らず、北米・南米全域をカバー。
「THE ワールドチェンジ ~AIが変える戦争の世界〜」は8月15日(土)午後4:30〜放送(一部地域を除く)

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